マネックス証券では、日本株ロボット運用投資信託「カブロボファンド」を販売している。同ファンドは、東日本大震災がおきた3月、TOPIXが-8.6%と下げたなかで、+1.9%の好成績を収め、R&Iが発表している国内株アクティブ型の騰落率ランキングで首位を獲得した。今回はカブロボファンドの仕組みなどについて、同ファンドへの投資助言を行っているトレード・サイエンスの川城正貴氏と、マネックス証券の田平公伸氏にインタビューした。

トレード・サイエンス営業部長の川城正貴氏

プログラムのコンテストから好成績のものをピックアップ

カブロボファンド(以下、カブロボ)は、T&Dアセットマネッジメントが運用し、マネックス証券のみで販売している公募投信。トレード・サイエンスは、マネックス証券の100%子会社で、T&Dアセットマネッジメントに投資助言を行っている。

カブロボは、複数のマーケット情報を処理して、自動的に株式の売買注文をつくるコンピューター・プログラムだ。カブロボファンドは、株式売買においてロボットによる機械的な運用を行うため、どのような相場状況においても機動的な運用が可能となり、人間が行う意思決定における心理的な要因による機会損失を避けることができる。

東日本大震災直後に大きく市場が変動するなか、カブロボファンドは同ファンド設定来の規模で売買を行い、好成績を収めた。

――改めて、カブロボの仕組みについて、お聞かせください。

川城: カブロボファンドは、データを取得して分析をし、売買注文の内容を生成するまでを行う複数のコンピューターのプログラム、つまり複数の「ロボット」で成り立っています。現在は、それぞれ運用手法が異なる6つのロボットが1日2回データを取得し、東証1部上場の500銘柄を対象に、トレードを行っています。

各ロボットは膨大な量のマーケット情報を取り込んで分析を行い、最新の投資判断を導き出します。カブロボが生成した売買注文を、運用会社であるT&Dアセットマネッジメントに送り、同社が運用しています。

カブロボの仕組み

――そもそもカブロボは、どのような経緯で生まれたファンドなのでしょうか?

川城: トレード・サイエンスは、早稲田大学との産学連携で生まれた会社で、もとよりシステムトレーディング商品の開発のほか、株式の投資判断を行うプログラムである「カブロボ」のコンテストを運営していました。カブロボの開発・検証環境を提供し、仮想証券会社に対して自動で株の売買を行い、その運用成績を競います。

こうした売買注文を生成するプログラムを、新しい運用スタイルの公募投信として個人投資家に提供できないか、カブロボの作成者、トレード・サイエンスおよび運用を担当くださることになったT&Dアセットマネジメントさんと準備を進めました。カブロボは2009年7月末に公募投信としてスタートしたのですが、その1年以上前から、私募投信としてテスト運用を行いました。その段階ですでに、カブロボコンテストに応募されたプログラムについて、実際の運用に対応できるようチューニングをしてきました。

カブロボコンテストの参加者の方々とは、皆さんのロボットを公募投信という形で採用する可能性がありますというコミュニケーションをとっており、長いお付き合いとなっています。

本番運用のロボットの裏には、"2軍"も控える

――実際にカブロボに採用されたプログラムは、厳選されたものといえますね。

川城: コンテストの環境は今も提供していますので、常に新しい参加者がいて、ランキングされています。そこで上位となった「これは」と思うプログラムに出会った場合、カブロボに採用させていただく可能性もあります。

――カブロボでは現在、6体の「ロボット」で構成されているんですよね。

川城: カブロボは、複数のプログラムを組み合わせることによってリスクを抑え、成果を上げることを目指しています。従いまして、ロボットの組み合わせというのが、カブロボの"肝"になっています。現在は6体のロボットが本番運用されていますが、その裏では、8体のロボットが、"2軍"のような形で、同じ環境でそれぞれのプログラムが仮想売買を行っています。

ロボットのパフォーマンスは3カ月に1回、定期的な検証を行っています。そこでは、各ロボットへの資金の配分を見直します。さらに、ロボット自体の入れ替えを行う可能性もあります。その時その時の相場環境で、より適切に運用できるロボットを選定するようにしています。

――実際にこれまで、ロボットの入れ替えはあったのでしょうか?

川城: 2009年7月末に運用が始まったときは、ロボットは4体でした。2010年のゴールデンウィーク明けに、4体のうち2体を入れ替えました。

2010年11月には、相場を主導していきそうな銘柄群を捉えて収益機会とするロボットを追加して、5体で運用を始めました。この時期から、運用パフォーマンスに関しても、設定来の課題だった、相場の上昇についていく運用ができるようになりました。

さらに、2011年3月にはもう1体のロボットを追加して、現状の6体の体制になったのです。