ERPを導入するべきか否か

この時期、IT投資を行うことが決まったとして、ERPはその用途としてふさわしいだろうか?

城野氏は、「もしその企業において、情報がシステムごとに分断されていて共有されていない状態であれば、ERPは効果をもたらす」と指摘する。ERPを導入することで、社内のあらゆる情報を横断的かつリアルタイムで見ることが可能になれば、企業の見え方も変わってくるからだ。

また、拡大期にある企業や転換が必要である企業においても、ERPの導入によってシステムを変えることは有益だという。ERPは企業の基幹業務をカバーするパッケージであるため、バックオフィス機能を強固なものにするという観点では非常に重要だ。実際、このような時期でも積極的なIT投資を検討されている企業もあるという。

ユーザー、パートナーに求められる姿勢とは

ではERPを導入する際、ユーザーに求められるものは何であり、また、ユーザーはパートナーの良し悪しをどこで判断すべきだろうか?

城野氏は、 「システムとはシステム部門だけで構築できるものではなく、特にERPのようなあらかじめある程度の機能が提供されるパッケージを導入する場合は、プロジェクトの最初から業務部門を巻き込んだうえで、システム導入後の姿を共有していくことが大切」とアドバイスする。

ERPはITプロジェクトであるため、ともすると情報システム部門に負担がかかりがちだが、企業の全体最適を図るというERPの性質上、企業全体で取り組む必要がある。

一方、パートナーの良し悪しについては、業務部門の担当者も交えた席にコンサルタントを呼んで少し話を聞けば、その業務にどこまで精通しているかすぐにわかるはずだという。

「パートナーを簡単に見分けるポイントの1つは、ユーザー企業が気付いてない点までヒアリングできるかどうか。またパートナーはうまく利用するという発想も重要」

加えて、ユーザーの言うことを何でも聞いてしまうのではなく、極力カスタマイズを減らすなど、正しいアドバイスをしようという心構えを持っているパートナーを選ぶべきである。

最後に、城野氏は、不況の中にありながらも投資した企業の例を挙げ、「不況時に投資するという行為は、意識的に会社にうねりをもたらすという意味でも効果をもたらすと思う」と説明。ERPプロジェクトを全社的な取り組みとして、検討・導入することの"効果"を強調した。