フィンランドNokiaのQt Developer Frameworks部門がドイツ・ミュンヘンで10月13日まで開催した「Qt Developer Days 2010」では、クロスプラットフォームのUI/アプリケーション開発技術「Qt」を利用したさまざまな事例が展示されていた。

今年のDeveloper Daysは、例年開催されていたミュンヘン市内の会場から、郊外に場を移して開催された。Qt開発者の増加によりイベント参加者も増加、今年は参加者が1,000人に達した。これは520人が参加した2008年の約2倍となる。

Qt Developer Days 2010の会場。1,000人以上の開発者がミュンヘンに参集した

コンシューマ家電の注目株であるタブレットでもQtは利用されている。"iPadキラーではない"として大きく報じられた独Neofonieのタブレット「WeTab」のほか、レシピなどのコンテンツにアクセスできる料理用のタブレットが2機種も展示されていた。電子書籍リーダーとしては韓SamsungのNS-60kがあった。

9月にドイツで発売開始となったWeTab。「Intel Atom」を搭載、11.6インチの画面を持つ"iPad"対抗機だ。「MeeGo」を採用した初のタブレットでもある

仏UNOWHY「QOOQ Recipe Machine」。組み込みLinuxベースで、Qtでインタフェースを作成した。Webブラウジング、動画や音楽、料理予定表などの機能がある

QOOQ Recipe Machineを横から見たところ。画面は10.2インチ。フランスで発売中

米国で2009年末に発売されたデジタルレシピリーダー「Key Ingredient Demy」

Samsungの電子ブックリーダー「NS-60k」

通信機器では、ASUSとTandbergのビデオ通話端末が展示されていた。Tandbergはノルウェーの会社だが、昨年10月にCiscoに買収された。

7インチのタッチ画面を持つ台湾ASUSのビデオSkype電話「ASUS Video Skype Phone」

「Qt 4.6」でUIを作成したTandbergのビデオ会議システム

端末コーナーでは、「Symbian ^3」を搭載したNokiaの最新フラッグシップ端末「Nokia N8」や「Maemo」ベースの「Nokia N900」が展示されていた。Nokiaはアプリストア「Ovi Store」など、社内でQtを利用している。

Nokiaマニアなら思わず欲しくなる!? 上はMaemoベースのNokia N900、下はSymbianのフラグシップ機でもあるNokia N8

車載システムも複数展示されていた。スウェーデンPelagicoreが展示していたのは自動車業界の標準化団体GENIVIのリファレンス設計。GENIVIはMeeGo採用を発表しており、Qtが含まれることになる。

Intel Atomベースだが、MeeGoはARMもサポートする

ナビゲーション、音楽や映画の再生などをタッチ画面で操作できる

日本のSRAは、イーソルのITRON系OS「T-Kernel」拡張「eT-Kernel OS」の上でQtを動かすシステムを展示していた。組み込み向けリアルタイムOSのITRONはカメラやカーナビなどで使われているが、ハードウェアがパワフルになり、高機能なインタフェース構築のニーズが高まっているという。

SRAが展示していたQtが動く「eT-Kernel OS」ベースのシステム。組み込み向けリアルタイムOSでの高機能インタフェースの需要は、自動車メーカーなどで強くなっているとのことだ

フィンランドのソフトウェア企業Digiaは、QMLを使った車載用情報システムをはじめ、Qtを使って構築したさまざまなモバイルアプリケーションをデモしていた。

AR(拡張現実)アプリは、携帯電話のカメラを利用して画面に移った目の前の風景に、デジタル情報を加えるもの。カフェ、レストラン、人などのアイコンをクリックすると詳細情報が表示される。米国では人アイコンでFacebookを統合可能とのことだ

3DアプリケーションはN900とデスクトップの両方で作成したものをデモしていた。Qtのクロスプラットフォーム開発機能を実証したものといえる

FacebookやTwitterを統合し、位置情報やステータスを共有できるSNSアプリケーション「Flowd」も披露していた。「Qt Quickが入ったQt 4.7を利用すると、iPhoneに劣らない美しいUIを作成できる」と担当者。Flowdは、Android、iPhone、Nokiaの3種類のプラットフォームに対応している