――幼稚園から小学校に上がるくらいの頃、オモチャというよりは、そういった雑誌とか図鑑をいっぱいコレクションなさっていらした。

「はい」

――しかし、それがある日突然……。

「(笑)。もう、この話になると俺は涙が出てきて、未だに泣けてきますよ(笑)」

――思う存分、思いを語ってください(笑)。

「札幌の都心部に実家が薬局を構えてまして、その2階で暮らしてたんですね。今、そこにはビルが建ってるんですけど、幼稚園から小学校に上がる時に、その建設のために一旦立ち退いたんです。バスの始発が出るような札幌の郊外に一時的に移ったんですよ。その時に、命の次に大事なコレクションも当然持っていくじゃないですか。ところが、どうも親に騙されたらしいんですね(笑)」

――親御さんは、なんとおっしゃったんですか?

「『お前たちは先に行っておいで』『怪獣図鑑は?』『後で、わたしが運んであげるから』……そういうやり取りがあったハズなんですよ。でも気がついたら、いつまで経っても、いつまで待っても、僕の大事な怪獣図鑑や『少年マガジン』が手もとに来ないわけですよ。『お母さん、あれはどこに行ったの?』と言っても『うるさい』(笑)」

――ひどい!(笑)

「なにしろ当時のことだから、思い違いもあると思うんですけど」

――主観で結構です(笑)。

「気がついたらなんにもないんですよ(笑)。幼稚園児ながらに、それまで連綿と貯め込んできた物が(笑)。その最初の『ウルトラQ』の記事が載っていた雑誌は、お風呂に入る時も離したくなくてですね、濡れちゃ困るからタオルで巻いて脱衣所に置いて、お風呂から出たらタオルごと持って、またこうめくっていたくらいだったんですよ。それがそれがある日無くなってしまって(笑)」

――それで、どうなさったんですか?

「あまりに悲しくてですね、ビルの建設現場まで出かけて行って。パワーショベルとかで地面を掘ってるわけじゃないですか。塀のすき間から、『どっかに落ちてないかな』(笑)。わざわざ覗きに行ったぐらい(笑)」

――諦めきれずに(笑)。

「今から思えば、ゴミの日かなんかに出されちゃったのかもしれないけど、子どもはそう思わないから(笑)。『ないかな、ないかな』って、工事現場をうろうろしたんですね(笑)」

――そりゃあ、かわいそうだ(笑)。

「あー、もうね、ここまで育ててくれた親にはホントに恩義を感じていますけど、あれ捨てられたということだけは、未だに許せませんね(笑)。絶対、絶対、忘れないんだから!(笑)」