米ラスベガスで開催中の「2008 International CES」の三洋電機のブースでは、HD映像の録画に対応したXactiやプロジェクタの新製品に加え、カーエレクトロニクスでも新製品を出展。その中でも現在開発中というサラウンドビューモニタとワイヤレスデジタルオーディオシステムが興味を引いた。

三洋電機のブース

サラウンドビューモニタは、自動車に搭載したカメラに写った画像を処理して、車の真上から見下ろすような形で周囲全体を表示するシステム。すでに日産自動車が「アラウンドビューモニター」として搭載車を販売しているが、同様に三洋も開発を進めている。

今回展示されていたのは、車のフロントとリア、さらにドアミラーの下に取り付けられた4つのカメラで撮影した画像を合成してカーナビゲーションシステムなどの画面に表示するというもので、名称は「AirCam」。前後のカメラは既存のものを使っているが、ドアミラー下のカメラは広角カメラを新規開発しており、現在はまだ大きめのサイズになっているため、今後さらに開発を進めてドアミラーに埋め込めることを目指しているそうだ。

デモで使われていた実車。フォードのマーキュリー。実車を使ったデモは初めてだという

ドアミラーの下にある黒い物体がカメラ。このままだとさすがに大きい

新しい取り組みとして、カメラの映像をカーナビにワイヤレスで送信することも想定。最終的には3mm角の無線LANモジュールを開発してカーナビなどに埋め込み、ワイヤレスで設置できるようにする。無線LANを活用することで、混信にも強く、応用範囲が広がるというメリットもある。たとえばカーナビのモニタに表示している映像をリアシートのモニタにワイヤレスで表示する、ホットスポットからインターネットに接続して情報を取得する、といったことが考えられるという。

実際の画面。4つの映像を組み合わせて車の周囲を表示。上空から写しているように見えるが、カメカメラより上の部分は写らないため、人の足しか写っていない。それでも近くにある障害物や人の存在は分かる

各カメラを4分割表示。スイッチでカメラを切り替え、1つずつ全画面で表示することもできる

デモで使われていた無線LANモジュール。これもちょっと大きい

リアビューカメラの映像

こうしたモニタのワイヤレス化では、カメラの映像を極力遅延なくモニタに映し出さなくてはならないが、無線LANモジュールのASICを自社開発することでこれを解決。遅延を50msまで減少させた。

トラックを使ったデモ。トラックは死角が多いためこういったカメラの要望は多いらしい。トラックだとカメラ位置が高くなるので、人が全身写っている。こういう場合に遅延が大きいと、映像がモニタに映ったときにはもうぶつかっている、といったことになりかねないので、遅延が少ないことが重要

現時点では、ワイヤレスのリアビューモニタと、有線接続の4つのカメラによるサラウンドビューモニタという2種類の製品を検討。年末までに発売を予定する。価格は現時点で、サラウンドビューモニタで2,000ドルを想定するが、実際にはもっと安くしたいそうだ。また、将来的にはサラウンドビューモニタもワイヤレス化することを目指す。

もう1つのワイヤレスオーディオシステムは、ポータブルオーディオプレイヤーとカーステレオのセット。車から離れているときはプレイヤーで音楽を聴き、車の中に戻るとカーステレオとプレイヤーがワイヤレスで接続され、それまで聴いていた音楽の途中からそのままカーステレオで聴くことができる、というもの。

ワイヤレスオーディオシステム。左がカーステレオ、右がポータブルオーディオプレイヤー

手を近づけると画面が点灯、操作が行える

プレイヤーとカーステレオはBluetoothで接続。自動的に両者が接続され、続きから再生できるシームレスな環境が構築できる、という点が大きなメリットだ。カーステレオ自体にはCD/DVDなどのメカ部を除き、プレイヤーと接続して再生するだけ、という割り切りも面白いところ。とはいえ、iPodと有線で接続して再生できたり、SDカード内の音楽データの再生も可能にするなど、応用範囲もきっちり広げている。

上がデジタルアンプ、下が従来のアンプ。デジタルアンプでは右側にある銀色の部分がヒートシンク。下は、左側に縦長にあるのがヒートシンク。デジタルアンプは今回は基板が1つだが、これを分割して組み込めばより小型化できる

Bluetoothのオーディオプロファイルとカーステレオと接続するためのプログラムをサポートしていればほかのプレイヤーでも再生できる可能性はあるそうだが、基本的にはプレイヤー自体は専用のものを検討している。また、カーステレオ自体にも、通常時は画面がブラックアウトし、操作しようと指を近づけると画面が点灯する、という未来的なギミックも搭載している。

ちなみにカーステレオには4チャンネルのデジタルアンプを搭載。このデジタルアンプは、従来のアナログアンプに比べてヒートシンクを大幅に小型化でき、その結果カーステレオを小型化することが可能になるそうだ。これまではカーステレオは1DINサイズで作られていたが、ステレオ自体を小さくしたり、ほかの機能をさらに組み込むなどの方向性が考えられるという。

ワイヤレスオーディオシステム自体は現在開発中で、市場動向を見ながら製品化を進めていく考え。

ほかにも、カップホルダーにちょうど収まる自動車用空気清浄機も開発中。同社はウイルスウォッシャーと呼ばれる技術で室内用空気清浄機を製造しているが、この技術を応用。車内のウイルスを低減し、タバコの煙やペットのにおいなどの除去、アレルゲンの除去、カビの低減といった機能を備える。また電解水のミストも散布でき、エアコンの風によって車内中にミストを行き渡らせる、といった効果もある。これを使うことで、99%以上のウイルスやバクテリアを抑制できるそうだ。電池でも駆動するが、AC/DC電源にも対応。現在開発中で、市販化を想定しているという。

車載用空気清浄機

カーナビ製品の新製品となる「NVM-E2000D」。2DINサイズのDVDプレイヤー搭載ナビだが、地図データなどはSDメモリーカードに搭載し、HDDは搭載しない。5.8型液晶、180万カ所の施設情報などを含んでいる。米国では2009年発売

こちらも目についた製品「Ultra Short-Throw Projecter」。製品名は「PLC-XL50」。その名の通り、スクリーンまでの投写距離が世界最短というもので、3インチの距離で80型というサイズが実現できる。これだけ短いといろいろな応用が可能で、このデモではデスクの下に設置し、デスクに透過表示させている。写真右を見ると、ちょっと分かりにくいがデスクの下にプロジェクタが設置されている

こちらも同様のデモ。これだけ狭い空間でも投写できる