三井住友カードは3月31日、金利逓減型カードローン「三井住友カードゴールドローン」(以下、ゴールドローン)の上限利率を、年12.8%から年9.8%に引き下げた。上限利率10%未満の"業界最低水準"の金利を実現した狙いは何か? 同社ファイナンス事業部長の森真樹氏に聞いた。

ゴールドローンは、利用しやすい融資利率・利用枠を設定したローン専用カードで、2009年1月に発行を開始。2009年3月には、借り入れ方法をインターネット・モバイル・電話での申し込みによる指定金融機関の口座への振込みに限定し、ゴールドローンよりもさらに0.6%低い利率に設定した「三井住友カードゴールドローンカードレス」(以下、ゴールドローンカードレス)の取扱いを開始した。

ゴールドローンおよびゴールドローンカードレスには、返済実績に応じた利率引き下げサービスを用意しており、当年度の毎月の支払いに遅延のない人は、翌年度の利率が0.3%、最大で1.2%まで引き下げる。

今回三井住友カードでは、3月31日から、ゴールドローンの上限利率を年12.8%から年9.8%に、ゴールドローンカードレスの上限利率を年12.2%から年9.2%に引き下げた。同社によると、極度型のローン商品で上限利率年10%未満の設定は"業界最低水準"。その狙いについて、同社ファイナンス事業部長の森真樹氏に聞いた。

三井住友カード ファイナンス事業部長の森真樹氏

――ゴールドローンの上限金利を引き下げるに至った背景について教えてください。

出資法が改正されるまでは、おおまかに言うと、消費者金融各社が上限年25%、クレジットカード会社が上限年18%、銀行などが上限年12%で貸すという、貸付相手のリスクに応じて、3層のすみわけができていました。しかしながら、出資法における上限金利引き下げにより、上限金利が10万円未満の貸付では年20%、10万円以上100万円未満の貸付では年18%に引き下げられました。

この引き下げで、消費者金融各社から上限年25%で借りていた層が、一気に上限年18%の層と一緒になったわけです。

また、従来貸付会社の業態別に信用情報機関が分かれていて、貸付会社が利用できるお客様の情報がそれぞれ異なっていたものが、貸金業法により統一されて、これまで見えなかったリスクが見えるようになったということと、さらに改正貸金業法の「総量規制」で、年収の3分の1までしか貸出できなくなり、これまで各社独自の基準を作っていたものにきちんとしたラインができたことで、貸付側のリスクが下がったということもあります。そうした中で、三井住友カードとして、これまでの金利のままでいいのか、という議論が出てきたのです。

――なるほど。出資法の上限金利引き下げと、改正貸金業法の完全施行によって、お客様に提供する金利がこれまで通りでいいのか、という議論になったわけですね。

もう一つは、我々の今までの考え方では、50万円借りる人は年18%で、100万円借りる人は年15%というように、「(借りる)枠=ステータス」のような設定をしていました。しかしよく考えると、ハイステータスの年収1,500万円の人が必ずしも500万円の借入れを申し込んでこられるかというと、そうでもないのではないか。「50万円でいい」という方もいます。その場合でも、その人たちに利率を年18%で提供するのか? という議論もありました。

ゴールドローン・ゴールドローンカードレス概要(2011年3月31日以降)

――これまでの金利設定が、顧客層と必ずしも対応していなかったわけですね。

借りる枠が大きい場合は、確かに各社とも金利を低く設定していますが、借りる人が多いのは100万円前後の額です。そうしたお客様に、これまで通り、年12.8%でずっと提供し続けていいのか、ということで検討しました。さきほど申し上げたようにリスクも下がるわけですし。そこで、199万円以下の借入れをする場合の金利を年12.8%から年9.8%に引き下げたのです。

――この上限金利引き下げで、どのような方の利用を見込まれていますか?

二通りの方が考えられると思います。一つは、これまで当社のクレジットは利用しているが、ローンを利用されていなかった方。もう一つは、これまで消費者金融で借りていた方です。まずゴールドローンを利用して、その後当社のクレジットも利用していただけるようになるのではないか、と見込んでいます。

――金利が低いという場合、借入れ枠の最も大きい顧客に対する金利、つまり下限金利が低いという場合が多いように思えますが、借入れ枠の最も小さい顧客に対する金利、つまり上限金利を低くするというのは、どのような意味の違いがありますでしょうか?

500万円を借り入れるとなると、総量規制の下では、年収が1,500万円あり、かつ他社から借入れがない場合という条件になり、こうした方はそれほどたくさんいません。現在の日本国民の平均年収が400万円前後ですから、その3分の1を借りられるとなると借入額は130万円前後になりますので、100万円までの枠の上限金利を引き下げたほうが、より多くのお客様の利便性が向上することになると思っています。

――ゴールドローンおよびゴールドローンカードレスは、「金利逓減型」ということですが、どのような仕組みになっているのですか?

「金利逓減型」とは、返済実績に応じた利率引き下げサービスで、当年度の毎月の支払いに遅延のない方には、翌年度の利率を0.3%、最大で1.2%まで引き下げることです。期日までにお支払いいただくという約束事を守っていただいたお客様には、我々としても何かお返ししなければ、ということでスタートさせた制度ですが、こうした制度を公表して実施しているところは、他にはないようです。

――4月18日から、小口のキャッシング商品「ミニキャッシング」の提供も始められましたね。

ミニキャッシングは、ゴールドローンの入門カードとして位置付けたものです。30万円までの低い利用枠を設定した商品で、毎月返済額を1万円から5万円までの間で自由に設定でき、臨時の増額返済なども可能な、「自由度の高い」商品となっています。

利用枠が30万円までのため、三井住友カードや他社で一定の借り入れのある人を除き、年収証明書類の提出は不要です。

――「入門カード」ということは、若い顧客層の利用を見込んでいるのですか?

その通りです。利用枠を30万円までに設定している理由の一つとして、若年層を対象としているので、あまり大きな枠を与えて無計画に使っていただくのはどうかということがあるからです。また、年収証明書類が不要というのは、例えば入社したばかりの新入社員の方には源泉徴収票などはないし、給与明細もまだほとんどないということを考慮しています。そうしたファーストユーザーに特化したサービスとなっています。

また、融資の申込み受付はインターネット・電話で、借入れの際は指定金融機関の口座への振込みとなる仕組みです。現金を引き出す際は、その口座からキャッシュカードで引き出していただきます。

融資利率は利用枠にかかわらず年13.8%ですが、2012年3月末までは年9.8%に引き下げる「ミニキャッシング利率引き下げキャンペーン」を実施します。最初のお試しでまず1年間使っていただいて、もう少し利用枠がほしいといった方には、ミニキャッシングと同じく指定金融機関の口座への振込みに限定し、銀行キャッシュカードで引き出す仕組みのゴールドローンカードレスをおすすめし、ご要望があればスイッチしていただこうと思っています。

――インターネットを活用しての、ローンサービスを充実させていく狙いがあるわけですね。

今の20代の人は、スマートフォンの利用が増えていて、PCさえ持たないという人も出てきています。磁気カードがないと不便だという人もいますが、逆に借りすぎを抑制する効果にもなります。当社としましても、こうしたモバイル市場、特にスマートフォンに即した商品を作ったので、まずは認知してもらう努力をしなければと思っています。

また、ローンだけでなく、その他のサービスについても、モバイル市場に適したものを提供していきたいと思っています。

――本日はありがとうございました。