現在放送中の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で柳井嵩(北村匠海)の伯父・柳井寛を演じた竹野内豊にインタビュー。朝ドラ初出演となった本作への思いや役作りについて話を聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。
朝ドラには「いつかチャンスがあったら参加してみたい」「ご縁があったら出演したい」という思いがあったという竹野内。意外にもこれまでオファーがなく、1994年に俳優デビューしてから31年となる今年、ようやくオファーを受けて朝ドラ初出演が叶った。
『あんぱん』の企画にも魅力を感じて出演を決めたという。
「これだけ多くの方々に愛されたやなせ夫妻の軌跡をたどるような企画が本当に素晴らしいと思いましたし、『あんぱん』の物語は現代の人たちの心に何か届くストーリーだと思いました」
演じた柳井寛は、柳井医院の院長を務める町医者で、嵩と千尋(中沢元紀)の育ての父。26日放送の第41回で、往診の帰りに倒れて危篤状態になり、亡くなった。
竹野内は「寛は誰に対しても分け隔てなく広い心を持つ人格者。それはおそらく、今までの人生が希望に満ちた明るい面だけでなく、暗闇や絶望も経験しているからこそなのではないかと思います」と分析する。
そして、演じる際には“絶望”を意識していたという。
「寛の言葉一つ一つに深みを持たせ、説得力を含ませるにはどうしたらいいかと考えた時、いつも“絶望”の部分を自分の腹の底に置くイメージを持って演じていました。1人の医者として、多くの人と出会い、さまざまな人生の在り方や終わり方を見届けてきたはずで、自分なりの死生観を持っているという重みを反映させたいと思いました」
「人生は喜ばせごっこや」の広がりに期待「流行語大賞になってほしい」
やなせさんの言葉を用いたものなど、心に響くセリフを多く残した寛。SNS上で「名言製造機」とも称されてきた。
「台本を読んでいても心に響くセリフがとても多く、どうしたら深みを持って表現できるかというのをすごく考えていました。やなせさんの言葉を引用したものもとても多かったので、皆さんも耳馴染みの多いセリフが多かったと思いますが、土佐弁だったからこそ多くの方々にしっくり届いたのではないかと思います」
数々の名言が登場する中で、竹野内が最も共感したのは「人生は喜ばせごっこや」というセリフだと言い、「このセリフを撮る前は『うまく言えたらいいな、ちゃんと伝えられたらいいな』と思っていました」と振り返る。
自身も「人生は喜ばせごっこ」という考えを大切にしたいと言い、「今の時代にこういう精神が日本に広まっていけば素晴らしい国になると思いますし、1人でも多くの人がそのような意識を高めることができれば、きっと素晴らしい未来が約束される気がします。今年で終戦80年を迎えますが、誰もがもしかしたらという不安を抱えて生きている。だからこそ『人生は喜ばせごっこや』が流行り言葉になってほしい」と願う。
さらに、「『たまるかー!』と両方、流行語大賞になってほしいですね。『たまるかー!』は寛先生は1回だけ、嵩が受験に合格したときに言いました」と笑った。