リコーは、同社の新規事業としてコンシューマ向けWebサービス『quanp』の提供を開始した。オンラインストレージの機能を持つこのサービスは、Webブラウザではなくローカルにクライアントソフトをインストールして利用する形となっている。3D空間でサムネイルを俯瞰するインタフェースは、電脳につながった外部記憶装置ってこんな感じだろうか、と思わせる。

「必要」よりも「楽しそう」が入口になるサービス

quanpでデータをオンラインストレージに保存するは、専用のクライアントソフト「quanp.on」を使用する。Webブラウザ上で処理することの多い同種のWebサービスとしてはちょっと珍しい形で提供されている。利用できるストレージ容量はコースによって異なり、無料で利用できる「Trial」が1GB、月額300円の「Standard」が10GB、月額980円の「Quantum」が100GB。コンシューマ向けとしてオンラインストレージサービスとしてはかなりの大容量で、アップロードできるファイルサイズの上限設定がないことも特徴。この料金ならかなりお得感があると言ってよいだろう。

利用にはまずquanpのポータルサイトからquanp.onをダウンロード、インストールする。WPF(Windows Presentation Foundation)アプリケーションのため、Windows XPで使用する場合はMicrosoft .NET Framework 3.0が必要。導入されていない環境ではこちらが先にインストールされる。

quanpのサイトから「quanp.on」をダウンロード

quanpのサイトでは映像作家の原田大三郎氏が制作した同サービスのイメージムービーを視聴できる

起動すると最初に表示されるのはログイン画面。ポータルサイトでユーザー登録をしてからログインする。ログインすると、データ保存場所の一覧となるマス目状の「プレイスマップ」が表示される。各マスが「プレイス」で、その中にファイルを保存していく。プレイスは上下左右の自由な場所に新しく開設することができるようになっている。

プレイスの開設には、空いているマスをダブルクリック。アイコンは自由に設定できる

開設できるプレイスの数には上限があるが、現実的に利用可能な数は画面と相談しよう

プレイスを開くと、そこに保存されているファイルが表示される。デフォルトでは、ファイルが時系列で立って並んでいるような「3Dビュー」となっている。視点のアングルやズームがスライダで調整できるという凝った作りで、便利な機能というわけではないがちょっと楽しい。また、タイムラインのスライダかマウスのスクロール操作により、時系列に並ぶファイルを遡っていくことができる。特定のファイルを探したい場合は、タグやコメント、保存日付や保存場所などを指定して検索できるようになっている。ドキュメント系のファイルはその内容も検索対象になる。

3Dビューを超拡大で表示。それ以外にもノーマルな平面的「サムネイルビュー」と「詳細ビュー」が用意されている

プレイス内をファイル日時でソートすると、スクロールしたときに写真の撮影日が表示された。記憶をたどっていくような感覚だ

このサムネイル表示は画像だけでなく、TEXT/PDF/MS Office文書など各種ファイル形式に対応しており、うろ覚えのドキュメントを見た目で探すのにも便利だ。また、ファイルをひとつずつ表示する「ファイルビュー」でも拡大表示が可能で、小さな文字で書かれた書類も問題なく読める。たとえば、Microsoft PowerPointを導入していない環境でPPTファイルを確認したい場合に、ビューアとしてquanpを使うのも1つの手段かもしれない。また、表示したファイルを直接印刷できるほか、オフライン表示にも対応している。このあたりの機能や使い勝手はローカルソフトのようで、オンラインとの距離感を感じない。

ファイルはサーバ側でレンダリングされ、画像の形でクライアント側に表示される。ズームイン/アウトが可能なので、一部を拡大表示するといったことが簡単にできる

未対応の形式はアイコンのみ表示。要望の多かった動画を始め、対応形式の追加を検討中とのこと

.NETのソフトは重いらしいというウワサを聞いて多少の不安はあったのだが、quanpが重いという感じはまったくない。モバイルノート(Pentium M 1.2GHz/760MB)でも、起動に多少の時間はかかるが、それなりにストレス無く使える。ただし、プレイスの数や保存されているファイルが多くなると読み込みに時間がかかる点が気になった。100枚くらいの画像があるプレイスで5秒前後というところだろうか。とはいえ、キャッシュが働くので2度目以降の表示は速いのが救いだ。