女優の広瀬すずが主演を務める映画『遠い山なみの光』(9月5日公開)が、第27回上海国際映画祭カンヌ・エクスプレス部門に正式出品されることが明らかになった。
『遠い山なみの光』は、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロ氏の長編デビュー作を、石川慶監督が映画化。主演は広瀬すず、共演は二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、松下洸平、三浦友和ら。舞台は、戦後間もない1950年代の長崎と、1980年代のイギリスで、時代と場所を超えて交錯する「記憶」を巡る秘密を紐解いていくヒューマンミステリーに仕上がっている。
第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でも上映された本作だが、この度、第27回上海国際映画祭カンヌ・エクスプレス部門に正式出品される運びとなった。
上海国際映画祭のカンヌ・エクスプレス部門とは、カンヌ国際映画祭で上映された作品のうち、選りすぐりの作品をいち早くアジアで上映する部門となっており、昨年は邦画から『ナミビアの砂漠』(山中瑶子監督)と、『化け猫あんずちゃん』(久野遥子監督、山下敦弘監督)が上映された。本映画祭での『遠い山なみの光』の上映は、アジア・プレミアとなる。
本作の上映について、上海国際映画祭プログラマーである徐昊辰氏は、「一見穏やかに見える日常の奥底に、戦後の不安、生活の不穏、そして女性たちが抱える葛藤や傷が静かに息づく。撮影、美術、そして俳優たちの緻密な演技によって、言葉にされない感情が丁寧に掬い上げられていく。映像化が困難とされた原作に対し、監督は独自の視点と美意識で挑み、記憶の襞に潜む『嘘』と『真実』を巧みに可視化した。時代と場所を越えて交錯する人々の記憶が静かに重なり合い、やがてひとつの深い問いへと昇華していく。静謐かつ力強い語り口で綴られる、普遍的な人間の営みに迫る珠玉のヒューマン・ドラマである。このたび、第27回上海国際映画祭にて本作を上映できることを、心より光栄に思う」とコメントしている。
あわせて、先述のカンヌ国際映画祭におけるレッドカーペットや公式上映時の会場の様子を収めた特報も公開された。「家族の歴史が心に突き刺さる」-Next Best Picure-、「ミニマルで優美、日本の美意識そのもの」-Montage Review-といった絶賛コメントとともに、原作者でありエグゼクティブプロデューサーのカズオ・イシグロ氏をはじめ、石川慶監督、広瀬すず、吉田羊、カミラ・アイコ、 松下洸平、三浦友和がカンヌの地で魅せた、歓喜の瞬間を見ることができる。
(C)『遠い山なみの光』製作委員会
【編集部MEMO】
原作者、エグゼクティブ・プロデューサーのカズオ・イシグロは、本作で描かれる長崎県の出身で、幼年期に渡英したのち、1983年にイギリス国籍を取得。2017年にノーベル文学賞を受賞している。本作以外にも映画化された作品は数多く、『日の名残り』『上海の伯爵夫人』『わたしを離さないで』『生きる LIVING』は、日本でも公開されている。