今回で本連載は最終回。最後に、少しユニークなExcelの使い方として、「手書きの書類」をパソコン入力可能にする方法を紹介する。社内の規則により「指定された用紙」を使って書類を作成しなければならない場合などに活用すると、面倒な「手書き」の作業から解放されるだろう。

書類のスキャンと配置

最近は、パソコンを使って書類を作成するのが当たり前の時代だ。しかし、依然として社内(もしくは社外?)のデジタル化が進んでおらず、「指定された用紙」を使って書類を提出しなければならないケースもあるようだ。心の中では『パソコンを使った方が便利なのに……』と思いつつも、仕方なく「手書き」で書類を作成している人もいるのではないだろうか。

その際、活用できるのが今回紹介するテクニック。「指定された用紙」をそのままスキャンして利用するため、書類の見た目を変えることなく、また書類をゼロから作りなおすこともなくデジタル化できるのが利点だ。疑似的なデジタル化ではあるものの、書類としての役割は十分に果たしてくれるので、たいていの場合、問題なく仕事に活用できるだろう。

それでは、操作手順を紹介していこう。まずは「指定された用紙」をスキャンして、画像ファイルとして保存する。スキャン解像度は300dpiもあれば十分だ。今回は例として、以下の書類をスキャンして画像ファイルにした。

  • Excel入力に対応させる書類(スキャン画像)

    Excel入力に対応させる書類(スキャン画像)

書類をスキャンしたら、この画像をExcelに貼り付ける。ただし、普通に画像を貼り付けると「前面」に画像が配置されてしまうため、書類に文字を入力できなくなってしまう。よって、ヘッダーに画像を貼り付ける必要がある。「ページ レイアウト」タブを選択し、「ページ設定」の画面を開く。

  • 「ページ設定」の呼び出し

    「ページ設定」の呼び出し

ヘッダーの編集を行うときは、「ヘッダー/フッター」タブにある「ヘッダーの編集」ボタンをクリックすればよい。続いて、「図の挿入」アイコンをクリックすると、ヘッダーに画像を貼り付けることができる。

  • ヘッダーの編集

    ヘッダーの編集

  • 「図の挿入」アイコン

    「図の挿入」アイコン

あとは「ファイルから」を選択して、先ほどスキャンした画像ファイルを指定するだけ。その後、「OK」ボタンをクリックして各ダイアログを閉じていくと、画像の貼り付け作業が完了する。

  • パソコンに保存されている画像を貼り付ける場合

    パソコンに保存されている画像を貼り付ける場合

ただし、通常の編集画面では、ヘッダーに貼り付けた画像が画面に表示されない。貼り付けた画像を確認するには、表示方法を「ページ レイアウト」に切り替える必要がある。

  • 表示方法の切り替え(ページ レイアウト)

    表示方法の切り替え(ページ レイアウト)

  • ヘッダーに貼り付けられた画像

    ヘッダーに貼り付けられた画像

次は、画像の位置を調整する。ヘッダーに貼り付けた画像をよく見ると、用紙の上と左に余白が設けられているのを確認できる。この余白をなくすには、Excelの余白設定をすべて「0(ゼロ)」にしておく必要がある。さらに、プリンターの設定で「フチなし印刷」を有効にすると、画像を用紙サイズに揃えて配置可能だ。

  • すべての余白を「0」に指定し、「オプション」ボタンをクリック

    すべての余白を「0」に指定し、「オプション」ボタンをクリック

  • フチなし印刷の指定

    フチなし印刷の指定

なお、プリンターがフチなし印刷に対応していない場合は、「用紙の余白」に合わせてスキャンした画像の四隅をトリミングしておくと、画像(書類)と用紙のサイズを揃えることができる。

各セルのサイズ調整

書類のスキャン画像を配置できたら、次は入力欄に合わせてセルのサイズを調整していく。マウスをドラッグして「行の高さ」と「列の幅」を変更し、それぞれの「入力欄」と「セルのサイズ」が合致するように調整していこう。このとき、各セルの位置やサイズを厳密に揃える必要はない。もともと「手書き」で作成する書類なので、大まかな位置が合っていれば十分である。

  • 「行の高さ」と「列の幅」の調整

    「行の高さ」と「列の幅」の調整

1つの入力欄が複数のセルに分割されてしまう場合は、「セルの結合」を行うと、入力欄とセルの対応を整えることができる。

  • セルの結合

    セルの結合

文字の書式指定と数式の入力

セルのサイズを調整できたら、テスト用に適当な文字を入力して文字のバランスを整える。入力欄のサイズに合わせて、文字サイズ/行揃え/表示形式などを指定する。

  • 文字のテスト入力と書式の指定

    文字のテスト入力と書式の指定

合計の算出などが必要な場合は、そのセルに数式や関数を入力しておくと、電卓を使って計算を行う手間を省くことが可能だ。

  • 数式や関数の入力

    数式や関数の入力

なお、書類によっては「チェック」や「丸囲み」などの記述が必要になる場合もある。これらの記載にはExcelの図形描画機能を利用するか、もしくは印刷後に「手書き」で記入して対応する。「チェック」や「丸囲み」を追記するだけなら「手書き」でもそれほど苦にはならないはずだ。

テスト印刷とファイルの保存

ここまでの作業が済んだら、試しに書類をテスト印刷してみるとよい。もしも印刷結果に不具合が見つかったときは、「セルのサイズ」や「文字の書式」の再調整を行う。

  • 書類のテスト印刷

    書類のテスト印刷

以上で「手書きの書類」のデジタル化は完了だ。テスト用に入力した文字を削除し、Excelファイルとして保存する。なお、所属部署や氏名のように入力内容が変化しない項目は、そのまま文字を残しておいても構わない。

  • テスト用の文字を削除した書類

    テスト用の文字を削除した書類

以降は、書類の作成が必要になった際に、Excelファイルを開いて文字や数値を入力し、プリンターで印刷するだけ。これで面倒な「手書き」の作業から解放される。

一度しか作成しない書類は「手書き」のままでも特に問題はないが、毎週、毎月といった頻度で作成する書類は、上記の手法でデジタル化しておくと、以降の書類作成を効率化できる。入力済みのExcelを別名で保存しておけば、書類の管理という点においても疑似デジタル化が役に立つだろう。

本来であれば、書類を管理する部署がWordやExcelなどで「デジタル化した書類」を作成するのが筋であるが、大人の事情でそうはいかない場合もある。その際、「自分専用のデジタル書類」として上記のテクニックを活用すると、社内(社外)のルールを守りながらパソコンで作業を進められるようになる。仕事をスムーズに進める手法の一つとして、覚えておいても損はないだろう。