"大人の夏"を楽しもうじゃないか

夏だ。もうドップリ夏である。しかし、「今年も夏がやってきた」とぼんやり油断していてはいけない。何もしなければあっという間に終わってしまうのも夏である。ということで、今年は"大人の夏"を楽しんでもらおうじゃないか。夏の大人の醍醐味といえばビールである。ここからは、旨いビールが楽しめるスポット、ずばりビール工場を紹介する。

言っておくが、「え~、工場見学?? 」と思ってはいけない。今回お邪魔したのはアサヒビールの神奈川工場なのだが、取材班も仕事を忘れて楽しんでしまったほどの充実振りだった。何が充実しているかは読んでみてのお楽しみ。ビール好き、必見!!

アサヒビール神奈川工場。東京ドーム約9個分という広大な敷地内に工場やレストランが立地している。緑豊かで高原リゾートのよう

アサヒビール 神奈川工場」は2002年5月操業開始。金太郎の伝説で有名な箱根・足柄の山の中にあり、最寄りの大雄山線・大雄山駅から路線バスで約10分、小田急線・新松田駅からは路線バスで約20分の場所にある。敷地面積は約412,000平方メートル、東京ドーム約9個分。うち、50%以上が緑地となっていて、工場というより高原リゾートといった雰囲気。ちなみに工場以外には、焼肉レストラン「アサヒビール園」(なんと建築家・安藤忠雄氏設計!!)、南足柄市を中心とした物産品を扱う「物産館 あしがらの里」もある。

料金無料で試飲付きの見学ツアー

工場エントランス。この奥で「スーパードライ」がつくられているのだ

ガイドさんが製造工程を紹介してくれる工場見学ツアーは予約制で、9時30分~15時の間に30分おきに実施されている(1日で12回実施)。料金は無料だ。所要時間は試飲20分を含め、約90分。「あ、結構長いんだ」というのが正直な感想だったが、実際に参加してみると、内容充実のため、あっという間の1時間半だった。ここからは、詳しい見学内容をお届けしていく。

まずは「映写室」でのフィルム鑑賞。約10分間の映像を見て、これから始まる工場見学の予備知識を得る。その後4階に移動し、いよいよ本格的な工場見学のスタート(工場の構造上、製造工程と見学経路が前後する箇所があるが、今回は製造工程に沿って紹介していく)。

4階に着くと、まず迎えてくれるのが独特の香り。「何かが発酵しているような……」とガイドさんに聞くと、「これは、ビールになる前の段階である麦汁がつくられる香りです」とのこと。香りの正体が判明すると、次はビール原料の展示コーナーへ。

ここでは、麦芽とホップが展示されており、ホップは乾燥させたものが置いてあった。独特の香りがあり、ちょっぴりスパイシーな感じもして「衣をつけて揚げたらおいしそう……」などと考える。麦芽は試食もでき、スナック風の香ばしい味わい。絶対ビールに合うよね。

これが乾燥ホップ。ビール独特の苦味や香りのもととなる

二条大麦の麦芽。麦芽とは、大麦を発芽させたあと、乾燥させて成長を止め、脱根したもののこと

一生かかっても飲みきれない量のビールが

その後、見えてくるのが仕込室。巨大な釜がいくつも並んでいて、麦芽とホップ、副原料、水などの原材料がそれぞれの釜を経てビールのもととなる麦汁へと変化していく。一番大きな釜は直径13m。350ml缶にして36万本分が一度に仕込めるのだそう。……一生かけて飲んでも、飲みきれない量です。なお、各コーナーはガラス張りになっていて、実際の製造ラインを見学ルートから見ることができる。

こちらが仕込室。写真右手前が一番大きな釜で直径13m

次は、発酵・熟成の工程へ。仕込工程を終えた麦汁に酵母を加え、タンクで1週間ほどかけ発酵させる。これをさらに別のタンクに入れて熟成。これらのタンクは高さ約20mで、50本あるとのことだった。1本あたり、350ml缶が140万本分入るそうで、「毎日350ml缶を1本飲んでも、タンク1本分飲むのに3,900年かかります」といわれ、ただただ気が遠くなる。

ズラーッと並んだタンクはその数50本

続いてろ過工程。タンクで熟成したビールをフィルターでろ過し、酵母などを取り除くことで、ビールが完成する。その後はびん詰・缶詰され、製品の形になる。神奈川工場では現在、「アサヒスーパードライ」と「本生アクアブルー」の2製品をつくっている。製造ラインは基本共通で、日によって銘柄を変えて製造するのだという。

こちらがろ過工程。右の写真の中央部分で光り輝いているのがビールである。ものすごい勢いでビールが流れているのだ

製品として完成した後も、すぐに市場に出るわけではない。品質管理室で行われる様々な検査をクリアしたものが私たちの元に届くのだ。検査の中で特に重要なのが、「官能検査」。訓練を受けた専門家が試飲し、味や香り、喉ごしなどを確かめている。製造工程はコンピュータ制御されているが、最終的にはやはり人間が味わいを確認するのだという。