基幹業務向けに最適化された第5世代エンタープライズX-アーキテクチャ「eX5」

日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業開発部長の東根作成英氏

「IT業界は今、オンプレミス環境や社外データセンターを問わず、クラウドコンピューティング基盤に集約される方向へと進んでいます。そうした中、IBMでは『Smarter Planet』をキーワードに、ITで生活環境や社会環境に変革をもたらす取り組みを実施。x86サーバにおいても、皆さんが普段から利用されているアプリケーションを、いかに最適な環境で動かせるかに注目しています」――日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業開発部長の東根作成英氏は、「ITジャーナルサミット 2010 仮想化セミナー」においてこのように語った。

近年では、x86サーバを使ったWindowsやLinuxのシステムが、基幹業務に用いられるケースが増加している。そこで、基幹業務向けのハードウェアに求められる要件を満たすべく登場したのが、第5世代エンタープライズX-アーキテクチャ「eX5」である。東根作氏は「汎用性の高い2Uサーバ/ブレードへの展開と、メモリやI/Oボトルネックの解消を重視して生まれたのがeX5です」と、開発のポイントを語った。

eX5のラインアップは、クラウド基盤としても最適なハイパフォーマンス4Uラックサーバ「System X3850 X5/x3950 X5」、高い集約率と信頼性に加えて抜群のメモリ拡張性を備えたブレードサーバ「BladeCenter HX5」、ハイパフォーマンスかつメモリ搭載量に優れた2Uラックサーバ「System x3690 X5」で構成されている。東根作氏によると、これらの製品は「業界の常識を超える3つの特徴」を備えているという。

業界最大の3TBメモリを実現する「MAX5」

eX5における最も大きな特徴が、インテルの設計を超えて業界最大となる3TBのメモリが搭載できるテクノロジ「MAX5」だ。現在のCPUにはメモリコントローラが内蔵されており、業界の常識として物理CPU数と最大メモリ容量は一定の関係にある。例えばXeon 5600番台のサーバでは、1CPUあたり9個までしかメモリを搭載できないといった具合だ。

しかしMAX5を使えば、CPUの数に依存せずメモリだけを増加することが可能。2CPUのBladeCenter HX5には標準で16個のDIMMスロットが搭載されているが、MAX5の連結によって2CPUのまま40DIMMスロット(8GBのDIMMで320GB容量)に拡張できる。さらに、MAX5装着状態のBladeCenter HX5を2台連結すれば、ブレードサーバながら4CPU/80DIMMスロットのスケーラビリティを実現してくれる。

同様に2U/4Uラックサーバでも、それぞれ1U型のユニットを装着することが可能だ。System x3690 X5の場合、MAX5によって2CPU/32DIMMスロットから2CPU/64DIMMスロットへ、System X3850 X5では4CPU/64DIMMスロットから4CPU/96DIMMスロットへと拡張できる。MAX5装着状態のSystem X3850 X5を2台連結すると、8CPU/192DIMMスロット、最大3TBという圧倒的な大容量メモリを実現できるのである。

「IBMがお客様の実環境で稼働している約1900台のサーバで調査した結果、2006年と2009年ではCPU使用率が平均で約1.3倍、ピーク値がほぼ変わらなかったのに対して、メモリは平均で約2倍、ピークで2.5倍以上も増加していることが分かりました。このように、現在の仮想化環境にはメモリの大容量化が必要不可欠といえます」と、東根作氏はメモリの重要性をアピール。また、CPU数を変えずにメモリ増設が可能な点について「物理CPU課金のソフトウェアライセンスやソフトウェアメンテナンスにかかるコストを大幅に低減できるのもポイントです」と、企業におけるメリットを語った。

仮想化の機能や特性をフル活用した運用管理が可能に

eX5における2つめの特徴が、複数のSSDをRAID5/6コントローラにつなぎ、高速なストレージとして提供する「eXFlash」だ。これは1モジュールあたり最大24万IOPS(I/O per Second)のI/O性能を誇るSSDで、ストレージのボトルネックが排除できるというもの。高パフォーマンスを実現するのはもちろん、最大構成時に電力コストを1/10まで削減可能な省エネルギー性能、従来のHDDと比べて飛躍的に向上する信頼性、ホットスワップによる高いメンテナンス性を実現してくれる。

さらに3つめの特徴として挙げられるのが、ワークロードごとに柔軟なシステムの結合・分割を可能にする「FlexNode」だ。eX5ではブレード/ラックともに2台のサーバを接続することができるが、この状態のままソフトウェア操作だけで2CPUと4CPUを柔軟に切り替えられるのである。テスト環境と本番環境での使い分けのほか、時間帯によってリソースを変更したり、1つのサーバ上でフェイルオーバーを実現したい場合にも便利な機能だろう。

続いて東根作氏は、Hyper-V 2.0を使って1物理サーバあたり384個の仮想マシンを動作させた検証結果、100個の仮想マシンに対するオーバーヘッドおよび稼働仮想マシン数と処理性能の関係などを披露。この結果を踏まえた上で「eX5で仮想化環境を構築すると、初期コストおよびVM単価の低減、オーバーヘッドを考慮したシステムデザイン、仮想化の機能や特性をフル活用した運用管理が可能になります」とアピールした。

ただし「大量のCPUとメモリさえあれば理想的な仮想化環境が構築できるか、といえばそうでもありません。ネットワークとストレージのボトルネックを改善すると同時に、これらの運用設計も重要になってくるからです」と東根作氏。

そこでIBMでは、10Gbイーサネットまで対応する豊富なネットワークスイッチ、ネットワーク仮想化ソリューション「IBM Virtual Fabric」や「VMready」をラインアップ。管理面については、多様なシステム環境を効率良く管理できるプラットフォーム管理ソフトウェア「IBM Systems Director 6.2」、統合データセンタ管理ソリューション「IBM Systems Director Network Control」、ネットワークを透過的に管理するプラグインなどを用意し、幅広いユーザーニーズに対応しているという。