既報のように、ライブドア元社長の堀江貴文氏らが開発したロケットがついに完成、3月26日、初の試験飛行に成功した。東日本大震災のゴタゴタで記事化がずいぶんと遅くなってしまったが、彼ら日本の"ロケットボーイズ"の取り組みについて、ここで改めてまとめてみたい。
ホリエモンとロケット?
「なんでホリエモンとロケット?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、堀江氏と宇宙との関わりはそんなに唐突なことではない。例の事件の前、JAXAのシンポジウムにスピーカーとして呼ばれることもあったし、2005年にはロシア製の有人宇宙船「アルマズ」を使った宇宙旅行ビジネスへの参入も発表していた。当時、彼はライブドア社長兼CEOであったが、宇宙ビジネスは"個人的な活動"としており、出資にはポケットマネーを使っていた。このあたりの話については、以下の過去記事を参照して欲しい。
日本では堀江氏くらいだが、米国ではAmazon創業者であるジェフ・ベゾス氏が設立したBlue Origin、FPSゲーム「DOOM」「Quake」などの開発者であるジョン・カーマック氏が設立したArmadillo Aerospaceなどの例がある。特に、PayPalの共同創業者であるイーロン・マスク氏が設立したSpaceXは、すでに「Falcon 1」「Falcon 9」という2つのロケットを作り上げ、宇宙船「Dragon」の打ち上げも成功させた。アポロやスペースシャトルを見て育った"IT長者"が自らの資金で宇宙開発に挑戦することは、世界的に見れば決して珍しいことではないのだ。
その堀江氏だが、ロケットの開発をスタートさせたのは2004年ころ。それ以前から民間によるロケット開発を目指していた野田篤司(宇宙機エンジニア)、松浦晋也(宇宙ジャーナリスト)、笹本祐一(SF作家)、あさりよしとお(漫画家)各氏のグループがスポンサーを探しており、この時期に初めて接触。堀江氏が参加を決めたことが始まりとなった。ちなみに、野田氏らは「宇宙作家クラブ」のメンバーでもあるが、ロケット開発グループの名称としては、これとは別に「なつのロケット団」を名乗っている。
それ以降の経緯については、SNS(堀江氏の事業会社であり、ロケットの開発主体)のWEBサイトに詳しく載っているのでここでは繰り返さないが、1つポイントを挙げるとすれば、CAMUI型ハイブリッドロケットの開発で知られる植松電機との出会いだろう。
ロケットエンジンの開発には、何十回、何百回という燃焼試験が欠かせない。堀江氏らは当初、推力30kgf級エンジンの開発から始めており、試験場は千葉県鴨川市に用意していたのだが、これ以上の大型化となると騒音も問題となってくるので、新しい試験場を必要としていた。2009年に、北海道赤平市の植松電機に試験場を移転してこれを解決。推力90kgf級エンジンの開発をここでスタートさせた。
※推力30kgfというのは、地上で30kgの物体を持ち上げるだけの力に等しい。ただ自重と同じだと釣り合うだけで上に飛んでいかないので、ロケットのエンジンとして使うには自重よりもっと大きな推力を出す必要がある
植松電機は北海道大学に協力して、2004年よりCAMUIロケットの開発を始めており、燃焼試験の環境は整っていた。また打ち上げは北海道大樹町で行っており、地元との信頼関係もあった。これが、SNSのロケットの打ち上げにも繋がった。堀江氏は以前「植松電機が実績を積んできた。僕らはその道の上を歩かせてもらっている」と述べ、先駆者としての存在の大きさについて言及している。
試験環境だけでなく、開発においても植松電機の存在は大きかった。ロケットの打ち上げにはエンジン以外に機体も当然ながら必要となるが、これはCAMUIのものを流用。また実験で壊れたりして、新しい部品が必要になったときも、植松電機のエンジニアが隣接する工場ですぐに作ってくれた。植松電機なしでは、こんなに早期の打ち上げは実現できなかっただろう。