ユーザーが専用クライアントのインストールを行う必要がなく、Webブラウザ上で実行できるカジュアルゲーム「ウェブゲーム(WebGame)」が、このところ中国で大変なブームとなっている。中国IT業界の調査機関「艾瑞諮詢(iResearch)」が今年6月に公表した「中国におけるウェブゲーム産業の発展に関する報告書2007-2008年」による、中国におけるウェブゲームの市場規模(売上ベース)は2007年にすでに1億元(約16億円)に達し、2008年には5億元(約80億円)になる見通しだ。

ウェブゲームは、2008年以降も20%という高い年間成長率で拡大し、その市場規模は、2010年には12億6,000万元(約201億6,000万円)規模に成長すると見込まれている。さらにウェブゲームのプレイヤー人口についてiResearchは、「2007年の250万人から2008年には900万人となり前年比260%増、その以降も毎年500万人の増加が見込まれ、2010年には2,020万人に達する」と予測している。

ウェブゲームは中国においてなぜ急成長を遂げているのだろうか。本レポートではその背景と実態を解明してみたい。

プログラマーが作った簡単なゲームが起源

ウェブゲームの原型は1990年代にさかのぼる。プログラマー達が仕事の終わりに、遊び心からHTMLを使って制作した簡単なゲームが、ウェブゲームの始まりだったと言われている。ただ、インタフェースとインタラクティブ・ツールが初期段階にあったこと、さらにプレイヤーとゲームとのインタラクティブ性が未熟であったため、当初はウェブゲームも不発に終わったかに見えた。

ところが、プレイヤーとウェブゲームとのインタラクティブ性を劇的に向上させようと地味な努力を払ったプログラマー達がいた。そうした努力が積み重ねられた結果、最初に大きな成果を収めたのは、台湾のXPEC Entertainmentの北京現地法人である楽昇北京科技(楽昇)だった。

2003年春、同社が開発したウェブゲーム「異界(EX-Chaser)」は、ヨーロッパ、米国、日本で同時発売された。

楽昇は、日本市場においては2004年3月に、「創世之光(エレメンタリア)」を、同年7月には「爆炎覚醒(Neverland Saga Zero)」をリリースし、たちまち高い人気を博した。だが、その頃、中国のプレイヤーは上陸したばかりの多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)に魅了されており、「エレメンタリア」などウェブゲームにはあまり興味を示さなかった。

2007年初夏、海外で好評を博し、中国のプレイヤーにのみ公開されていなかった「創世之光」が中国でもリリースされた。同じ時期、「猫遊記(pet mop)」が猫撲(Mop)から発表された。これらニつのウェブゲームは、中国でも短期間のうちにブームを起こし、その後のウェブゲームブームの起爆剤になった。