ゲームの世界で販売された商品やサービスを現実の貨幣で決済する「Real Money Trade (RMT)」が、中国において急速に浸透してきている。オンラインゲーム、とくに多人数同時参加型のMMORPGをプレイしたことのある人であれば、ゲームサイトなどで、オンラインゲームキャラクターの育成代行を行う「網遊代練」をはじめ、「装備・道具」「ポイントカード」などを売買する広告やメッセージを目にしたことがない人はいないほどだ。

また、オンラインゲームと全く無縁の人でも、ネットショッピングの経験があれば、淘宝網など代表的なサイトにおいて、「網遊(オンラインゲーム)」関連商品や「虚擬商品(バーチャル商品)」が常に取引されていることを知っている。

現実世界とバーチャルな世界という二つの世界にまたがっているRMTと、それが商業化されていることの合法性、道徳的な問題の有無などをめぐり、今まさに中国で熱い議論が繰り広げられている。本レポートでは、中国におけるRMTの実態解明を試みたい。

忙しい会社員の代わりに無職の若者らが代行

ゲームキャラクターの育成代行を行う「網遊代練」と、その略語である「代練」という新しい言葉は、オンラインゲームとほぼ同じ時期に中国で登場した。だが、メディアなどによって大きく取り扱われ始めたのは2004年後半のことだった。

同年、数本の外国製MMORPGが中国市場に上陸。中国のオンラインゲーマーはたちまちこの虜になった。だがゲーマー、特に仕事の忙しい、若いホワイトカラーのゲーマーは、まもなく自分がゲームの世界と現実世界に板ばさみになったことに気づく。

ゲームの世界では、仮に道具を買う金があったとしても、敵のキャラクターを倒し、経験値とレベルを高め、キャラクターのステータスやスキルなどを上昇させていくには、かなりの時間がかかる。

一方、現実世界の仕事や、付合いなどにも時間を費やさねばならない。分身術があるはずもない彼らは、自分の代わりに、キャラクターを育成してくれる人を探すようになった。

こうして「代練」の最初の需要家が現れるようになった。時間がたっぷりある無職の若者や学生たちにとって、忙しい人に代わり、キャラクターのレベルアップをすることは、趣味と実益を兼ねた二重の楽しみ。好きなゲームをプレイしながら、お金をもらうわけだからだ。代練の最初の供給者がこの時誕生した。

求める者と供給する者がそろった以上、代練が取引されるに至ったのは自然の成り行きだった。最初の取引はクライアントと代練との間で一対一の形で行われた。クライアントと代練はすなわち目標ステータスやレベルなどを踏まえ、話し合いの上で価格や納期などを決めた。

普通、こうした商談は、騰迅が提供する中国最大のメッセンジャーサービスである「QQ」やメール、携帯電話などで行われることが多い。代練を請け負う者はサービスを提供し、問題がなければ、クライアントから代金を受け取る。受け取る際は現実世界の貨幣であることが圧倒的に多いが、QQでのバーチャル貨幣である「QQ幣」やゲーム内通貨で決済されることもある。中国におけるRMTの先駆けともいえる代練は、このようにして生まれてきたのである。