【レポート】
「Interop Tokyo 2008」で11日に行われた基調講演では、慶應義塾大学環境情報学部で教授を務める村井純氏が登壇し、「地球とインターネット ~人と社会と科学技術のイノベーション~」と題する講演を行った。講演は、携帯電話とテレビという近年大きく進化した情報機器の話題にはじまり、首都圏にはりめぐらされた光ファイバーをインフラ基盤として利用する可能性、映像配信メディアとコンテンツを巡る近年の動向、さらには、地球規模でインターネット利用の展望にまで及んだ。
村井氏はまず、多機能化が進んだ携帯電話について触れ、デジタルカメラ、時計、GPSなど、デバイス自体が「時空間」を示すものになったと指摘。そのうえで、ワンセグ、NFC(RFID、ICカード)、Wi-Fi(BlueTooth)といった通信機能まで備えたことによって、人と人とのコミュニケーション・モデルまで変化したとする。例えば、おサイフケータイの機能を利用して、端末同士をくっつけて情報をやりとりすることは、「近い距離で人に触るという行為であり、とても人間的」と述べた。
一方、家庭における情報機器の主人公はテレビになっていると指摘。特に昨年末くらいから登場しているテレビは、高精細なディスプレイと高品質の音響を備え、インターネット接続のほか、ドアフォンや電子レンジとも接続できる。PLCを利用すれば回線も不要となる。PCやホームサーバといったこれまでの候補の存在は薄れ、家庭のなかで、医療・介護、セキュリティ、家事、教育などに活用されるのではないかとした。
次いで、村井氏は、「ところで、東京の地面には、光ファイバーの絨毯があると考えられる」と話題を変え、身の回りの情報機器をつなぐインフラ基盤としての光ファイバー網に触れた。そして、「張り巡らされた光のパスをつなぎあわせていくと仮定すると、とても効率のいいデータセンターやIXが構築できないか。これは、日本とヨーロッパが熱心に研究を進めているものだ。つまり、どこにアクセスしても耐えられるようなネットワーク基盤をつくれないかということだ」と、今後のネットワーク基盤の展望を紹介した。実際、開催会場の幕張にもこの考え方に沿って、一部のネットワークを移したのだという。
また、そうした基盤のうえで流れるトラフィックについても、日本は、家庭のブロードバンドのトラフィックを測定・研究をしている唯一の国としたうえで、2005~2007年までのインターネット・トラフィックのグラフを実際に示してみせた。
グラフからは、夜に増え、昼に下がっていることが分かる。村井氏は、「まるで人間の息吹のような波形。一見、当たり前のことと思われるかもしれないが、これはある常識を覆した。つまり、"国内のトラフィック量の大半はP2Pソフト"という常識を覆すものだった」と語った。さらに、村井氏は、他国に先んじてこうした研究を行っていることを評価しながら、もう1つの事実として、2年間のピークの変化を比較すると、見ている時間が深夜からゴールデンタイムにずれていることを示し、「家庭で利用されるアプリケーションが変わってきたことを示すものと分析できる」とした。
そのうえで、同氏は、コンテンツとなるビデオ配信について言及し、IPTVとデジタル・サイネージの動向を解説した。IPTVについては、「アクトビラ」と「ひかりTV」という2つのサービスを実際にデモしながら、オープンなインターネットか、NGNのようなクローズドなインターネットかによって、今後、ザッピング、認証、ネットワーク速度の進化などといった点で違いがでてくると指摘した。
最後に、同氏は、地球規模でのインターネット利用と日本の役割について展望を述べた。まず、世界中のインターネットのトラフィックを図示し、太平洋と大西洋が中心になっていることを指摘。さらに北極を中心に見た図を掲げ、「米国とヨーロッパ、ヨーロッパとアジアはネットワークでつながっているが、その間をつなぐところがない。日本とロシア、シンガポール、インド、中東、アフリカ、ヨーロッパをつなぐことが重要」とした。
そのうえで、氏は、インターネットをつなぐための担い手として、「洗練された端末や技術をもち、研究開発に熱心に取り組んでいる先進国の私たちには責任がある」ことを強調した。その際には、政府や民間企業の努力に任せるばかりでなく、インターネットが発展したのと同じように、個人がいろいろな地域で活動していけばよいことも指摘した。
その例として、同氏は、中華鍋とWi-Fi機器で4km範囲のワイヤレス環境を個人で作り上げていくというシンガポールのプロジェクトも紹介しながら、「地球全体のインターネットを考える時期にきている。地球全体のための新しい空間として、どのような情報社会をつくっていくのか、自由な発想でそれぞれの役割を果たしていくことができる」と述べた。
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