2007年3月31日、かつて国内最大規模を誇った@niftyのコミュニティサービス「フォーラム@nifty」がサービスを終えた。2007年6月28日15時にはリードオンリーだった各会議室も消去され、完全に姿を消すことになる。

パソコン通信から始まった「フォーラム」

1987年4月15日、「パソコン通信サービス」として「NIFTY-Serve」がスタートした。「フォーラム」はこの「NIFTY-Serve」のサービスの中心として、サービス開始と同時に提供された。「NIFTY-Serve」は、富士通と日商岩井の合弁会社「NIF (エヌ・アイ・エフ、後に日商岩井が手を引き、富士通が吸収)」が、米国のパソコン通信サービス「CompuServe」のライセンスを受けるかたちでスタートした。

当時、「E-MAIL(電子メール)」や「BBS(電子掲示板)」といった、サービスや名称すらも一般には普及しておらず、「草の根BBS」と呼ばれた地域型のネットワークがようやく全国化していく段階であった。回線速度は「300bps」「1,200bps」が一般的で、「モデム」を用いて電気信号を音声信号に変換し、接続先で再変換するという、現在のブロードバンド接続が普及している状況から考えると、とんでもなく旧式の接続方法を利用していた。事実、当時のユーザーは、アクセスポイントに電話をかけて、接続時の音(ネゴシエーション音、FAXに電話をかけた時に聴こえる「ピー」という音で始まるもの)で回線速度を判別するといったこともできていたような時代だ。まだ、全国規模のBBSは少なく、「NIFTY-Serve」に加えて、「日経mix」、「アスキーネット(PCS/ACS)」そして「PC-VAN」の四大ネットワークしかなかった。

なかでも「NIFTY-Serve」の「フォーラム」はスタート時より、その道にたけた、いわゆる専門家に「システムオペレータ」(SysOp。正式には「シソップ」という発音になるが、一般的には「シスオペ」と呼ばれた。後に「フォーラムマネジャー」という名称に変更)として運用を委任、そのフォーラムでの活動に原則として制限を加えず、自由にコミュニケーションをさせる形式を取ったこと、加入するための「メンバーズパック」という加入権を購入する形式を採用(後に「イントロパック」として、通信ソフトやPCなどに添付されるようになる。最終的には無料化された)、さらに支払にはクレジットカードが必要と、「大人しか加入できない」ようにすることで、大人のネットワークを生成することに成功したといえる。

また、操作系統に「メニュー」から番号を選択することで操作する部分と、「コマンド」を入力することで、会議室の発言表示を連続しておこなう機能をシームレスに利用することができ、通信ソフトによる「自動運転(オートパイロット)」を容易にしたことで、他のネットワークからも多くの利用者を獲得していった。これは当時の電話料金および「NIFTY-Serve」の接続料金が完全な従量制であったこともあり、一般ユーザーに広く普及していった。スタート時「45」しかなかったフォーラムは、一般ユーザーから提出される企画書を審議し、その内容がよければ新規に設置され、最終的には1,000を超えるフォーラムが設置された。こうした結果、「NIFTY-Serve」は1996年に200万人を超えるユーザー数に達している。

しかしながら、その後、ホストに集中接続するパソコン通信から、集中接続を必要としない「インターネット」へ移り変わるに従い、その隆盛に陰りが見え始める。新聞には毎日のように「インターネット時代」「○○社がホームページ公開」といった単語が並ぶようになり、それに伴って、これまでの「フォーラム」は「TTYフォーラム」という名称になり、一部の人気フォーラムが「Webフォーラム=フォーラム@nifty」としてリニューアルしていった。しかし、「Webフォーラム」では、機能的に「TTYフォーラム」に及ばず、オートパイロットも使いにくいことと、これまでの純粋な文字によるコミュニケーションには向かず、ユーザーは契約したプロバイダでホームページを作成したり、メーリングリストへ移行していった。もちろんその後、「ブログ」や「mixi」といった新しいサービスによって大きくユーザーが移行してしまったという背景も存在する。

最終的に@niftyは、2006年3月31日に全てのTTYフォーラムをWebフォーラム化すると同時に、パソコン通信サービス全体を終了させた。「Webフォーラム」に移行しないフォーラムは廃止となり、それまで管理をおこなっていた「フォーラムマネジャー」は独自にサイトを作成したり、ユーザーによって引き継がれていくこととなった。しかし、Webフォーラムへと移行したものの、1年後の2007年3月31日には、全てのフォーラムが終了することになってしまった。

なお、残された会議室の発言などは、2007年6月28日15時までは閲覧可能だが、その後は全て消去され、@niftyの「フォーラム」は完全に消えてしまうことになる。

しかし、「フォーラム」で紡がれた絆は、@niftyと一切関係のない新たなコミュニティへと繋がっていく。それが「folomy(フォロミー)」である。