カビラ・テクノロジーズ・ジャパン(以下、カビラ)は6日、同社の持つOn-Memory超高速トランザクション処理技術の概要を説明するプレスカンファレンスを開催し、今後の日本市場戦略を明らかにした。

米Kabira 社長兼最高経営責任者 ポール・サットン氏

カビラは米Kabira Technologies, Inc.の日本法人であり、日本市場におけるKabiraに関する全てのサービスの提供を担っている。米Kabiraは、独自に開発したOn-Memory高速トランザクション処理技術により、主に金融サービスとテレコムサービスの分野においてハイパフォーマンスなリアルタイムシステムを提供している。日本市場においては数年前より事業展開を進め、すでにNTTグループ各社やイー・モバイルなどをはじめとした多くの会社に対する導入実績をもつ。

米Kabira社長兼最高経営責任者であるポール・サットン氏は、日本は世界の中でも特に"メインフレーム指向"の強い国だと指摘する。1980年代から1990年代にかけてはメインフレーム主体のコーポレートコンピューティングが主流だった。しかし現在はほぼ全てのコンピュータがネットワークに接続してビジネスに参加してする"コンシューマ指向"へと変化している。それに伴ってトランザクションは増加・複雑化しており、一方でトランザクション単位の売上げは減少する傾向にある。同氏の主張は、日本がこのコンピューティングの変遷に対応して世界に追い付くためには、新たな技術変革にチャレンジしなければならないというものだ。

カビラが提供するソリューションは、従来型のコーポレート環境と21世紀型のコンシューマ環境のデジタルギャップを埋め、日本に必要な技術変革をサポートするという。サットン氏はそのようなソリューションにおける重要機能として次のようなものを挙げている。

  • 円滑なネットワーク構築
  • メッセージの維持・管理
  • 各種仕向けルールの構築
  • メッセージ送受信の確実化
  • ソフトウェアレベルでのノンストップ機能
  • 無障害・無停止の実現

これに対してカビラが注目したのが「メモリ」「プロセッサ」「接続性」という3つの要素だ。カビラのシステムでは、全てのデータをOn-Momoryで処理することで極めて高いパフォーマンスを低コストで実現している。より安価なメモリを利用することで、大量のデータを処理することができる。そして使用可能なメモリ容量の制限を無くすため、理論上無限のメモリを利用できる64ビットプロセッサを採用。さらにマシンとマシン、マシンとネットワークの接続性を拡大することで、ネットワークから地理的条件を排除している。

カビラではこの3つの優位性を持つトランザクション・プラットフォームを「Kabira Transaction Platform」として提供している。現在の主なターゲットはテレコム業界と金融業界となっている。前者は携帯電話やモバイル機器などの普及により、後者はクレジットカード利用範囲の大幅な拡大や決済機能付きICカードの普及により、単位時間当たりのトランザクションが増大しているという。

Kabira Transaction Platformで提供される製品は、次のような特性を備えることで膨大なトランザクションを高速かつ確実に処理する。

  1. ハイパフォーマンス
    • データキャッシングによる低レイテンシ
    • 実行環境での非同期処理
    • 共有メモリ内のイベントキューイング
    • オブジェクトインデックスによるオブジェクトへの高速アクセス
    • コンテキストスイッチングを排除するスレッドデザイン
  2. 64-bitデータ空間
  3. 徹底したトランザクション性
    • すべての処理がトランザクションベース
    • すべてのアクションがアトミックで独立
    • トランザクションモニタによる監視機能
  4. ハイアベイラビリティ(HA)
    • 自動的なオブジェクトミラーリング
    • リアルタイムフェールオーバー
  5. オブジェクトパーティショニングを利用したロードバランス機能
  6. 業界標準であるEclipseをベースとした統合開発環境「Kabira IDE」
  7. モデル駆動型アーキテクチャ
    • プラットフォームに依存しない標準モデリング技法を採用
    • モデル情報を基にコードを自動生成
  8. オープンなチャネルアーキテクチャによる外部システムとの接続性の確保
  9. KSSLによる高いセキュリティ
  10. ダウンタイムゼロでの更新を可能にするオンラインバージョニング

上記のようなカビラのシステムは、すでに日本の企業でも導入され、高い実績を持っている。例えばNTTデータではCAFISシステムにおけるカード決済業務に対してカビラの製品を導入し、新サービス投入のための所要時間を大幅削減することに成功しているという。

カビラ・テクノロジーズ・ジャパン 代表取締役 植松裕史氏

今後は、国内の金融業界/テレコム業界それぞれに対して、カビラの優位性を活かした事業展開を進めていきたいと、同社代表取締役の植松裕史氏は語る。現在、金融業界では急増するトランザクションへの対応やクレジットカード等のオーソリ業務の強化、仕向け・スイッチングの強化などが急務になっていると同氏は指摘する。

また、産業界全体を見てもPASMOやSUICAなど決済機能付きICカードの普及、モバイル機器の普及、クレジットカードの利用促進などにより、膨大なトランザクションへの対処を余儀無くされている。さらに、トランザクションの完全確保やIT統制によるコンプライアンス対応も重要な課題だ。そこにカビラのソリューションが持つ優位性をアピールしていきたいと植松氏は言う。