経済データとグラフの共有サービス『vizoo』が、β版公開から半年を経て正式稼動を開始する。経済指標や社会統計など豊富なデータを提供し、それをわかりやすく"グラフ化"する機能も備える。運営会社のフィルモア・アドバイザリーに話を伺った。

Google検索では欲しい資料が見つからない

森航介 フィルモア・アドバイザリー 代表取締役社長。国内金融機関在職中に米スタンフォード大学MBAコースに留学。2006年11月に独立

仕事ではなにかと"データ"がほしいときがある。プレゼン資料づくりや情報分析のために、企業の株価/ 財務/ IR情報、シンクタンクや官公庁が公開する各種統計データはないか? "使えそうな"グラフはないか? と。だが、いざWebを検索してみるとわかるが、意外なほどお目当ての情報にたどりつけない。こうした現状についてフィルモア・アドバイザリー代表取締役社長 森航介氏は、「データに対するニーズが満たされていない。Googleにあてもないクエリを投げつけ、検索結果を何ページも確認して、結局はごく一部の人が入手できるにすぎない」。vizooはそんなニーズに応えるサービスだ。

信頼できるデータを提供

vizooは、データブック(各種経済・社会統計データ)とグラフのマーケットだ。そして森氏が期待も込めて「グラフ版のYouTube」と紹介するように、CGM(Consumer Generated Media)的要素として、ユーザー自身がグラフを作成し、自由に公開できる場となっている。

「vizoo」のグラフ閲覧ページ。利用したいグラフやデータがあればダウンロードボタンで入手できる

おもな提供機能は、グラフ検索、データブック検索、グラフ作成・計算の3種類。データブックはMicrosoft Excel形式で、グラフはPNG形式または埋め込みタグ形式で提供される。2009年12月時点のデータブック数は約2万件。野村総合研究所(NRI)や矢野経済研究所など大手データベンダから提供を受けた。ネット関連企業のサイト統計といったデータベンダがカバーしていないIR情報などは、公開情報をもとにフィルモア・アドバイザリーがデータブック化している。各データの料金は無料~500円程度のものが多く、支払方式はクレジット決済。なお、主要100社の財務データは、過去10年分(四半期ベース)の情報が無料で提供される。

グラフ検索画面

データブック検索画面

"気づき"をもたらすグラフ化機能

vizooの特徴とも言えるのが、"情報をアートする"というコンセプトを実現するグラフ作成・計算機能だ。

データブックからいかに情報を引き出すか。グラフ化という切り口は、数値情報からは見えなかった"気づき"を得るという意味で有効だ。vizooのグラフウィザードは、どんなグラフでもひとつの枠で比較できる柔軟性と高度な計算機能を備えており(無料アカウントでは一部制限される)、利用者のアイディア次第で多彩なデータ分析が可能になる。たとえば、主要SNSの会員数/ PV数/ 運営会社の株価の推移をグラフ化、複数企業の株式関連指標を時系列でグラフ化といった処理が手間をかけずに行なえる。

ただ、豊富な機能が価値の高いグラフを生むという道理はない。この点について森氏は、グラフ作成者の参加を促す仕組みが必要とした。「vizooではグラフを作成できるユーザーの価値が大きい。価値のあるグラフを作るには、データに関する知識や文脈を理解できる力が必要。そういうユーザーとのレベニューシェアを実現したい」。

グラフ作成画面。下記はグラフの埋め込み例


"使えるサービス"へと進化、そして海外進出

β版から正式版への大きな変更点は「"おもしろい"から"使える"に変わった」こと。森氏はvizooの実用性に自信を覗かせる。そして、業務利用が見込まれることから、新たに法人向けパッケージ契約「vizoo Pro」を開始する。1IDにつき年間60万円(月額5万円換算)で全データブックを利用できるほか、Proアカウント専用の高度なグラフ作成・計算機能を提供。作成したグラフはvizoo上で管理や公開が可能だ。ユーザーには、コンサルタント/ 上場企業のIR担当/ 企画担当/ 証券会社/ 投資銀行などが想定される。

vizooの今後の展開では、近日中にビジネス情報のデータサービス「日経テレコン21」へグラフコンテンツの提供を開始するほか、「こうしたデータの検索や活用に対する潜在的ニーズは、海外企業のほうが大きい。データ・グラフの共有サイトは米国にもなく、"日本発、世界初"のサービスを目指したい」(森氏)。海外のデータベンダと提携し、2010年中にvizoo英語版のリリースを予定している。