アビーム コンサルティング プロセス & テクノロジー事業部プリンシパル 永井孝一郎氏

「内部統制システムの整備・構築には1、2年はかかる。そのことを前提に計画的に進めていくことが重要だ」-- アビーム コンサルティングでプロセス & テクノロジー事業部プリンシパルを務め、After J-SOX研究会運営委員としても活動する永井孝一郎氏は、本番運用初年度が過半を過ぎたJ-SOXに取り組む姿勢について、そうアドバイスする。

アビームが9月2日に公表した調査レポート「内部統制の現在・過去・未来 ~ J-SOX対応状況調査」では、調査を行った今年3 - 5月の時点で、7割を超える企業が内部統制システムの整備・構築段階にあり、評価の実施手順やリソース、スキル不足を課題としてあげた企業が半数近くに上るという結果となった。

特に、回答企業302社を「規模」と「複雑性」によって3つのグループに分けた場合、「規模が小さいグループ」(連結売上高1,000億円未満)に分類された156社については、全社的統制、決算・財務報告プロセス統制、業務プロセス統制のいずれに関しても、「全般的に整備・構築が遅れている」との実態が明らかになっている。

アビーム コンサルティングによる「内部統制の現在・過去・未来~J-SOX対応状況調査」より。左は全社的統制に関する規程・マニュアル類の現在の状況、右は業務プロセス統制に関するリスクコントロールの洗い出し状況

調査から半年余りを過ぎた現在、企業ごとに取り組みはより進展していることが予想されるものの、多くの企業では、いまだ手探りの状態で、整備/構築、評価作業を続けているのが実情だろう。実際、永井氏は、企業側の苦労や混乱ぶりを次のように代弁する。

「外部監査人に言われるまま、あるいは、せっかく整備したのだからと、評価対象外にしていい部分まで評価対象にしているケースが少なくない。整備したところをすべて評価しようとするので、いつまでたっても不備がなくならない。そうしたケースは3割以上に及ぶ」

では、そうした"進捗の遅れ"に直面している企業は、残された期間で、何をどう行っていくべきなのか。永井氏は、「遅れているからといって、法対応を目的とした対症療法的な小手先の手立てを講じるべきではない」と断言するとともに、2年目以降の取り組みを視野にいれながら、内部統制システムの整備/構築に取り組んでいくべきだと訴える。