日本ヒューレット・パッカード(日本HP)など国内企業5社の共催で10月10日に行われた、女性社員を対象とした異業種交流イベント「Women's Summit Tokyo 2008」。女性社員の"キャリアの歩き方"をテーマにした今年のイベントの各セッションで謳われたのは、女性のキャリア形成における手本となる"ロールモデル"の必要性。今回のイベントでは、各社のビジネスリーダーや有識者が参加しよる「キャリアの歩き方」と題したパネルディスカッションが行われ、女性社員の今後のキャリア形成につながるヒントやアドバイスが語られた。

「Women's Summit Tokyo 2008」で行われたパネルディスカッション。女性キャリアのあり方について、熱のこもったトークが行われた

日産自動車 人事部採用グループ 主管 鳥羽真澄氏

パネルディスカッションにおいて、各パネリストが強調したのは、キャリア形成の過程における"専門性"の重要性だ。日産自動車人事部採用グループで主管を務める鳥羽真澄氏は「女性の働き方には、いろいな選択肢があると思うし、今後ますます女性の活躍の場は広がっていくと思う。しかし、そのなかで自身の強みや目指すべき方向をその都度考えていくことが必要。そしてその際は自分の強みを軸にするといい。肩に力を入れすぎすに、時には違った見方する心がけを」と助言。

一橋大学大学院商学研究科教授の守島基博氏は「仕事においてとにかく他人より絶対的に優れている分野をひとつでも持つこと。そこをコアとして自分が成長していけるし、他人はそこを頼りにすることになる。自分の強みとなる分野があるというのは、さまざまな意味でよい効果をもたらす」と続ける。さらにモデレーターを務めた、あおぞら銀行常務執行役員人事部長のアキレス美知子氏は、プロフェッショナルになるための条件として、「第一にその分野で5本の指に入るくらい自分の専門性を強くすること。第二にそれを市場価値のある専門性に作り変えていくこと。第三に人脈ネットワークをつくって自分が学べる機会をもつこと」とポイントを語った。

一橋大学 教授 守島基博氏

あおぞら銀行 常務執行役員 人事部長 アキレス美知子氏

一方、キャリア形成段階におけるアドバイザー的存在の重要性を訴えたのは、住友スリーエム統括部長の中平優子氏だ。中平氏は1988年に住友フリーエムに入社後、製品開発・製造部門を担当し、1996年に退社。その後、米国のコーネル大学でMBAを取得後、外資系コンサルティング会社に入社。2008年に再び住友スリーエムに入社し、現職に至っている。「スリーエム時代は怒られた経験がなかった。しかし、コンサルティング会社では毎日怒られたが、それが逆に自信をつけ、実力を養うきっかけになった」と中平氏は振り返る。

しかしそれとは反対に「女性は叱り方が難しい」と男性管理職の立場で本音を漏らしたのは日立製作所 関西支社 公共情報システム営業部長の吉田俊之氏だ。「男性はきつく言って、夜は飲みに連れて行くというパターンでいいが、女性の場合はそういうわけにはいかない。結局、叱るというよりも、自分の思っていることを伝えることが重要だと理解している」(吉田氏)。これに対して、モデレーターのアキレス氏も「女性は怒られている数が圧倒的に少ない。それは甘やかされている証拠かもしれないが、女性の側もそれに気づいていないことが多い。フィードバックをその都度もらっていれば、そこで気づいていたことがあったかも」と、職場における女性社員に対する扱いがその後のキャリア形成におけるデメリットなる可能性を指摘した。

日立製作所 関西支社 公共情報システム 営業部長 吉田俊之氏

住友スリーエム 統括部長 中平優子氏

そんななかで、一橋大学の守島氏が提案したのは、キャリアの"見せ方"の必要性。「組織は相手に動いてもらわなければ成り立たない。そのときに自分が何を伝えたいかを発信するのがコミュニケーションだが、その過程において自分がどのように見られているかというのは案外わかっていないもの」と守島氏。これに対して、パネリストからは「ルノーとの提携の際にも、相手に自分たちがどう見られているかを考えるのが重要だった」(日産・鳥羽氏)、「困っていることも見せることも必要」(日立製作所・吉田氏)、「助けてもらうきっかけをどうつくっていくか」(あおぞら銀行・アキレス氏)といった、相手に対する意思表示の重要性を説く意見が相次いだ。