フィンランドNokiaは8月末、最新のスマートフォン「N900」を発表した。米Appleの「iPhone」が登場して以来、スマートフォン市場で大ヒットが出ないNokiaだが、N900ではこれまで独占的に採用してきた「Symbian」ではなく、LinuxベースのOS「Maemo」を初めて搭載した。Nokiaのプラットフォーム戦略はどうなるのか? Nokiaの開発者向け組織Forum Nokiaのマーケティング担当ディレクター Srikanth Raju氏に話を聞いた。

Srikanth Raju氏

--N900を発表しました。「Maemo」を搭載した初のスマートフォンとなります。Nokiaのプラットフォーム戦略について教えてください。

Nokiaは、エントリ用の「Series 30」、フィーチャーフォンのメインプラットフォーム「Series 40」、スマートフォンOS「Symbian」用の「S60」などさまざまなプラットフォームを持っています。これらを利用して、25ユーロの「Nokia 1202」から、700ユーロの「Nokia N97」まで、さまざまなコンシューマセグメント向けに端末を開発できます。各端末は価格、機能、特徴、フォームファクタ、すべて異なります。

Symbianはオープン、柔軟性のあるアーキテクチャを持ち、カスタマイズ性にも優れています。タッチ/非タッチとさまざまな組み合わせが可能です。NokiaはSymbianを利用して、エンタープライズの「Eseries」、マルチメディアの「Nseries」など幅広い端末を作成しています。

Maemoは、"ポケットに入るモバイルコンピュータ"の第1世代の土台となるプラットフォーム技術です。N900は、Mozillaベースのブラウザ、電子メールなど、モバイルコンピュータで必要と思われる機能をすべて搭載しました。フォームファクタはこれまでの携帯電話の流れを汲むもので、マルチタッチ画面を持ちます。われわれが追求したのは、真のモバイルコンピュータです。

Linux OSをベースにしたMaemo端末「N900」

プラットフォーム戦略という観点では、Series 30、Series 40、S60/Symbian、Maemo、これらは共存するものです。ハイエンドにMaemoが加わったと考えるとわかりやすいと思います。これにより、Nokiaは最も包括的な端末ラインナップをそろえることができます。

--Maemoは、2005年に投入したインターネットタブレットラインで採用しているプラットフォームです。どうしていま、携帯電話機能を加える必要があったのでしょうか?

携帯電話に(コンピュータが融合する)コンバージェンス機能を求めるユーザーは多く、その声に応えました。これは、ごく自然な進化です。MaemoのコアはLinuxで、デスクトップコンピュータ並みのパワーと機能を持つOSです。

--同じく2005年に新ブランドとしてNseriesを発表したとき、マルチメディアコンピュータとうたっていました。Symbianではモバイルコンピュータは役不足だったのでしょうか?

そうではありません。Symbianは高度な機能を多数含んでいます。

MaemoとSymbianとの違いは、Maemoではフル機能のブラウザとマルチタスクが可能な点です。ユーザーは複数のウィンドウ画面で複数の作業を行うことができます。これは、デスクトップレベルのOSだから可能となるものです。マルチプロセッシング、マルチタスクなどが要求される端末に適したOSで、この点でMaemoは今日のモバイルコンピュータに必要なニーズを満たします。

Symbianは、われわれがNseriesやEseriesなどを立ち上げた際に必要としていたニーズ、つまり当時のモバイルコンピュータの定義を満たすものでした。また、その後も進化を続けています。たとえば、デスクトップで利用されているオープンソースのブラウザエンジンと同じもの(WebKit)を搭載しています。私はN97を持っていますが、タッチ画面を持ち、フルキーボードで入力できます。Facebookなどのアプリケーションや電子メールが統合されており、5Mピクセルカメラなどの機能を見事に詰め込んだすばらしい携帯電話です。