長いつき合いの割にはよく知らないのが自分の声のこと。ところが人の第一印象のうち40%は声で決めているとか。となるとぜひ知りたいのが異性に好かれる声、いわゆる「モテ声」だ。話題のスポット「モテ声カフェ」を訪ね、"声の調律師"として大人気のボイストレーナー・秋竹朋子先生に話を聞いてきた。
■噂の「モテ声カフェ」とは
今年4月に発足した声総研がプロデュースした、声をテーマにしたカフェ。6月9日までの期間限定でオープンした。自分の声の"モテ度"を専用の診断ツールで測ったり、のどに良い食材を使った料理に舌つづみを打ったりと、楽しみながら「モテ声になる秘訣」を知ることができる。また、プロの声優らが"モテ声店員"として登場。その美声でリクエストに合わせて叱ったり、癒やしたりしてくれる特別メニュー「モテ声0円」も人気だ。オリジナルメニューは、ディナーメニューの「4,158円(よいこえ)コース」とランチメニューの「1,158円(いいこえ)コース」。東京都渋谷区桜丘町4-17 カフェ&ダイニングバー CANTIK(チャンティック)内。
PROFILE : 秋竹朋子(あきたけ・ともこ)
東京・秋葉原のボイストレーニングスクール「ビジヴォ」のチーフトレーナー。日本初の「超絶対音感治療法」のボイストレーニングが話題を呼び、東京を拠点に全国各地への企業研修・教員研修を行う。ピアニストとしてリサイタル・弾き語り等でも活躍中。2010年よりアーテリジェントスクール講師。著書に『一瞬で相手の心をつかむ「声」のつくり方』 (ぱる出版)など。声総研にもボイストレーナーとして協力している。
小学生から会社の経営者までさまざまな人の声を改善し、"声の調律師"とも呼ばれている秋竹朋子先生。「モテ声カフェ」で週に一度開催する無料ボイストレーニングレッスンもすでに満席の人気ぶりだ。先生が主宰するビジネスボイストレーニング「ビジヴォ」には全国から声の悩みを持つ人たちが集まってくる。「声のことで悩んでいる人って実は結構多いんですよ」とのこと。いったいどんな悩みが多いのだろうか。
「ビジヴォ」に通う生徒は男性6割、女性4割。経営者、医者、プレゼンテーションの機会が多いビジネスマン、電話応対の仕事をする人など職業柄「声」が大事な人が、「もっと印象のいい声に」と通うこともあれば、婚活中の人がお見合いを前に「異性にもてる声になりたい」と駆け込んでくることもある。TVのプロデューサーから「シェフの声をなんとかしてほしい」と頼まれ、撮影前の1時間のトレーニングで"応急処置"をし、ボソボソ声を明るく通るようにしたこともあるそうだ。
「第一印象の約4割が声だといわれています。顔を変えるのは大変ですが、声を変えるのは可能なんですよ」。秋竹先生の"教え子"のなかには「声を変えたら人生が変わった」と話す人も多い。メンタル面の自信につながり、生き方まで前向きになった人を多く見てきたという。
多くの日本人が間違えている「呼吸法」
それでは印象のいい声、つまり"モテ声"になるにはどうしたらいいのだろう。秋竹先生がいい声になるために大切なポイントとして挙げたのは、(1)呼吸、(2)発声、(3)共鳴(響かせ方)、(4)発音(声帯)――など。特に多くの日本人が間違っているのが「呼吸」だという。いい声を出すためには腹式呼吸を身につけることが欠かせない。「腹式呼吸なら、相手の聴覚によく届き、聞き取りやすい明瞭な声になります。胸式呼吸で発声すると頼りない印象を相手に与えてしまいます。話を聞き返されてしまう人は要注意です」と先生。
今回、先生の好意でミニレッスンを受けさせてもらった。私もやはり胸式呼吸とのご指摘。お腹をへこませて口から息を吐き、鼻から吸うときはお腹が自然に膨らむという腹式呼吸の練習をした。「ハッ!」と発声するとお腹がへこむ。その感じがまさしく腹式呼吸とのこと。先生がお腹に手を置いて腹式呼吸での発声の感覚を教えてくれた。腹式呼吸に声をのせるようにして「ハー」と発声してみる。自分でも驚くほど響きのある大きな声が出た。「小さい声であっても腹式呼吸の声はよく届きます。長く話しても疲れにくいですよ」。
いい声をつくるためには、自分の声を録音して聞き、他の人の声との違いを知ることも大事。iPhoneなどの「ボイスメモ」なら、メーターの針が大きく振れるかどうかで腹式呼吸か胸式呼吸かをチェックできて便利だ(針が振れれば腹式呼吸)。「上がり症の人や滑舌が良くない人もぜひ使ってみてください」。
自分のなりたい声を具体的にイメージすることも有効とのこと。また、滑舌のよしあしも声の印象を大きく変える。サ行やカ行をしっかり発音するなど意識してみよう。これらはトレーニングを重ねることで簡単に直すことができるという。今から"モテ顔"を目指すのは大変だが、"モテ声"ならイケるかも。興味がある人は一度レッスンを受けてみては?
噂の"モテ声店員"に聞く、いい声のために心がけていること
モテ声店員として働く望月英さんはプロの声優。うっとりするような低くて深みのある声が特長で、その声で叱られたい、癒やされたいという人から「モテ声0円」の注文も多い。
しかし、大学時代までは「カラオケに行っても声が低すぎて歌える歌もないし、この声はコンプレックスでした」と驚きの告白が飛び出した。友人に誘われて演劇を始めてから「声がいい」とよく言われるようになり、ようやく自信を持ったそうだ。21歳のころ「コンプレックスだった声でやっていけたら」と声優養成所へ。現在はアニメやゲーム、映画の吹き替えなど活躍の場を徐々に広げている。「将来は諏訪部順一さんや小野大輔さんのような声優を目指したいですね」。いい声のために心がけていることを聞くと「体のやわらかさが大事です。自分の体のどこがどう動いているかを感じながら声を出しています」。最後に「ぜひたくさんの方に店に来てもらって、声のことを楽しみながら知ってもらいたいですね」と呼びかけた。
自分の声の"モテ度"がわかる「VQチェッカー」、WEB上で公開中
「モテ声カフェ」にも設置してあるモテ声診断ツール「VQチェッカー」は、声総研の公式サイト「声総研.com」で公開されている。東京工芸大学工学部の森山剛助教が監修。パソコンに向かって『素敵な声の人が好き』と読み上げるだけで、声の高さや大きさ、滑舌の良さなど5つのポイントから、声の"モテ度"を計測してくれる。点数に合わせて「もっとあなたの話を聞かせて……」「鼓膜に花が咲いた」といったコメントが。簡単なのでぜひトライしてみよう。