「自分を隠し続けるのに疲れ果ててしまった」――そう語るのは、2023年7月にファンの前で自らがゲイであることをカミングアウトしたAAAの與真司郎だ。今年4月に自身の人生をつづったフォトエッセイ『人生そんなもん』(講談社)を出版した與に、カミングアウトを決意した理由やその後の変化、同書に込めた思いなどを聞いた。
カミングアウト後、伝えきれない思いを書籍という形で表現したいと考えていた與。複数の出版社から話があり、以前仕事をしていて信頼関係のあった講談社の担当者からの提案に「ぜひやらせてください」と応じたという。
「LGBTQ+の人たちだけでなく、さまざまな悩みを抱えている人たちに少しでも希望と勇気を与えられるような本にしたいなと。読むことで『こういう考え方もありなのかな、こういう人生もありなのかな』と考えさせるような本にしたいという思いがありました」
オープンマインドの風を吹かせたいという思いもあった。
「日本の慣習が悪いわけではないのですが、他人を気にしすぎて自分を置き去りにしている人が多いと感じるので、自分らしく生きることの大切さをシェアできたらいいなと思いました。僕自身、自分らしく生きることで人生が変わったので」
與がゲイであるとカミングアウトした理由は2つあったという。
「一つは自分のためで、嘘をつき続けるのに疲れてしまい、そのプレッシャーに耐えられなかった。もう一つは、僕のような葛藤を抱いている人を少しでも減らしたいという思いがありました」
続けて、「『カミングアウトする必要なくない?』と言われることもありますが、表に出る仕事をしていると、隠していてもいつかバレるかもしれないリスクがあります。デート中に撮られたり、ゲイの集まる場所で写真を撮られてSNSに上げられたり。それが嫌だったので、先に自分の口から言いたかった」とも話した。
そして、2023年7月に約2000人のファンを無料招待したイベントでカミングアウトした瞬間を振り返り、「自然と涙が出ました。やっと言えた、嘘がなくなった、というのが一番でした」と当時の心境を明かす。
カミングアウト後の葛藤を告白「スッキリすると思ったら…」
しかし、カミングアウト後は予想外の葛藤があったと打ち明ける。
「スッキリすると思ったら逆にスッキリしなかったんです。応援してくれる人がほとんどでしたが、悲しいコメントを見て、『カミングアウトしてよかったのかな、しない方がよかったのかな』とネガティブな方向に走ってしまいました」
特に傷ついたのはファンから否定的な言葉だったという。
「知らない人に叩かれるのは平気ですが、ファンだった人からの『しんちゃんゲイなの気持ち悪い』というコメントを目にしたときに傷つきました。そういう声もあるというのは予想していましたが、実際に目にすると『言わない方がよかったかな』と。そこから抜け出すのは大変でした」
葛藤を乗り越えられたのは、友人や仕事の存在だった。
「精神的によくなかったのであまり表に出る仕事はしたくなかったのですが、徐々にメディアに出たり、トークショーをしたり、AAAのメンバーである宇野実彩子のライブにゲストで出たりしました」
宇野について「兄弟のような、“双子のお姉ちゃん”のような存在」と表現し、「カミングアウト前にも相談していて、当日もリハーサルから来てくれて『私たちがついているから大丈夫』と背中を押してくれました」と感謝した。
そして、宇野のライブや自身のトークショーなどを経て気持ちに変化があったそうで、「イベントで普通に話ができたことで、どんどん自信がついてきて、前を向いていこうという気持ちになっていきました」と振り返った。