スリル、サスペンス、アクション……そして要所に散りばめられた歴史ミステリー。いわゆる「考古学アドベンチャー」モノは、映画では人気のジャンルである。老若男女通して知名度が高いモノと言えば「インディ・ジョーンズ」シリーズが挙げられるだろう。

ゲームの世界でも、このジャンルはさまざまな作品が世に送り出されていて、クラシック作品として世界的に有名なものに「ピットフォール」などがある。これにピンとこない次の世代は「トゥームレイダー」シリーズならばどうか。映画化されたほどの人気作品なので「ああ」と頷いてもらえるはずだ。実際、ゲーム世界ではこの「トゥームレイダー」があまりにも有名になり過ぎたために、他のタイトルが台頭してこないという雰囲気が長らく漂っていた。

そんな中、「考古学アドベンチャー」モノでは21世紀最初の金字塔を打ち立てたといえそうなのが、PS3プラットフォームに登場した「アンチャーテッド」シリーズだ。

「アンチャーテッド」って聞いたことないんですけど?

「不遇の名作」というモノがある。誰がどう見ても名作なのだが、その処遇が不運だったために正当な評価を得られていない作品のことである。時にこうした作品は「隠れた名作」と言われる。「アンチャーテッド」シリーズはまさにそんな作品だ。

そんな不遇な名作は、海外作品に多く、例えば近年のプレイステーション系タイトルで言えば「ゴッド・オブ・ウォー」(GOW)シリーズが知名度の内外格差という点でその代表格だろうか。アメリカでは、もはやプレイステーション・ファミリーのアイコン的存在で、E3、GDCなどの国際ゲームイベントの基調講演では、呪いの刺青があしらわれた主人公クレイトスのスキンヘッドが画面に現れるやいなや会場席から歓喜の悲鳴が起こるほどである。

2008年のE3のプレスカンファレンスで『ゴッド・オブ・ウォーIII』が開発中であることが発表されたときには会場がどよめくほどの歓声が起きた。日本でも発売が決定!
God of War is a registered trademark of Sony Computer Entertainment America Inc.
(C)Sony Computer Entertainment America Inc.

「GOW」シリーズはソニー・コンピュータエンタテインメントアメリカ(SCEA)が開発したファーストパーティタイトルなのだが、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)はそのテイストが日本市場には合わないと判断したのだろうか、これまで日本での販売を見送っており、その結果、日本ではやや遅れてカプコンからリリースされてきた。ところが、最新作となる『ゴッド・オブ・ウォーIII』に関しては、ビッグタイトル不足に嘆くSCEJが重い腰を上げたようで、SCEJブランドより発売されることが決定している。

対して「アンチャーテッド」は「クラッシュ・バンディクー」や「ジャック×ダクスター」を手がけた老舗のファーストパーティスタジオである米NAUGHTY DOG社が開発したタイトルで、こちらはシリーズ第一作の『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』(以下、『1』)からSCEJによってリリースされている。しかし、結果論ではあるが、この『1』のプロモーションがいまひとつ実を結ばず、さらにリリースされた体験版がいわゆるガンシューティングシーンにフォーカスしたモノであったためか、日本ユーザーの心には響かなかった。

しかし日本でも、プレイしたファンからは絶賛評価が得られており、緩やかではあるが口コミで人気を拡大していった経緯がある。実際、PS3発売後1年目、まだPS3プラットフォームが暖まり切っていない2007年末のタイミングで発売されたこの『1』は、テクノロジー的にも、ゲーム体験的にもトップクラスの完成度であったと筆者は今でも確信している。

実際、『1』は全世界では累計250万本以上のセールスを記録し、その後、当然のように続編の開発が颯爽と報じられる。このとき筆者は、日本での『1』のセールス不調が、SCEJに「GOW」シリーズと同じく日本での発売見送りを決断させるのではないかと心配したものだった。しかし、これは杞憂に終わる。ちゃんとSCEJが第二作も発売してくれることになったのだ。

しかし、SCEJも「売れなかった作品の続編はもっと売れない」ということを相当心配したのだろうか、アメリカ本国では『Uncharted2:Among Thieves』という堂々のナンバリングを大呼するのに対し、日本では『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』(以下、『2』)という、ナンバリングを外して、『2』から日本立上げとしているようだ。

前置きが長くなったが、重要な事柄だと思ったのであえて触れておいた。

今回レビューするのは、この『2』、つまり『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』である。もし、今回のレビューで「アンチャーテッド」シリーズに興味を持ってくれた人はぜひとも『1』からプレイして欲しい。『1』は価格が安くなったベスト盤が発売済みなので、できれば『1』『2』をセットでプレイすることをお勧めする。

前作『アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝』はベスト盤が発売中 (価格 / 2,980円)

今作のタイトルは『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』。日本ではナンバリングが外されたが、もちろん続編となる『2』に相当する

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