今日のIT業界のトレンドに、「モバイル」、「クラウドコンピューティング」、「Big Data」がある。これらによって、ネットワークやデータセンターのあり方は大きく変わりつつあり、ネットワークベンダーはそれぞれ新たな戦略を打ち出している。今回は、「3-2-1 データセンター・ネットワーク・アーキテクチャ」を掲げるJuniper Networks データ・センター・ビジネスユニット上級副社長のR.K.アナンド氏に、同社のデータセンター構想について話を聞いた。

Juniper Networks データ・センター・ビジネスユニット上級副社長 R.K.アナンド氏

今までのアーキテクチャではもう対応できない

先日、日本では携帯キャリアがこぞってスマートフォンの夏モデルを発表し、スマートフォンの人気はうなぎ上りだが、世界的にモバイルデバイスは増加の一途をたどっている。デバイスが増えれば当然、データ量も増える。

こうした状況について、同氏は「今日、スマートフォンやiPadなど、動画が利用可能なモバイルデバイスが増えているが、これはオンデマンドで利用されるデータ、アプリケーションの増加をもたらす。データセンターではこうしたデータがきちんと使える状態で管理されなければならないが、これまでのアーキテクチャでは対応できない」と訴える。

Big Dataの取り扱いについても、「Big Dataを扱うには、データセンターを分散し、大量のデータを分析して高速処理できる仕組みが必要。Big Dataを処理するための新たなフレームワークとして、『Hadoop』が注目を集めている」と同氏はいう。

データセンターを最大限に活用するための要件として挙げられたのが、「リソースの柔軟性」、「マルチテナントへの対応」、「セキュリティの確保」だ。

同社が、今日のデータセンターに対するアーキテクチャとして打ち出したのが、3層構造のネットワークをフラットにすることを目指す「3-2-1 データセンター・ネットワーク・アーキテクチャ」だ。同アーキテクチャの「1」を担うデータセンター向けファブリックアーキテクチャ「QFabric」が今年発表された。

QFabricは1つのスイッチですべてのデバイスをワンホップにつなぐ。同氏は、「QFabricはサーバとネットワークの効率化をもたらす。シングルレイヤのデータセンターでは、利用するサーバを考えなくて済みムダが省ける」と話す。

競合に対する強みはデータセンターに特化している点

実のところ、これまで3階層が当たり前だったネットワークをフラット化すべきと主張しているベンダーはジュニパーだけではない。競合に対する同社のアドバンテージはどこにあるのだろうか。

アナンド氏は最大のライバルとも言えるシスコシステムズに対する強みについて、「われわれはデータセンターに特化した製品を開発し、この世に送り出してきた。また、現在起こっているクラウドコンピューティングによる変化、データセンターにおける変化も以前から予測しており、5年前からQFabricに取り組んできたことがその証だ」と話す。

同氏自身、創業当時からのメンバーであり、インターネットの黎明期から今日にわたりネットワークインフラの開発の最前線に立ってきた。「今のデータセンターは、1996年当時のインターネットと同じ状況にある」

最後に、日本の企業に対するアドバイスを聞いてみたところ、「これから世界はもっと変わっていく。トレンドを見て、戦略に取り入れることが大切」という答えが返ってきた。

「クラウドは、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、パブリッククラウドといった形で進化していく。そうしたなか、企業はクラウドを導入することによるオペレーションの効率化について考える必要がある。ただし、インフラの構成を考える時、リスクをとることも忘れてはいけない。また、イノベーションを受け入れ、データセンターがアプリケーションのイノベーションを実現できるよう構築すべき」

QFabricは、「データプレーン」「コントロールプレーン」「マネジメントプレーン」の3つのコンポーネントから構成されるが、現在のところ、製品としてリリースされているのはデータプレーンを担う「QFX3500」のみだ。データプレーンの「QF/Interconnect」とマネジメントプレーンの「QF/Director」のリリースは2011年第3四半期に予定されている。

3つのコンポーネントが揃った時、データセンターにはどのようなイノベーションがもたらされるのだろうか。ITインフラの基盤であるネットワークの進化に適したデータセンターの構築に注力する同社の開発力に期待したい。