I3E 2008では地方行政情報通信技術プラットフォームの発表に注目

9月24日から26日まで、東京都千代田区一ツ橋の学術総合センターで開催される情報処理国際連合(IFIP: International Federation of Information Processing)主宰の国際会議「I3E 2008 - IFIP Conference on e-Business, e-Services, and e-Society」では、前述した研究開発の発表が行われる予定になっている。

I3E 2008大会長を務める東京電機大学 未来科学部 情報メディア学科 情報セキュリティ研究室 佐々木良一教授

情報処理国際連合(IFIP)は、1960年に国連ユネスコの提案で設立された情報処理関連技術学会の国際連合。日本からは代表学会として情報処理学会が参加している。現在世界55カ国から組織が参加しており、2001年からは各国の持ち回りで同国際会議を開催している。2001年はスイスのチューリッヒで開催され、8回目となる今年は日本での開催となった。大会長は東京電機大学 未来科学部 佐々木良一教授、実行委員会委員長を日立製作所 システム開発研究所 主管研究長 舩橋誠壽氏が、それぞれ務める。

I3E 2008では77編の論文応募から29編が採用されている。うち海外からの論文は16編、国内からの論文は13編だ。総勢70名ほどで選考された論文で、そのなかに前述した研究開発の実践論文が含められている。研究開発した成果物が実際に有益なものであるかどうかは国際会議での議論などを通じて広く検討する必要がある。今回、同研究開発が発表される背景には、発表を通じて反応を得て成果物を評価したり技術の共有をはかる狙いがある。

I3E 2008で扱われる論文は電子商取引から電子サービス、インターネットソサイエティ、トラスト&セキュリティなどだ。基盤技術開発や研究というよりは、基盤の技術をいかにして応用したり実践するかといった応用への注力が高い。最先端の技術を現場に取り入れるには、現場レベルの担当者がこうした国際会議に参加し直接経験を積む方法が確実だ。英語という壁があるが、関係者はぜひとも参加を検討されたい。

国際会議後には地方行政関係者向けのワークショップあり - APPLIC

実行委員会委員長の日立製作所 舩橋誠壽氏。I3E2008では「Trust & Securityが注目されるキーワードのひとつ」という

とはいっても、なかなか現場レベルの担当者が国際会議に参加するのは難しい。大会長を務める佐々木教授も、舩橋氏も「本当は自治体などの利用者に参加してもらいたいのだが、正直なところなかなか難しい。国際会議に参加するための予算もないし、英語ができないという問題もある」と実状を説明している。

こうした点を考慮し、26日の国際会議終了後、I3Eに引き続く形で、とくに大規模から中規模の地方行政で情報システムを担当している実務者レベルを対象として「APPLICワークショップ2008」が開催される予定になっている。英語が苦手な場合でも大丈夫だ。こちらは通訳ありで基調講演が実施されるほか、日本語による講演も組まれている。参加者数に180名という制限はあるが、参加費用は無料。

ワークショックを開催するAPPLIC(全国地域情報化推進協会)は、前述したような地方行政における情報通新技術の問題点(情報通新技術を活用したサービスのさらなる拡充、組織内システム間の連携、他地方行政や企業とのサービス連携、開発や管理コストの低減)を解決するための取り組みを進めるための財団法人。こうした取り組みを通じて地方行政における情報化を推進させる狙いがある。

情報通信技術に強くなる地方自治体へ

かつて地方自治体における情報通信技術の活用やセキュリティへの注力は遅れているといわれていたが、現状では力のある担当者が育ってきており、地方自治体における情報強者の割合も増えていると佐々木教授は説明する。結局のところ、現場レベルで能力を向上させたり、ほかの地方行政の実践ノウハウや技術などを共有していくことが、質の高い行政サービスへつながる。関係者は積極的にこうした会議やワークショップに参加していきたい。

I3Eのような国際会議はほかにいくつもある。I3Eの特徴は参加している日米欧やアジア・アフリカのうちとくに欧州からの参加が強いということと、人文系が多いという点にある。科学技術重視の国際会議というよりは、実践応用や社会学的な側面が強いため、理工系が苦手な場合にも参加しやすい方といえるだろう。

基調講演も日本からはユビキタス、米国はビジネス、欧州からはネットワークソーシャルに関する内容をそろえるなど特徴のある内容となっている。今からでは難しいかもしれないが、関係者は参加を検討してみてほしい。いくつかの発表については、追って本誌でも取り上げる予定だ。

Attention!

今回の国際会議に間に合わない場合も、11月11日、12日に東京都千代田区九段北 ベルサール九段においてプライバシーおよびセキュリティに関する国際会議「第1回 プライバシー・セキュリティ国際会議」が開催されるので検討してみるといいだろう。こちらは同時通訳が用意されているので、英語が苦手な場合にも参加しやすい会議だ。