今年10月上旬、阿里巴巴集団(アリババグループ、以下「アリババ」)傘下のCtoCネットショッピングサイトである淘宝網の総裁陸兆禧氏が、「今後5年以内に、アリババは淘宝網に50億元(約721億円)を投入し、これまで通り利用者に対する無料サービスを継続していく」と発表した。

この投資は、淘宝網とアリババ傘下の広告サイトである阿里媽媽(アリママ)の合併が2008年9月に発表されてから初めての大規模投資案件だった。アリババが仕掛けた淘宝網とアリママの合併劇は、そもそも何のためだったのだろうか、アリババは何をねらい、傘下の淘宝網に50億元もの投資を行なうのだろうか。本レポートではその目的や背景を探りながら、中国のCtoC市場に与える影響を考えてみたい。

アリババ社員に向け、会長の馬氏がメッセージ

2008年9月4日、アリババ董事局主席(会長)で、中国IT業界において最も名高い風雲児の一人である馬雲(ジャック・マー)氏が、アリババの役員と社員宛てにeメールを送った。その冒頭には、「アリババは本日をもって大淘宝戦略をスタートする。第一弾として、淘宝網とアリママを本日から合併させ、世界最大のeコマース生態系を構築していく」とあった。

馬氏は、これに続けて、以下のように述べた。

「5年前に設立した淘宝網は、アリババの役員・社員の努力によって、すでに一日当たりの平均取引額が3億元(約42億6千万円)に達し、8千万のアクティブユーザーをかかえる巨大サイトに成長した。すでにアジア最大のネットショッピングサイトである。一方アリママは、設立後これまでの1年間だけで、グループ内で最も成長スピードの速い会社となった。アリママは優れたネットワーク技術と、サービスチームを保有しており、これを基盤に、中小企業40万社のサイトをカバーする広告プラットフォームとなり、毎日平均30億ものアクセスを記録している」

以上のように、馬氏は、淘宝網とアリママ双方の業績を高く評価しつつ、アリババグループ傘下の最強の会社同士の合併であることを、内外に強く印象づけようとしている。

さらに馬氏は、以下のように続けた。

「これまで同様、今後も、淘宝網でCtoC店舗を開く個人ユーザーと、eコマースで市場を開拓する無数の中小企業を全力でサポートしながら、就業機会創出を図っていく」

これにより、淘宝網とアリママを合併させた「大淘宝網」の経営方針を明らかにした上で、「淘宝網とアリママの合併は、中国のみならず、世界におけるeコマースの発展にも新しい活力をもたらすはず」と述べた。

最後には、馬氏流の言葉で、「If not,when? If not me, Who?!!! GO! 阿里人(そうじゃなけりゃいつやるんだ? 誰がやるんだ?!!! 進め! 阿里人)」と、役員・社員に檄を飛ばしたのだった。