PCが十分に普及した現在では、多くの企業が、何らかの会計ソフトを導入しているだろう。しかしながら、個人事業者やSOHO、新規に設立した会社では、経理担当者をおくほどの余裕がないなどの理由で、まだ、会計ソフトを導入していないかもしれない。また、現在使用中の会計ソフトに満足していない企業もあるだろう。  そこで、今回は、パソコン会計ソフトの定番と評される「弥生会計」の最新版「弥生会計 10」を紹介しよう。

会計業務のボトルネックは、仕訳の転記と集計

会計業務は、日々の記帳がたいへんのようなイメージがあるかもしれないが、実は、最もやっかいな作業は、仕訳の転記と集計である。

仕訳の転記は、勘定科目や補助科目ごとに取引を一覧表にする作業で、集計は、科目残高ごとの合計を出すことである。

転記作業の難しさは、すべての仕訳を左右の科目の元帳に、1つ残らず転記しなければならないことにある。1つでも抜けると、複式簿記の性質上、相手方の科目残高とのバランスがくずれ、文字通りバランスシートができなくなってしまうことになる。一度、バランスが合わなくなると、原因を探すのは困難を極める。そんな悩みを解決してくれるのが、会計ソフトなのである。

たとえば、弥生会計を使えばそんな心配を一切せずに、日々の仕訳を入力するだけでいい。入力した仕訳は、自動転記され、科目残高の貸借のバランスも崩れない。基本的に、仕訳の入力作業だけで元帳と財務諸表ができてしまうのだ。弥生会計では、元帳や財務諸表は、別に作成するのではなく、メニューなどを操作して表示するだけ。つまり、会計業務の中で、もっとも時間のかかる転記と集計の作業時間をゼロにしてくれる便利なソフトなのだ。

簿記の知識がなくても、本当に大丈夫?

簿記や経理の経験がない人が、会計ソフトを使おうとする場合の最大の懸念は、「簿記がわからなくても使えるのか?」だろう。簿記の基本は仕訳だが、実は、ほとんどの仕訳は素人でもわかるのだ。いきなり振替伝票を渡されたら、お手上げかもしれないが、弥生会計には、元帳形式の帳簿という「ものすごく簡単な入力方式」がある。弥生会計では、基本的に科目の登録と仕訳の入力さえできれば十分である。

元帳形式の帳簿とは、仕訳の片方の科目が固定された帳簿のことで、代表的なものに、「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「経費帳」などがある。これらの帳簿の特長は、「借方/貸方」に科目を振り分ける必要がなく、誰にでも理解できる「収入金額/支出金額」「預入金額/引出金額」のいずれかに相手科目を入力するようになっていることである。この方式だと、通常取引の仕訳入力で迷うことは、ほとんどない。

手書きの帳簿では、これらの帳簿を単式とみなす場合もあるが、弥生会計の場合、相手方科目に自動転記されるので、りっぱな複式だ。

たとえば「コピー用紙(1,050円)を現金で購入した」という仕訳なら、現金出納帳で「相手勘定科目」として「事務用品費」を選択し、「支出金額」の欄に「1,050」と入力すればいい。「摘要」欄には、内容がわかるような文言を入力する。見てのとおり、科目の選択と金額の入力が相手方しかないので、迷うことはない。仕訳の内容は、仕訳日記帳や振替伝票で入力したのと同様に扱われる