【レポート】

米Yahoo!と米Microsoft、提携合意で記者会見を開催

    Junya Suzuki  [2009/07/30]

    米Yahoo!と米Microsoftは7月29日(現地時間)、長らく噂されては立ち消え、また交渉に入るという長いトンネルを抜け、ようやく検索広告分野における提携合意を発表した。

    既報のように、今後10年間に及ぶ提携では両社の検索広告プラットフォームをMicrosoft Bingベースのものに統一、そのうえで両社それぞれが独自のサービスを構築していくという提携と競合の両側面を持つ。今回は29日早朝に開催された両社の記者会見の様子をレポートし、その詳細に触れてみよう。

    究極のスケールメリットを目指したWin-Winの提携

    記者会見の冒頭で米Yahoo! CEOのCarol Bartz氏は「今日はYahoo!にとって素晴らしい日だ。この提携が業界のゲームを変えるものとなるだろう」と挨拶し、その利用者におけるメリットを「ユーザーエクスペリエンスの向上」と説明する。

    Bartz氏はこれに関して「Yahoo!は技術面でも素晴らしい企業であり、業績面でも強力なパフォーマンスを持っている」と述べ、Microsoftに技術面で劣っているといった見方を否定する。検索ビジネスはYahoo!にとって引き続き重要なものであり、そのコア技術をMicrosoft側にライセンスすることでシステム統合を実現し、1つの強力なプラットフォームとすることに意味があると付け加える。その究極の目的として「スケールメリット」を強調する。

    Bartz氏に続けて挨拶した米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏は開口一番「長らく待ちこがれた提携を実現できた」と喜びのコメントを述べるとともに、その提携でまず念頭にあったのが「顧客第一主義」であると説明する。これは広告主とユーザーにとっての選択肢が増えるというユーザー側の視点だけでなく、Microsoftにとっては強力なパートナーを得ての競争力強化、Yahoo!にとってはユーザーエクスペリエンス向上への注力といったメリットを生み出す。同氏は今回の提携を「Win-Winの関係」と表現しており、関係者に前述のようなメリットをもたらすとともに、究極的には「スケールメリットの効果をもたらす」とBartz氏同様の見解を述べている。

    両CEOが説明するように、今回の提携の意義は「協力できるところは協力し、それ以外の部分で競合していく」という切り分けにある。また検索広告市場でGoogleが圧倒的なシェアを獲得するなか、スケールメリットで対抗していく狙いもある。特に近年においては研究開発費が増大し、快適なサービスを提供するためのデータセンターへの設備投資も膨大なものとなっている。もしこうした投資を一元化できるのであれば、より競争で優位に立つことが可能だ。Yahoo!が検索技術をMicrosoftへとライセンスし、それを同社のBingへと取り込むことでデータセンターの機能をMicrosoft側へと一元化し、あとはこのプラットフォームを利用して両社が各々のサービスを構築していけばいい。

    Yahoo!とMicrosoftが今後歩む道

    ここでまず、両社が発表した提携の詳細を箇条書きでまとめてみよう。

    • 提携期間は10年間
    • MicrosoftはYahoo!からコア検索技術のライセンスを10年契約で獲得、これを同社の既存のWeb検索プラットフォームへと組み込む
    • Yahoo!の各サイトにおいて、Microsoft Bingがアルゴリズム検索と検索広告の独占プラットフォームとなる。だが一方でディスプレイ広告といった提携内容に該当したい技術やサービスについては引き続きYahoo!は既存のものを利用する
    • Yahoo!は両社のプレミアム検索広告の世界規模での独占契約営業部隊となる。セルフサービス型の広告販売についてはMicrosoftのAdCenterを利用し、同プラットフォームの自動オークションプロセスによって広告価格が決定される
    • Yahoo!とMicrosoftそれぞれが独自のディスプレイ広告ビジネスと営業部隊を運営する
    • Yahoo!は自身のサービス群をそのまま保持し、その刷新を続けていく。これにはBing技術をベースとした検索システムも含まれる
    • MicrosoftはYahoo!に対して生成トラフィックに基づいた売上シェアでYahoo!に対価を支払う。この対象となるのはYahoo!自身が保有/運営(Owned and Operated: O&O)するサイトのほか、提携のアフィリエイトサイトが含まれる
    • 当初の5年間は合意に基づき、これらサイトのトラフィックから生じた検索広告売上の88%をTAC (Traffic Acquisition Cost)としてMicrosoftからYahoo!に支払う
    • Yahoo!は引き続き既存のアフィリエイトパートナーの仲介を行う
    • Microsoftは世界各国での(Yahoo!への)システムのインプリメンテーションにおいて、最初の18ヶ月間でのO&OのRPS (Revenue Per Share)を保証する
    • すべてのシステム刷新完了は、政府の了承から24ヶ月以内を予定している。Yahoo!は現状の売上を基にした予測として、今回の提携でGAAPベースでの年間営業利益が約5億ドル、固定資産コストで約2億ドルのメリットが享受できると見込む。また年間キャッシュフローで約2億7500万ドルほどの効果がある
    • 両社プラットフォーム間でやりとりされる情報を最低限に絞り込むことで、ユーザープライバシーの保護を実現する。また両社間で検索データの共有は禁止する

    前述のように検索とそれに付随する広告表示プラットフォームを共有化し、そこでの売上を両社でシェアするのが骨子となる。この提携交渉を最初に伝えたKara Swisher氏の記事では、上記の事項のほか、「Yahoo!がMicrosoftプラットフォームを導入する見返りに金銭を受け取る」「バナー等のディスプレイ広告でも提携」といった内容が含まれていたが、正式発表された提携内容からは除外されている。米Ad Ageなどの報道によれば、当初の交渉はYahoo!側から金銭要求を行ったことでMicrosoftが話し合いを中断させたという経緯があり、あくまで対等の関係で交渉を進めることが前提にあったようだ。またディスプレイ広告まで縛りを入れないことで、既存のビジネスの自由度を高めるといった狙いも考えられる。

    こうした合意を受けて気になるのは今後の展開だ。まず米国政府から独占禁止法などの視点で提携合意の審査を受ける必要がある。両社によれば、来週にも政府に提携審査の申請を行う予定だという。また米国だけでなく、ビジネスを展開する世界各国での審査プロセスが待っている。提携合意とシステム統合までに2年ほどの猶予を持たせているが、それも世界展開を前提とした提携のためだ。当然日本のビジネスも影響を受けるとみられ、Yahoo! Japanをはじめ、広告アフィリエイトなどでパートナー関係にある各サイトもこうした変化に巻き込まれるだろう。だが審査プロセスについてMicrosoftでは「市場で独占状態にあるGoogleとは異なり、今回のケースでは大きな問題にはならないだろう」とも指摘する。

    次に待っているのはGoogleとの対決だ。ここ最近になりBingの検索広告市場での地位が少しずつ向上していることが報告されているが、本格対決するレベルにはまったく及んでいない。今回Yahoo!を味方につけたことで、プラットフォーム対決としてはようやくスタートラインに立てた状態だ。Ballmer氏は「ここでの数億ドル規模の投資が今後何年、あるいは10年といった単位で多きな意味を持つようになる」と述べており、スケールメリットを活かして徐々に差を詰めていく攻略スタイルをとることになるだろう。

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