メール配信ASPサービスを提供するエイケア・システムズは19日、2008年12月1日に施行される改正迷惑メール防止法への対策セミナー「健全なメールマーケティングのためのノウハウセミナー」を実施した。"受信者の同意なくして広告・宣伝メールを送信してはいけない"とするこの法律。メールを使った事業に関わる事業者は今後、規制対象者が拡大された点に注意する必要があるほか、「メール送信の事前同意」「適切な方法による同意確認」「同意記録の保存」などにも配慮しなければならない。具体的にどのように対応すればよいのだろうか。

当初予定の50人を大幅に上回る約140人が受講

迷惑メール防止法の正式名称は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」。2008年12月1日に施行される改正法では、増え続ける悪質な広告・宣伝(スパム)メールに対抗するため、「オプトイン方式」を採用した。「送信してOK」という同意が得られないユーザーに対して、広告・宣伝メールを送信することを禁止する法律だ。

これまでは「※未承諾広告」とメールに記載しておけば広告・宣伝メールを送信できた。しかし、2008年12月以降は、送信先の同意を得ていない広告・宣伝メールの送信は原則として不可能になる。当然、違反者には罰則規定が当てはめられる。

また、改正法では規制対象が拡大されている点がポイント。従来は、広告・宣伝メールの配信作業を行う事業者のみが対象だったが、新たに"送信委託者"も規制対象となる。送信委託者とは、ガイドラインによると「電子メールの送信に関し送信先や送信事項について一定の指示をしている者」。実際に広告・宣伝メールを作っている者、送信条件などを指定している出稿者などが対象と考えられ、メールマーケティングを行っているほぼ全ての企業が対象と考えてよいだろう。

エイケア・システムズは、改正法の対象となる企業のニーズに応え、第1回対策セミナーを2007年11月に実施。今回は今年7月の第2回に続き、3回目の実施となる。会場には、当初予定だった定員50人を大幅に上回る約140人が詰め掛けた。

改正迷惑メール防止法に伴う総務省令について説明

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部消費者行政課 主査の神谷征彦氏

セミナーでは初めに、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部消費者行政課 主査の神谷征彦氏が「特定電子メール法の改正について」と題して講演。改正迷惑メール防止法の内容について触れた後、同法を運用するための総務省令(省令)について説明した。

同法では、オプトイン規制の例外として、

  1. 自らの電子メールアドレスを通知した者
  2. 取引関係にある者
  3. 自らの電子メールアドレスを公表した団体または個人

に対する広告・宣伝メールの送信を認めている。神谷氏は上記の3点について省令では次のように運用するように定めていると説明。

(1)の「自らの電子メールアドレスを通知した者」とは、省令によると"書面"によってメールアドレスを通知した者を指す。例えば、名刺も書面であり、ビジネスシーンで名刺交換した相手には、事前同意を得ずに広告・宣伝メールを送信してもかまわない。なお、神谷氏は「必ずしも、書面によって得られたメールアドレスを使わなければならないわけではない」とも説明。

これは、書面によらない場合、つまり"Webサイト"上でメールアドレスを公開しているケースなどを指す。公開アドレスに事前同意の確認メールを送信する場合、フリーメールや契約上のやりとりに関するメール文面に広告を挿し込んだメールを送信する場合は、Webサイト上の公開アドレスなどを使っても良く、事実上同意が必要ないケースも存在する。

改正迷惑メール防止法に定める「オプトイン規制の例外」に伴う省令

また、(3)の「自らの電子メールアドレスを公表した団体または個人」にある"個人"とは、事業者など営業を営む者を指す。つまり、会社や個人事業主がWebサイト上でメールアドレスを公開している場合は、広告・宣伝メールを送信することが認められる。ただし、その場合であっても、広告・宣伝メールを拒否する旨の文言が添えられていたら、事前同意なしで送信することはできない。

なお、(2)の「取引関係にある者」についてガイドラインでは、"継続的な"取引関係にあるケースを想定している。たとえば、金融機関に口座を持つ消費者が、継続的に金融商品を購入しているケースなどが該当すると考えられる。

同意記録の保存は原則「最終送信から1カ月」に

また、改正迷惑メール防止法では、受信者がメール送信に同意したことの記録が義務付けられている。神谷氏は記録方法や保存期間に関する省令について説明。

省令によると記録するものは

  1. 「この人からはいつ同意を取得したか」など個別メールアドレスごとに同意取得の時期や方法などを示す記録
  2. Webサイトやアンケートなどで同意を取得した場合は、同意者のリストに加え、Webサイトの画面構成やアンケートのフォームなどを示す記録

のいずれかが必要と定めている。

同意記録の保存期間について省令では、「当該記録に係る特定電子メールの送信をしないこととなった日から1カ月」と規定している

また、保存期間について省令では、「メールの送信をしないこととなった日から1カ月」と規定。ただし、同法違反による「措置命令」を受けた事業者が、措置命令から1年以内にメールを送信する場合は、保存期間は、メールの送信停止から1年間となる。

気になるのは、これまでメールマガジンなどを配信していた業者だろう。改正法の施行前でも、「メールマガジンの送信同意」「同アドレスを使った広告メール配信の承諾」などを確認しているケースは多いと思われるが、そうしたケースについて神谷氏は、施行後にあらためて同意を取り直す必要はないとしている。ただし、「できるだけ同意を取り直すほうが望ましい」とも述べている。また、同様の場合の同意記録の保存においても、「可能な限り残しておいたほうがいい」(神谷氏)としている。