ボストン コンサルティング グループは5月22日、「BCG高額消費者調査」の結果を発表した。調査は2024年10月、年収3,000万円以上、かつ税金や投資を除く日常生活や娯楽の年間消費額が1,000万円以上の日本の消費者290人を対象に、WEBで行われた。
高額消費者の「価値があれば買う」消費は衰えず
調査の結果、近年物価が上昇しているにもかかわらず、高額消費者の「価値があれば買う」消費は衰えていないことがわかった。
消費行動の変化について聞いたところ、「物価高により消費行動を控えめにした」と答えた一般消費者は80%にのぼったが、高額消費者ではわずか20%。一方、「価格が高くても、価値があれば購入する」と答えた一般消費者は20%だったのに対し、高額消費者は80%だった。
また、外部のパネルデータ(マクロミル家計パネル調査「MHS」)を分析したところ、年間1,000万円以上を消費する層は、それ未満の一般層と比較し、実支出全体では約4倍の差のところ、エンタメ・旅行・趣味の領域では約9倍の支出差が確認され、高額消費者が“モノ”以上に“体験”に支出している傾向が強いことが明らかに。さらに、ブランド品の購入に関して、6割超の高額消費者が「同じブランドを検討・購入する」と回答。一方、新しい店舗を「頻繁に試す」の回答はわずか5%。高額消費者には、自分に合うブランドを貫く傾向があることも分かった。
次に、調査への回答を基に、消費額・ブランド継続意向・新規ブランド試行意向の3項目に対し、性別・年代・年収・世帯年収や個人年収のギャップ・価値観などの複数変数による多変量解析を実施した結果、消費行動を分けるのは、年代や年収ではなく価値観(今を楽しむ、旅行や娯楽に惜しみなくお金を使う、など)であることがわかった。
この分析や定性インタビューなどを踏まえて全体像を分析したところ、高額消費者は "価格" ではなく自分にとって "価値" があるかで行動し、モノだけではなく体験を重視する傾向がうかがえた。
今回の調査結果を受けて、マーケティングを専門とするBCGアソシエイト・ディレクターの調査担当者・中野佑香氏は、「高額消費者は、価格よりも『それを選ぶ意味に納得できること』や、『所有の自己物語化ができること』を希求しています。価格は品質や消費の意味を正当化する安心材料として機能しているため、 高価格はマイナス要素ではないのです。
高額消費者の顧客タイプには没入型・自己表現型の2種類があり、愛着の起点がブランドか自己かで心理的メカニズムが異なります。いずれのタイプにとっても、購買の鍵は「物語化」です。買い物のプロセスや場の空間演出を含む特別な体験が、“心に残る意味”となって関係性を育て、次の購買につながります」とコメントしている。