電機業界にとって、2009年は厳しい1年だったと言わざるを得ない。

とはいえ、製品ごとにみると明るい話題もある。

薄型テレビがエコポイント制度の追い風もあって、前年実績を2割以上上回る水準で推移。空気清浄機も新型インフルエンザウイルスの蔓延に伴い、空質に対する意識の高まりを背景に、前年比2.5倍以上という高い伸びを示した。さらに、パソコンもネットブックの広がりと、10月22日のWindows 7の登場という追い風もあり、順調に推移。10月以降は前年同期比2桁増という伸び率を見せている。

各社の決算内容も2009年度第2四半期(7 - 9月)連結決算においては、8社が営業黒字を計上。第1四半期(4 - 6月)連結決算では8社が営業赤字であったことに比べると徐々に回復基調にあり、年間業績見通しを上方修正する企業も相次いでいる。

だが、その一方で、価格下落の進展が激しく、これが各社の収益を圧迫している。

シャープ、パナソニック、ソニーはテレビ事業においては、赤字から脱却できていない状態が続いており、NECは上期のパソコン事業が赤字という状況。伸張している製品分野において、主要メーカーが赤字という状況は健全な状態とは言い難い。また各社の回復を感じさせる決算も、その成果を見てみると、成長戦略による改善ではなく、構造改革効果によるものばかりだ。実際、各社の構造改革の成果は、経費削減目標を前倒しで達成するなど、ストイックともいえる徹底した取り組みが成果となっている。その点では、決算内容の回復も手放しでは喜べないのだ。

エコポイント効果で売上増の薄型テレビ

"買い換え時は今"とアピールしたことで、順調な売れ行きを見せた薄型テレビ

製品ジャンルごとにもう少し詳しく振り返ってみよう。

薄型テレビは、エコポイント効果を最大に生かした売れ行きを見せた。

社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、薄型テレビの国内出荷台数は2009年1月 - 10月までの累計で、前年同期比32.8%増の969万9000台という実績となっている。

2011年7月のアナログ放送の完全停波を前に、買い換えはいまがチャンスとばかりに購入が促進されたことも見逃せない。大手量販店では、薄型テレビそのものの価格下落に加えて、量販店独自のポイントと、政府のエコポイントの効果を差し引いた価格を提示。売れ筋となる32型液晶テレビでは5万円前後という価格表示も並ぶ。50型プラズマテレビでは、20万円を切るものも登場している。買い得感が一気に進んだといえよう。3月までとされていたエコポイントの実施時期が延長したことで、この勢いはまだ持続されることになりそうだ。

Vistaの失敗を繰り返さずにすんだWindows 7の経済効果

パソコンに関しては、やはりWindows 7効果が大きかった。

マイクロソフトによると、Windows 7のパッケージ版の予測本数は発売日までの段階でWindows Vistaの3倍、最初の土日を含む発売4日目でWindows Vistaの1年分に匹敵する本数を販売。10 - 12月のパッケージの販売本数は前年同期の約7倍の売れ行きに達しそうだ。また、Windows 7搭載PCも、前年同期比15%増、その翌週には17%増と2桁成長を記録しており、この勢いは年内まで維持することになるとの見方が支配的だ。

Windows 7効果で勢いづく量販店のPC売り場

問題は、企業におけるPC需要がどうなるかだ。

マイクロソフトでは、Windows 7の早期導入企業が200社を超えており、Windows Vistaのときの18社に比べて、好調な滑り出しを見せているとするが、その多くがWindows Vistaユーザーからの移行であり、敷居が高くなるWindows XPからの移行が、今後どこまで増加するかがポイントとなる。企業のIT投資抑制は依然として続いているが、Windows 7によって、いかに早い時期にIT投資の回復につなげることができるかが注目されよう。

2009年度は、厳しい1年だった電機業界だが、電機各社の経営体質は大きく転換している。その体質をもとに2010年以降の飛躍にどうつなげることができるかが、電機各社に求められるテーマといえよう。