Fedora 8に提案されている機能のひとつにGnomeパネルのかわりに「Big Boardを導入する」というものがあった。これはオンラインデスクトップを実現するためのひとつのアプリケーションだが、そもそも「オンラインデスクトップ」とはなんのことだろう。2007年末から2008年にかけてFLOSSデスクトップでオンライン対応が加熱する可能性がみえてきた。ここではこうした話題の鍵となる「オンラインデスクトップ」について紹介する。

Webアプリケーションとデスクトップの統合

Webアプリケーションの中にはOSを模倣するものがある。時に「WebOS」と呼ばれる種類のアプリケーションで、Webブラウザからアクセスするとウィンドウ内に仮想のOSデスクトップが表示。その仮想デスクトップでメーラやRSSリーダ、さらにはWebブラウザといったアプリケーションを起動することができ、簡単な作業であればWebOS内で作業が完了するというものだ。

「オンラインデスクトップ」はこうしたいわゆるWebOSとは異なる。端的に言ってしまえば、既存のGnomeデスクトップと人気のあるインターネットサービスをもっとシームレスに統合するものだ。

今日では、特に若者のユーザやデベロッパにみられる傾向だが、デスクトップを起動してから多くの時間を、デスクトップアプリケーションではなく、Webブラウザやメッセンジャーを経由してWebアプリケーションとともにすごすようになりつつある。こうしたWebアプリケーション化の流れはビジネス的にもすでに無視できるレベルを超えており、今後もこの傾向は続くとみられている。

Gnomeにおいてこれから活発になるであろう「オンラインデスクトップ」は、こうしたインターネットで提供されているWebアプリケーションとGnomeデスクトップをシームレスに統合していこうというものだ。細かい対応はWebアプリケーションの流行なども加味しながらこれから徐々に現実化されることになるだろうが、久しぶりにエキサイティングなリリースが続くことになりそうだ。

具体的にどういったことが可能になるのか?

人気のあるWebアプリケーションは何か? ベストWebアプリケーションを決定するアワードプログラム「The Webware 100 winners」の結果によれば、Bebo、Gaia Online、Gmail、Google、MySpace、Stardoll、Wikipedia、WordPress、YouTubeなどになるようだ。日本であればYahoo! Japanのサービス、livedoorのサービス、mixi、ニコニコ動画といったサービスも入るだろうし、今ならTwitterやSecond Lifeも話題にあがってくるに違いない。

オンラインデスクトップでは、これらWebアプリケーションをデスクトップからシームレスに使えるようにするというところに事の本筋がある。これは予想に過ぎないが、最終的に実現される機能として、たとえば画像の保存場所として表示されるフォルダがそのままFlickrやPicasaと連動、動画の再生がYouTubeやGoogle Videoと連動、メーラがGMailと連動、TodoがRSSリーダと連動するなど、挙げていけばきりがないだろう。現在は主にWebブラウザ内で閉じているWebアプリケーションの活用を、デスクトップ全体でシームレスに実現していこうというわけだ。

Google PanelのかわりにBigBoardを導入するのは、手はじめに各種Webアプリケーションとの連動を実現するものだが、基本的なメカニズムはD-Busサービスにオンラインデスクトップエンジンを実装し、各アプリケーションがオンラインデスクトップ機能を使えるようにするということになりそうだ。D-Busはメッセージバス実装のひとつでGnomeはすでにメッセージバスとして採用しているほか、KDEはKDE 4での対応、そのほかアプリケーションやOSレベルでもD-Busへの対応が進められている。D-BusレベルでWebアプリケーションへの対応を進めることで、デスクトップ全体としての対応を進めるというのが基本的な取り組みである。