「AlchemyはCをDLLにするものではない。C/C++からAS3にトランスレートする際はセキュリティも十分に考慮される必要があるが、暗号化にはOpenSSLを採用している」(DeMichillie氏)

Alchemyは発想も将来性も優れたもののように思える。さぞ大仰な研究や分析があったのかと考えてしまうが、もともとはAdobeのAdvanced Technology Groupの研究者がパートタイムで開発したものだという。プラットフォーム事業部のチームが成果物をみて、これは使えるとピンときてAdobe Labs入りした。

AdobeはGoogleやYahoo!の開発者にActionScriptでWebアプリケーションを開発してもらうという面でいえば成功を収める。プラットフォーム事業部のチームがAlchemyに注目したのは、AlchemyがActionScript活躍のシーンをさらに広げることにつながるからだ。GoogleやYahoo!ではすでにC/C++で開発した資産をもっている。これらがActionScriptで使えるようになれば、開発者はもっとActionScriptを扱いやすくなるし、Flashプラットフォームの価値も上がるというわけだ。

ユーザの反応は…

魅力的に映るAlchemyだが、これがAdobeの正式プロジェクトになるかどうかはこれからだ。まず同社はAdobe Labsで公開することで、このアプローチにどれだけ利用者が興味を引くかを調査した。最初の反応は上々とのことだ。特にOSSコミュニティがAlchemyに高い関心を示している。このまま関心が高いままであれば、正式にツールとして提供されることにもなるだろう。

LLVM ActionScriptバックエンドを開発するということは、最終的にLLVMにOSSとして寄贈するかどうかが気になるところだ。同点に関してはまだ未定とされていた。開発者の関心が高いことがわかったことが重要だといい、状況を見つつ今後の活動に反映させるという。

JavaScript 2.0はECMAScript 3.1ベースだが、ActionScriptはユーザのために

ActionScriptといえばECMAScript 4のベースになっている実装だ。JavaScript 2.0のベースにはAdobe、Mozilla、Opera、Googleが推すECMAScript 4と、MicrosoftやYahoo!が推すECMAScript 3.1がある。どちらがJavaScript 2.0のベースになるかが注目されていたわけだが、2008年8月にはJavaScript 2.0はECMAScript 3.1ベースでいく方向性が確認され、ECMAScript 4陣営は譲歩した形になった。これは当然、Adobeの今後の戦略にも影響を及ぼすことになる。

Greg DeMichillie氏にこの決定について尋ねたところ、「正直なところほっとした」という答えが返ってきた。それまではJavaScript 2.0がいったいどうなってしまうのか不透明だったから、これでようやく方向性が固まったという安堵が大きかったという。

ActionScriptはオブジェクト指向を実装しやすい整理された言語だ。大規模なWebアプリやGUIアプリの開発にも適用できる。一方でECMAScript 3.1ベースのJavaScriptは小さいスニペットの作成が優れており、コピーアビリティが高い。AdobeではActionScriptの改善を続け、大規模開発にもスニペットにも使えるように取り組んでいくという。