カプコンが主催するeスポーツイベント「CAPCOM Pro Tour(CPT)2021 日本大会2」が9月18日、19日にオンラインで開催されました。ベスト8進出者は日本eスポーツ連合(JeSU)公認プロライセンスと、優勝者は2022年初頭に予定されている「CAPCOM CUP VIII(カプコンカップ)」への出場権が得られます。2021年4月に開催した「CPT2021 日本大会1」ではプロゲーミングチーム「魚群」のマゴ選手が優勝しており、カプコンカップの出場権を獲得しました。
CPTは全世界で32大会あり、日本開催は4大会。10月30日、31日開催の「日本大会3」、翌2022年1月22日、23日に開催の「日本大会4」がこれから開催される予定です。
大会名はプロツアーと銘打っていますが、プロ選手以外も出場できるオープントーナメント。『ストリートファイターV』のファイターズID(アカウント)とDiscordのアカウントがあれば誰でも出場できます。今回は、321人の参加登録がありました。優勝したのは、プロゲーミングチーム「忍ism」のひぐち選手。20歳の大学生です。
『ストリートファイターV』は、eスポーツ黎明期からコミュニティがあり、20年クラスでプレイしている人も多いタイトル。さらに、反射神経や反応速度など若年層が有利となる能力よりも、経験や知識が勝敗に反映しやすいと言われており、若手よりもベテランが活躍しやすい土壌があります。したがって、ほかのeスポーツタイトルよりも若手の台頭が少なめなのですが、そんな中でも活躍著しいのが今回優勝したひぐち選手です。
2020年に開催された「ストリートファイターリーグ:Pro-JP プレシーズン大会 ファイナルトーナメント」では、ベテラン強豪選手を軒並み倒して優勝。2021年4月に開催されたJeSU主催の「Japan University eSPORTS Championship:U-Champ」でも優勝するなど、目覚ましい活躍を見せています。「TOPANGA チャンピオンシップ シーズン3」では最終戦まで優勝争いを展開したものの、惜しくも3位でしたが、今回のカプコンプロツアーの優勝で、まさに若手ナンバー1の地位とトッププロとしての実力を示したと言えるでしょう。
注目すべきは、ウィナーズサイドのトップ8とグランドファイナルで対戦したsako選手戦です。sako選手はプロライセンス保持者最年長の42歳。ひぐち選手とは22歳の年の差があります。
ウィナーズトップ8の対戦では、sako選手がベテランならではのテクニックでひぐち選手を圧倒します。しかし、ルーザーズを勝ち抜いたひぐち選手は、再度グランドファイナルでsako選手と対峙。ルーザーズなので、ひぐち選手は連勝する必要がありましたが、攻めを主体にしたアグレッシブな戦いでみごとに連勝し、優勝を決めました。ベテランの老獪で経験豊かな戦いに、若手らしい自分の実力を信じた迷いのない戦いは、清原和博と山田久志、もしくは村田兆治との対決のようでした。
ひぐち選手は、若手選手育成企画の育成候補として、14歳のときにプロゲーミングチーム「忍ism」参加したプレイヤー。先で紹介した活躍もあり、もはや立派な忍ismのメンバーです。
しかも、今大会では、予選プール2戦目で忍ismのふじむら選手、トップ16とルーザーズセミファイナルでオーナーのももち選手を倒しています。メンバーの一員どころか、チームを牽引する若きエース候補と言えるのではないでしょうか。
優勝後のインタビューでは、実況解説から「ももち選手から卒業の時期がきているのではないか」聞かれて、答えに窮していました。卒業と訳してしまった同時通訳の人の言葉に引っ張られてしまった感じですが、選手として独り立ちできたという意味では十分、その実力があるでしょう。日本語解説のMCのお笑いコンビ「NOモーション。」の矢野さんが「免許皆伝ってことですね」とフォローしていました。
さて、先述したとおり、カプコンプロツアーは誰でも参加できるオープントーナメントです。なので、今回も筆者自ら参加してきました。今回は1勝2敗という結果。ただ、今回は勝敗以上にオープントーナメントならではの対戦を経験できたと感じています。
初戦の相手は、TOKYO MXの格闘ゲーム番組「格ゲー喫茶ハメじゅん」に出演しているitsukaちゃん。ザンギミラー(ザンギエフ同士の対戦)のうえ、ランクもほとんど変わらず、良い勝負ができました。結果は勝ちましたが、かみ合わせ次第ではどっちが勝ってもおかしくない内容だったと思います。
2戦目は忍ism所属のジョニィ選手。当然、手も足も出なかったのですが、格下相手でもしっかり対戦していただけたのはうれしかったです。3戦目はダイヤモンドクラスのジュリ。勝ち目はあったと思いますが、届かず、筆者の日本大会2は終了しました。
CPTの対戦はプロだろうが、有名人だろうがまったく忖度せず、抽選によって組み合わせが決まります。なので、強豪同士が予選の早いうちに当たってしまったり、記念参加の選手が有名選手と対戦できたり、いわゆるシード枠が用意された大会とは違う楽しみがあります。今回は、まさにその醍醐味を体感できたと言えるでしょう。
出場している大半がプロ選手もしくはプロ選手を目指す人のように見えると、初心者中級者はなかなか参加しにくいものですが、多くのトップ選手たちは、そういった層の参加を拒んでいませんし、どちらかというと裾野が広がったことでうれしく思っているとよく聞きます。こうやってプロ選手と対戦できるのは、eスポーツ特有の文化ですし、特権でもあるのでぜひとも参加してみてほしいところ。オフラインであれば、目の前や隣り合わせでプレイできるので、その体験はさらなる感動になるはずです。そのためにも、早いコロナ禍の収束とオフラインの復活を望んでいます。
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