韓国ではいま、インターネット論客として注目を集めたミネルバが逮捕され、社会に波紋を広げている。彼によって数カ月の間に書き込まれた文章がその原因。彼の文章は、なぜこれほどまでに社会に影響を及ぼしたのだろうか。

次々と当たる予言

2008年7月、インターネットポータルサイト「Daum」の討論掲示板「アゴラ」に書き込まれた、"ミネルバ"と名乗る人物による書き込みが注目を集めた。

ここでミネルバは、米国のサブプライムローン問題が韓国にまで飛び火することを予見。続けて米リーマン・ブラザーズの経営破たんについて論じた。これがことごとく当たったため、ネティズンからの注目度は一気に高まった。

ミネルバによる数々の予言が書き込まれた「アゴラ」

経済の動き以外にも、現大統領が行なう不動産や株式などの政策に関し、鋭い批判や分析も投稿した。そして夏の終わり頃から始まった為替レート暴落に関する予見も当たったことで、インターネット上での彼の発言力は確固たるものとなった。ミネルバはいつしか「インターネット経済大統領」とのニックネームまでつけられていた。

彼の書き込みの中には、もちろん誤っている部分もある。しかしそのような誤りも霞むほど、彼の予見力や分析力には並々ならぬものがあり、それによってミネルバに熱狂するネティズンも少なくなかった。

インターネットでの反応の大きさに反比例し、警戒を強めていたのが政府側だ。2008年11月、国会でミネルバの調査実施について意見が出ると、これを負担に感じたのか、ミネルバは同月末、絶筆宣言を行なっている。しかし、しばらくして再度書き込みを開始。とくに「政府が一時的に、ドル買い入れの禁止命令を下した」という内容の文章に関しては、政府自らが「虚偽事実をインターネットで流布することに対し、深い憂慮を禁じ得ない」と表明。この文章はブラインド処理がされることとなった。

絶筆宣言の後も、少しずつ書き込みを続けていたミネルバだったが、「最後に頼れるのは結局、希望です」という2009年1月5日の書き込みが最後のものとなった。ミネルバによるアゴラへの書き込みは、今では削除されて見ることはできない。