待望の6Gb/sのSerial Attached SCSI(SAS)が登場したことにより、SASアーキテクチャとその技術は、既存のエンタープライズ環境でも、あるいは既存の枠に当てはまらない新しいエンタープライズ環境でも存在感を増している。

このレポートでは、SAS技術のルーツを探り、SASアーキテクチャがエンタープライズ市場に適している理由、そして、SAS技術がITデータセンターにおける役割拡大を通して更に進化していく過程を論じる。

そして、SASの機能の成長とエンタープライズ環境へのSASの普及を検討した後、SASの新たな進化の機会を展望し、SASアーキテクチャがエンタープライズの増大し続けるニーズに適応して進化していく過程をSCSI Trade Association (STA)のPresidentならびにLSIのIndustry Marketing Directorの立場から考察するの立場から考察する。

パラレルSCSIのつまずき

1990年代後半、標準的な高容量サーバ市場は重大なジレンマを抱えていた。主要なストレージ・インタフェースであるSCSIが、その投資保護のレベルの高さから広く使われていたものの、市場の拡大する要求に付いていけなくなっていたためである。内蔵型インタフェースやダイレクト・アタッチト・ストレージ(DAS)用の主要なドライブ・インタフェースとして、ウルトラ320 SCSIは業界から広い支持を獲得、ソフトウェアのソリューションも実証され、最大20年間をカバーする前方・後方互換性による豊富な資産にも支えられて、最も一般的なサーバ・ストレージ・インタフェースへと成長してきた。

しかし、伝送速度が高まり、(ケーブル長の短さ、電磁干渉(EMI)、信号整合性などの)全般的な接続性が次々に課題になると、最新世代のサーバ開発コストを押し上げ、しばしば市場投入を遅延させるという不健全な傾向を呼び、事業への負担が大き過ぎることが明らかになった。

「実験実証済み」で多年利用可能なSCSIインタフェースは、ほぼオンデマンドで拡張することを要求され、次世代のプロセッサやシステムの投入に対応できるタイム・トゥ・マーケットの短縮を迫られ、複数のクラスに階層化されたストレージの実現を要求される新世代のサーバやストレージシステムには、適さないことが徐々にわかってきた。

高信頼性と高可用性を持つ堅牢なエンタープライズ級のストレージは、データへのアクセス頻度が低いにもかかわらずオンライン・アクセス可能でなければならない低コストの大量ストレージ製品の普及推進と、共存共栄しなければならなかった。この後者のストレージ製品群は「ニアライン」ストレージと呼ばれることが多く、ストレージ市場でも最も成長している分野の一つとなっている。

しかし、パラレルSCSIを凌ぐ代替技術が何なのかは、当時、まだ明らかではなかった。SATAが市場で勢いを増しており、業界アナリストの一部は、SATAが今後必要とされる唯一のインタフェースになるであろうと予測していた。しかし、SATAインタフェースは、特にエンタープライズ・ストレージに関する部分で多くの課題を抱えており、専門家は、SCSI対応の高機能、高性能、高信頼性のソリューションが迅速に出現し複数のサプライヤから広く支持されるようになるとは確信していなかった。

ファイバ・チャネルも支持者層が厚く、すでに実装されているSCSIソフトウェアを活用してパラレルSCSIが解決できなかった距離と接続性の課題を解決できることから、エンタープライズ市場にその地位を築いていました。ファイバ・チャネルは主にエンタープライズ市場の外部ストレージ部門でその強さを発揮していた。

このような外部ストレージ環境はエンタープライズにおける有意義な価値を持つに至り、一方、SANアタッチト・ストレージはストレージ関連投資額の点では成長著しいものがあったが、その影響はエンタープライズ・ディスクドライブ全容量の25~30%にとどまっていた。エンタープライズ・ドライブ容量部門の大部分はサーバ市場の高容量DAS部門で占められていた。そして、ファイバ・チャネルを高容量サーバスペースにスケールダウンする試みが行われたが、これもサーバおよびストレージのOEM各社が望む技術・価格水準を満たすことができなかった。