11月1日より2日間にわたり「Adobe MAX Japan 2007」が開催されるが、それに先立ち、アドビシステムズは31日、米Adobe Systems プラットフォーム事業部担当 シニアバイスプレシデント兼チーフソフトウェアアーキテクトのKevin Lynch氏を招いて同社の新技術に関するプレス向け説明会を行った。

米Adobe Systems プラットフォーム事業部担当 シニアバイスプレシデント兼チーフソフトウェアアーキテクト Kevin Lynch氏

同氏は冒頭で、Webが現在RIA(Rich Internet Application)の時代を迎えていると指摘した上で、それらのアプリケーションを「Adobeの製品が一番よく作れる」(Lynch氏)ようになることを目指していると語った。現在ベータ版が公開されているRIA実行環境「Adobe AIR」は、まさにそのための統合プラットフォームとなるべきプロダクトである。

AIRは現時点ですでに46万ダウンロードを達成し、またSDKも5万ダウンロードに達したという。その上で動作するアプリケーションもすでに数百のものが登場しており、その一部はMAX Japanにおいて提携各社によってデモンストレーションされる予定となっている。AIRの特徴はオンライン/オフラインの双方でRIAを実行できるという点にある。そのため、デスクトップレベルからエンタープライズレベルまで、広範囲に利用することが可能となっている。

Adobe自身でもAIRアプリケーションの開発を進めているという。例えばMedia PlayerやBuzzward(SaaS[Software as a Service]版のワードプロセッサ)などだ。これについてLynch氏は「アプリケーションがAIRのランタイム上で正しく動作することが重要であり、Adobe自身がそれを実証しなくてはならない」と語っている。

10月初頭に米イリノイ州シカゴで行われた「Adobe MAX 2007 North America」では、AIRに次いで開発コード「Astro」で呼ばれる次世代Flash Playerも注目を集めていた。Astroでは現在のFlash Playerに対してパフォーマンスや表現性が格段に向上するという。特に注目すべき新機能として、Lynch氏は次のようなものを挙げた。

  • 高機能なフィルター・エフェクト
  • マルチからーやフロータブルテキストをサポートしたテキストエンジン
  • 2D画像を3Dにレンダリングできるパースペクティブ・トランスフォーメーション

開発環境では、RIAデザイン用ツール「Thermo」が新たに発表されている。これはグラフィックスコンポーネント・ベースでRIAをデザインすることにより、デザイナなデベロッパがRIAアプリケーションをより容易に開発できるようにするものだという。Lynch氏は、「Thermoによって、PhotoshopやIllustratorで実現できるようなインタラクティブ性をアプリケーションに導入できる」と語っている。

Adobeではデスクトップ・アプリケーションへの注力は従来通り継続する一方で、最近ではAdobeもSaaSアプリケーションへの対応にも力を入れている。これについて、Lynch氏は「アプリケーションの作り方のスタイルがサービス化という方向にシフトしつつあり、Adobeもその流れに乗っているのだ」と語る。

同社がホスト・サービスとして開発を進めているものには、「Scene7 Imaging」や「SHARE」「Pacifia」「CoCoMo」などがある。Scene7 ImagingはWebページ上で画像の拡大/縮小、色の変更などといった様々なエフェクトを実現する技術。SHAREはインターネット上でファイルの共有を行うことができるサービスだ。PacificaとCoCoMoは、どちらもブラウザ上でビデオ会議を行うことができるサービス。Pacifiaの方はSIPをベースとして開発されているのに対して、CoCoMoはAcrobat Connect Proの技術をベースとしてFlash Media Server上で動作する。

その他、PremiereやPhotoshopなどの既存のアプリケーションのサービス化も進めている。例えばすでにベータ版が公開されているPremiere Expressでは、オンラインで自由にビデオを編集し、公開することができる。Photoshopのオンライン提供版であるPhotoshop Expressも現在公開に向けて準備を進めているとのことである。また、AIRについても将来的にはサービス化を視野に入れているという。

Adobeのテクノロジー・ロードマップ

日本市場においては、モバイル分野に対するAdobeの戦略も気になるところだ。同社では10月2日にモバイル端末で動作するFlash Player「Adobe Flash Lite 3」をリリースした。これによってFlashによる様々なリッチコンテンツが携帯電話をはじめとするモバイル端末上でも閲覧できるようになった。

「モバイル分野のコンテンツはこの先一年で大きく変わるだろう」とLynch氏は言う。すなわち、現在Webで展開されている様々なコンテンツがケータイ電話などでも利用できるようになるということである。同氏によれば、モバイルデバイスに対するコンテンツのリッチ化では日本が世界に先んじており、同社でもそれをビジネスチャンスととらえて力を注いでいくとのことだ。

これらAdobeの新しい製品や技術については、「Adobe MAX Japan 2007」においてより詳細に知ることができるという。最後にLynch氏は、日本の開発者に対して次のように呼びかけた。

「世界では今非常に素晴らしい進化が起ころうとしている。MAX Japanの会場では、その進化をお見せすることができるだろう」

同イベントではLynch氏の基調講演やAdobeおよびパートナー企業による新製品やソリューションの紹介を始めとして、6トラック、48のセッションが予定されている。