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【答え】三菱自動車工業「HSRⅡ」
答えは「HSRⅡ」です。
HSRⅡは三菱自動車が1989年の「東京モーターショー」に出展したコンセプトカーです。HSRは「Highly Sophisticated-transport Research」の頭文字。高度に洗練された移動の研究、といったような意味です。
21世紀を前に、運転者の技量を問わず、安心して安全に運転でき、なおかつ運転の楽しさも味わえる道筋を探る試作車でした。HSRⅡの前には、1987年にHSRが登場し、2年後のHSRⅡを経て、HSRシリーズは1997年のHSRⅥまで世代を重ねます。
HSRⅡはツイン・ターボチャージャーで過給する排気量3.0リッターのV型6気筒エンジンをフロントに搭載しています。ミッドシップカーのように見える外観ですが、あえて乗用車と同じエンジン搭載や駆動方式を用いているところは、量産車への技術移管を視野に入れた試作車であることを伺わせます。
駆動方式はフルタイム4輪駆動で、4輪操舵でもあります。これに4輪ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)と4輪独立懸架を加え、三菱は「オール・ホイール・コントロール」(AWC)と呼びました。
流麗な車体には、前後と左右別々に稼働させられるフラップを装備し、速度や旋回など走行状況に応じて個別に電子制御で作動させられる「アクティブエアロシステム」を搭載。これにより、加減速や旋回での空気の流れを制御し、素早く加速したり、短距離で減速したり、旋回姿勢を安定させたりします。
そうした先進技術は、すべてが量産市販車に採用されたわけではありませんが、1990年に「GTO」として発売される高性能車のコンセプトカーだった「HSX」に採用されています。市販されたGTOでは、可変リアスポイラーやアクティブエアロシステム(ツインターボ車)が実用化されました。
未舗装路での卓越した走破性能で高い人気を得た「パジェロ」はもちろん、舗装路での走りを主体としたGTOのほか、「ギャラン」や「ランサー・エボリューション」においても、三菱自動車はフルタイム4輪駆動技術の進化に力を注ぎました。そして1990年代後半には、「世界ラリー選手権」(WRC)で、運転者や製造者としてのタイトルを獲得しています。
HSRⅡが出展された1989年には、日産自動車から「スカイラインGT-R」の復活があり、1990年にはホンダが「NSX」を誕生させます。1980年代後半から1990年にかけてのバブル期は、日本の自動車メーカーが湯水のように技術や造形に資金を投じました。そのことが、今日まで続く技術立国としての日本の素地となっています。
第二次世界大戦後、欧米の自動車産業に、技術だけでなく造形においても「追いつけ追い越せ」と励んできた成果が、この1990年前後に実を結び、いよいよ欧米と肩を並べるほどの手ごたえを実感した時代でした。
三菱HSRⅡは、そうした時代の隆盛を象徴するコンセプトカーのひとつといえるでしょう。
それでは、次回をお楽しみに!