「マイホームがほしい!」と思ったら、欠かせないのが住宅ローンの知識。特に、金利タイプの選び方は重要です。基本をしっかり押さえておきましょう。

金利タイプは3つ

住宅ローンは金利タイプによって3つに分けられます。

  1. 固定金利型 : 借り入れたときから返済が終了するまで、ずっと同じ金利が適用される。毎月返済額も最後まで変わらない

  2. 固定金利期間選択型 : 一定期間は固定金利で、その期間が終了したらその時点でまた金利タイプを選択する。固定期間は2年、3年、5年、10年など

  3. 変動金利型 : 金利を半年ごとに見直し、それに基づいて5年ごとに毎月返済額が変わる

3つのうち、金利がいちばん低いのが(3)の変動型で、次が(2)の期間選択型。固定期間が長くなるほどほど金利は高くなります。最も高いのが、(1)の固定金利型です。

とはいえ、固定金利型には、将来金利が上昇しても当初の金利に基づいた返済額がずっと続くという大きなメリットがあります。多くの人は、20年以上にわたって住宅ローンを返済していくことになるので、その間の金利上昇に備えるには固定金利型が望ましいといえます。

競争激化で変動型の金利が低下

ところが実際には、住宅ローンを借りる人の多くが変動金利型を選んでいます。当初の毎月返済額が低いのに加えて、しばらくは低金利が続くと考える人が多いからでしょう。また、このところ変動金利型の金利がかつてないほど低くなっていることも要因と考えられます。

変動金利型の金利が下がっているのはなぜでしょうか。

理由として、金融機関の住宅ローン貸出競争の激化と「フラット35S」の金利優遇が挙げられます。「フラット35S」は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して行っている長期固定金利の住宅ローン「フラット35」のうち、一定の条件を満たした優良な住宅を対象にしたものです。政府の緊急経済対策によって、2010年2月からその金利が、当初10年間、1%引き下げられているのです(※)。

※ 「フラット35S」の1%優遇は想定を上回る募集があったため、申し込みの締め切りが2011年12月末から3カ月前倒しされ、9月30日までになりました。それ以降の金利引き下げ幅は0.3%となります。

民間金融機関の固定金利型ローンにはこれほど有利なものがなく、固定金利型の利用者が「フラット35S」に流れたことによって、金融機関は変動金利型で競争しなければならなくなったというわけです。

変動金利型の金利は短期プライムレートに連動しています。短期プライムレートは2009年から変わっていないので、変動金利型住宅ローンの「店頭表示金利」も2009年からずっと2.475%ですが、各金融機関は「優遇金利」という形で、金利を引き下げてきました。優遇幅はだんだんに拡大され、現在、実際に適用される金利を1.075%とする金融機関が多くなっています。店舗をもたないネット銀行の中には、1%を切る金利を提示するところもあります。

金利が下がれば当初の毎月返済額も下がるので、これまでよりローンが借りやすくなったといえます。

変動金利型の落とし穴に注意!

だからといって、安易に変動金利型のローンを借りるのは危険。変動金利型には大きなリスクがあるからです。

変動金利型は、5年ごとに毎月返済額が変更されますが、変更後の返済額は変更前の返済額の1.25倍までにするというルールがあるのが一般的です。これによって、5年後に返済額が大幅にアップすることはありません。

でも、もし5年間に金利が上昇していると、返済額に占める利息の部分が増えて、元本の返済がなかなか進まないことになります。さらに、金利が大幅に上昇していると、毎月の返済では利息を払いきれず、その分が新たな借金となって積み上がっていく可能性があるのです。

変動金利型を借りる場合は、この点を十分に理解しておかなければなりません。資金計画にゆとりがなく、「固定金利型や固定金利期間選択型だと毎月の返済額が高くなって払えない」という理由で変動型を選ぶのは避けるべきでしょう。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。