FreeBSD - The Power To Serve

7日と8日、ドイツのカールスルーエにおいてFreeBSD DevSummitが開催された。続く9日と10日にはEuroBSDCon 2010が開催されている。毎年この時期に開催されている*BSD国際会議で、欧州では最大の*BSDカンファレンスとなる。

FreeBSDの最新開発状況に関する興味深い発表がいくつかあったので、内容をかいつまんで紹介する。

PC-BSD、FreeBSDプロジェクトと高い連携性

FreeBSDをベースに開発されているデスクトップ/ワークステーション向けのディストリビューションにPC-BSDがある。FreeBSDとKDEをベースに開発されたプロダクトで、デスクトップユースでFreeBSDを使いたい場合や、FreeBSDに触ってみたりその機能を試してみたいという場合にまず最初に候補としてあげられるプロダクト。

PC-BSDはFreeBSDをベースにしてサードパーティが開発しているプロダクトだが、ほかのプロダクトと異なりFreeBSDプロジェクトそのものとの関わり合いが深い傾向がある。FreeBSD開発者もPC-BSDをFreeBSDのデスクトップ向けとして公式に近いレベルでのディストリビューションとして認めているところがあり、PC-BSDの開発者との連携も強い。

デスクトップユーザはシステム管理者とは違うバグを見つける傾向にあるほか、安定版が登場する前に最新版をインストールしてバグを発見する傾向にある。こうしたアーリーアダプターからの報告はFreeBSDの品質を引き上げることにも効果があり、PC-BSDはそうした意味でも重要なポジションにある。

FreeBSDの流儀を崩さない新インストーラPC-SYSINSTALL

PC-BSDがFreeBSDと高い親和性を実現している例としては、最近導入された新しいインストーラPC-SYSINSTALLの開発指針や実装をみるとわかりやすい。PC-BSDは開発当初からQtをベースにしたカスタムインストーラを提供してきた。これは初心者ユーザには扱いやすいインストーラだが、CUI版が存在しないこと、FreeBSDの最新の機能を活用しきれていないことといった課題もあった。

PC-BSDの開発者であるKris Moore氏はこうした問題を解決するために新しいインストーラPC-SYSINSTALLを開発。フロントエンドとバックエンドに分離したタイプのインストーラで、バックエンドはすべて/bin/shスクリプトと、FreeBSD標準のコマンドのみで構成されている。FreeBSDへライブラリやアプリケーションを追加する必要がなく、既存の機能ですべてまかなえるうえ、システムの機能や性能をフルで発揮しやすいという特徴がある。PC-SYSINSTALLの導入で実現された新機能は次のとおり。

  • PC-BSDとFreeBSDの双方のインストールに対応
  • ZFS、UFS、UFS+Softupdates、UFS+SUJといったファイルシステムの組み合わせ構成に対応
  • Gmirrorを使ったミラーリングに対応
  • Geriを使った暗号化ファイルシステムに対応
  • Glabelを使ったラベリングに対応
  • カスタムイメージやバックアップからのインストールに対応

スクリプト構成にした背景には、オンザフライで変更できるという手軽さが開発速度を加速するという狙いもある。この方針はFreeBSDとしても受け付けやすいもので、FreeBSD 9-CURRENTにはPC-BSDのこの新しいインストーラがすでにpc-sysinstall(8)としてマージされている。PC-SYSINTALLではインストーラUIは設定ファイルを生成するためのUIにすぎない。このため、一度GUIインストーラでインストールしたあとは、生成される設定ファイルを使ってCUIから自動でインストールするといったことも簡単に実施できる。

PC-BSDはこの機能を使ってFreeBSDそのものをインストールすることにも対応しており、そうした点でもFreeBSDの公式ディストリビューションに近い立場にある。

PC-BSD 9.0、GNOMEやXFce4に対応、PBIのコマンドツール提供

PC-BSDはKDEをベースにしているが、これはFreeBSD 9をベースとするPC-BSD 9で変わることになる。インストール時にウィンドウプラットフォームが選択できるようになる見通し。今のところXDGに対応したKDE、GNOME、XFce4が選択できるようになる予定になっているほか、XDG互換ではないウィンドウマネージャも対応が加えられる見通し。これまでKDE以外のプラットフォームへの対応は根強い要望だっただけに、PC-BSD 9の登場が待ち望まれる。

PC-BSD 9.0ではPC-BSDのパッケージ管理システムであるPBIを操作するためのCUIコマンドの導入も計画されている。従来はGUIからの操作しかできなかったが、これがpbi_add(1)、pbi_autobuild(1)、pbi_create(1)、pbi_delete(1)、pbi_icon(1)、pbi_info(1)、pbi_makepatch(1)、pbi_makeport(1)、pbi_patch(1)、pbi_update(1)などのコマンドから操作できるようになる見通し。FreeBSDのパッケージ管理コマンドであるpkg_*系のコマンドとオプションや引数に互換性があるため、pkg_*系コマンドと同じように扱えるという特徴がある。

このようにPC-BSDにおける開発成果物はFreeBSDとの親和性が高い。PBIはパッケージとしての性能も、現在のFreeBSDパッケージシステムよりも独立性が高くアップグレードやダウングレードが実施しやすいという特徴がある。

「後藤大地が現地取材! EuroBSDCon 2010報告会」開催!


「EuroBSDCon 2010」(ドイツで10月8日~10日開催)で話題になった最新技術情報を、同カンファレンスに参加した後藤大地氏が詳しくご紹介します。

日時 : 11月4日(木) 18:00~20:00

場所 : パレスサイドビル マイナビルーム9F-L
    ※ 東京メトロ 東西線 竹橋駅 直通。 竹橋駅からの道順はこちらのWebページをご参照ください。

参加費: 無料

定員: 80名

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