フリーウェア発のスクラップソフトとして多くの人に愛用され続ける『紙copi』が今年、誕生10周年を迎えた。これを記念したイベント「紙copi Night」には、抽選で選ばれた20名ほどの参加者が集まり、開発者の洛西氏、"紙copi エヴァンジェリスト"のジャーナリスト神田敏晶氏を中心とした座談会が行われた。

USTREAMでもイベントを中継。当日の動画はこちらから

紙copiの誕生からこれまで

紙copiは、大まかに言うとWebページの取り込みができるメモ帳ソフトである。と言ってしまうと地味なのだが、その実力は本誌でも何度か紹介されているので、ご存知の方も多いだろう。Firefoxのアドオンや、昨年リリースされたオンライン版も愛用者の支持を一層厚くしている。

イベントでは開発者の洛西氏より紙copiの歴史が紹介された。紙copiの誕生は1999年の9月。フリーソフトとして提供された。開発した洛西氏は当時なんと高校生。開発はCPU 133MHz/ HDD 1GBのノートPCで、「OSまるごとよく落ちた」という。「紙」シリーズを象徴する、新規保存も上書き保存も必要ない「自動保存機能」は、この最初のバージョンから始まった。会場の参加者からも、自動保存に大きな衝撃を受けたという声が聞かれた。直感的に使えるユニークなインタフェースも特徴的で、現在に至るまでその基本デザインは変わっていない。

紙シリーズ初代の「紙 2001」。基本機能とインタフェースは今とほぼ変わらない

その後、いくつかのバージョンアップを経て、2008年にはオンライン版が登場。iPhoneや携帯電話からも利用できることで大きな反響を呼んだ。

洛西氏は紙copiについて「メモを取ることを極限まで突き詰めたスクラップブックソフト」と定義した。整理することよりも書くことに重点を置き、「スムーズで素早い操作」「シンプルに迷わず使える」、加えて「カラフルに毎日を楽しく」という開発コンセプトがブレずに貫かれてきたことが、紙copiの長く愛されるゆえんだと言えるだろう。

現在もユーザーが増え続けている

次期バージョン「紙copi 3」発表

洛西氏の淡々とした語りの最後に、突如紙copiの次期バージョン「紙copi 3」が発表された。これは2005年の「紙copi 2」以来5年ぶりのメジャーバージョンアップで、来春リリースを目指して現在開発中だという。新たにMacからも利用可能になるとのことで、MacBookを使ったデモが行われた。

同時に1つのファイルに書き込んでも、両方の編集内容が保存される

主な特徴は下記の通り。

「Webとローカルの完全な統合」ネット環境が無い場合は、接続時に差分を自動でアップデート

「モバイルサポート」iPhone/携帯電話/PSPでも利用が可能

「プレーンテキストの継続」普遍のテキスト形式であり続ける

「Git over SSHを利用した同期」ファイルが同時に編集されても、それぞれの書き込みを消すことなく保存

「一新されたインタフェース」洋紙見本帳をイメージしたデザインになる予定とのこと

紙copiの読み書きが可能なAPIも公開予定

いまどきっぽい機能をふんだんに盛り込んだ新バージョンだが、洛西氏が目指すのは「手に馴染む文房具」。シンプルかつ実用的でありながら、遊び心のある「紙」らしさを継承した形となりそうだ。

この先10年も

続いて行われた座談会では、紙copiの使い方や要望する機能などについて意見が交わされた。シンプルなツールだけに活用法も様々だが、その中で目立ったのは「紙copi + DropBox + 秀丸エディタ」という使い方。DropBoxでデータを丸ごとクラウドに置き、エディタの機能面を秀丸で補うというものだ。

新機能の要望としては、「タイムスタンプの入力サポート」「印刷機能の充実」「画面の上下分割機能」「キー割り当てのカスタマイズ」「タグを付けたい」など、大小様々なものが挙げられた。また、紙copiそのものの機能向上だけでなく、他のツールとの連携や"兄弟版"の開発、アドオン対応などのアイデアも出された。

最後に、洛西氏は今後の紙copiについて「自分の感覚に離れないよう作ることができれば、(次の10年も)残っていけると思う。今後も人が使うことの利便性を考えていきたいと思っています」と述べ、イベントを締めくくった。