若者は、いつの時代も流行を真っ先に追う。それは中国の学生にとっても同じだ。彼らは最もポテンシャルのある消費者として、中国のIT市場に大きな影響力を持っている。本レポートでは関係調査機関による調査結果と、沿海都市の大学キャンパスでの聞き取りに基づき、中国の大学生のいまどきのIT生活を紹介してみたい。

大学生の四つの宝物

中国のどの大学へ行っても、音楽を聞きながら歩く学生、携帯電話で通話したりショートメッセージを送る学生、ノートPCを入れた黒いカバンを持ち歩く学生などをよく目にする。入学や卒業、気候の良い時分などで、学生達がデジタルカメラでスナップショットを撮り合う場面が、いわば季節の風物詩となっている。中国の若者の間では、ノートPC、携帯、MP3/MP4プレイヤー、デジタルカメラが、「四つの宝物」と言われるほど浸透している。

CTR市場研究と中国青年校園先鋒文化有限公司が全国規模で実施した調査によれば、これらの「宝物」の所有率は、携帯電話が82.8%、MP3プレイヤーが76.3%、MP4プレイヤーが46.6%、ノートPCが20.8%であった。また、浙江工商大学が実施した調査では、大学生のPC所有率はいまや56.6%に達している。筆者は山東省の青島大学で教鞭を取っているが、キャンパスで聞き取りをしてみたところ、デジタルカメラの所有率は26.7%であった。デジタルカメラ以外のものは所有率が50%を超えていたから、「宝物」というより、これらはいまや大学生の必需品である。

一見、愛国的に見えるブランド意識も、実情は──

ところで、教育部教育管理信息中心らが1月末、「大学生最喜愛品牌(大学生が最も好むブランド)」と題した調査結果を発表した。それによると、いまどきの大学生が最も好きなノートPCとテスクトップPCは、Samsung電子、Haier、BenQ(明基)とASUSTeK Computer(華碩)。MP3/MP4プレイヤーは、aigo(愛国者)、Newman(紐曼)、MEIZU(魅族)。PCの自作パーツはColorful(七彩虹)とONDA(昴達)。インターネットゲームは網易遊戯であった。

こうしてみると、中国大学生が選んだブランドリストに入れた外国ブランドは、かろうじて韓国のSamsung電子のみである。一見、中国の大学生は中国大陸ブランドと台湾ブランド(BenQとASUS)の誠実なファンで、「愛国的」な姿勢を示しているように映るが、一般的に大学生の購買力は弱いため、比較的価格が高い海外ブランドにはなかなか手が出ないといった事情があるものと考えられる。

CTR市場研究の調査結果から大学生のブランド意識をみると、78%がブランド品は品質とサービス保証を意味すると認識し、57.3%がブランドをステータスシンボルとみなしている。一方、57%の大学生が「ブランドは何の問題も説明できない。重要なのは製品自体」との見方を支持している。大学生のブランド意識には矛盾もあるが、総じて理性的なものと言えそうだ。

また、ブランド以外で大学生が最も重要視しているのは価格であったほか、ファッション性や個性、アフタサービスも大学生のIT・デジタル製品購入に影響している。分割払いも支持されているようだ。

では、彼らの平均支出はいかほどであろうか。CTR市場研究の調査では、昨年秋学期に中国の大学生がIT・デジタル製品を購入するために支払った金額は、平均1,485元(約22,275円)で、実に一学期の学費関連日常支出(学費と寄宿舎料、テキスト代を除く)の54.8%にも達している。これで推算すると、中国の大学生全体で、一学期にIT・デジタル製品購入のために支払われた金額の総計は、73億元(約1,095億円)にも達するのだ。