アプリケーションデリバリーベンダーのシトリックス・システムズ・ジャパンは12日、企業環境の変化に対するITの戦略的活用をテーマにした「ビジネス改革セミナー」を、東京都目黒区で開催した。同社マーケティング本部本部長の柳宇徹氏による基調講演の後、日経BP編集委員で国際大学教授の中島洋氏が「迫られる企業革新」と題して講演、「ITによる業務プロセス可視化こそ内部統制の鍵」と訴えた。その後3会場で行われた個別セッションでも、SOX法への対応事例などが紹介された。

「IT活用こそ内部統制の鍵」と話す中島洋氏

中島氏は冒頭で、企業のIT活用を巡る新たな動きとして、ビジネスプロセスアウトソーシングの新たな拠点として沖縄にデータセンターなどが集積しつつあることや、総務省が今月15日に「ASP・SaaS普及促進協議会」を発足させることなどを述べ、経営へのIT活用がますます重要になってきていると指摘した。

また、今年3月に「ITの投資重点項目」をテーマにCIO400人以上を対象に行ったアンケートの結果を紹介。過去2~3年における投資重点項目のランキングでは、1位の「個人情報保護」に続き、「財務・会計」「営業支援」「人事・給与」「販売管理」「調達」がランキングされ、最下位が「内部統制関連」だったのに対し、今後2~3年の投資重点項目のランキングでは、1位に「内部統制関連」、4位に「経営層意思決定支援(BI=ビジネスインテリジェンス)」、10位に「事業継続計画(BCP=ビジネスコミュニティプラン)がランクインするなど、IT活用を巡る企業環境が急激に変化していると述べた。

その上で中島氏は、こうした変化の背景に、企業の社会的責任が時代を追うごとに厳しくなっている事実があると指摘。「公害解決には有害廃液を測定するセンサー、食品による健康被害には流通過程をトレースするRFID、個人情報漏洩についてはセキュリティシステムなど、企業が社会から突きつけられる"緊急課題"の解決には、常に情報システムの活用が求められてきた」(中島氏)とし、昨年5月から施行された新会社法や日本版SOX法が求める内部統制についても、「ITの活用こそが鍵となる」(同)と強調した。

さらに同氏は、新会社法が求める内部統制を「取締役の社会責任」、日本版SOX法が求める内部統制を「投資家への責任」と定義。「サーバー統合による業務プロセス・データの可視化によって初めて、こうした責任を果たすことができる」と訴えた。