TVアニメ『カウボーイビバップ』の放送25周年&EMOTIONレーベル40周年を記念して9月23日、東京・新宿ピカデリーにて映画『COWBOY BEBOP 天国の扉』トークショー付き上映会が開催された。本イベントには、スパイク役・山寺宏一、フェイ役・林原めぐみ、エド役・多田葵、渡辺信一郎監督が登壇した。なお、MCはアニメ版の舞台設定や脚本を担当した佐藤大氏が担当していた。

  • 『COWBOY BEBOP 天国の扉』トークショー付き上映会

『カウボーイビバップ』(1998年放送)は、2071年の火星を中心とした太陽系が舞台。賞金稼ぎとなった元マフィアのスパイク、元警察のジェット、ペテン師のフェイ、天才ハッカー少女のエド、データ犬のアインたちがおんぼろ宇宙船のビバップ号を中心にドラマを繰り広げていく。『カウボーイビバップ 天国の扉』(2021年上映)は、本放送第22話と23話の間のストーリー。ビバップ号クルーたちが火星で遭遇した事件について描いている。

イベントが始まると、山寺さんは「今日の出演はこのメンバーですが、きっと石塚運昇のオヤジが、信本さんと一緒に上の方に来ていると思います! 運昇さんはいじられるのが大好きな人でした。今日は滅茶苦茶に面白い話をして、明るく過ごしたいと思います!」と天に向かい手を振り挨拶。

これは、2018年に亡くなった石塚運昇さん(ジェット・ブラック役)、2021年に亡くなった信本敬子さん(シリーズ構成・脚本担当)に向けたことば。『カウボーイビバップ』を語る上で欠かせない2名に向かって敬意と尊敬を込め、かつ明るいメッセージを送った。

まず、本放送25周年を迎えたことについて。渡辺監督は、「歳を取ったなと。アニメって放送が終わったら忘れられてしまうと思います。でも、25年経ってもイベントに来てもらえるというのは本当に嬉しいですね」としみじみ。

今回のトークショーでは、事前にファンから寄せられた質問に対して登壇者が回答していくというコーナーが用意されている。最初に「アフレコ収録や制作現場など、当時の様子で今も印象に残っていることはありますか?」という質問が寄せられた。

この質問に対して林原は「アフレコ後、毎週飲みに行っていました。話をするなかで、その場で出る話し方の癖が収録にフィードバックされていました」と回顧。また、当時女子高生だった多田はルーズソックス&ミニスカートという制服姿でアフレコ現場に来ていたというエピソードも。

次は「思い入れの強いエピソードはありますか?」という質問。山寺は、この質問がくるだろうと予想し各話の感想をメモしていたと前置きし、スパイクの過去が絡むエピソードである最終話を含む第25・2話「ザ・リアル・フォークブルース」を選ぶ。さらに絞りきれないとして、第22話「カウボーイ・ファンク」も挙げる。林原は東風が登場した第20話「道化師の鎮魂歌」、多田はエドが初登場した第9話「ジャミング・ウィズ・エドワード」をチョイスした。

渡辺監督は、謎の宇宙生物が登場する「闇夜のヘヴィ・ロック」を選択。これにはB級映画が好きだったため、自身でもB級映画のようなエピソードを作りたかったという裏話が飛び出した。また、「開かずの冷蔵庫」は、プロデューサー・南雅彦氏の引っ越しを手伝ったときのエピソードがヒントになっているとのこと。

最後に各出演者からファンに向けて挨拶。山寺は、「今回、第1話から見直してみて、最高に面白いなと改めて思ったんです。渡辺監督を中心に、この奇跡のような作品ができました。これからもずっとこの作品を愛し続けていただければと思います。さらに監督をはじめこの作品に関わったスタッフのみなさん、キャストのみなさん、信本さんに運昇さん、みなさんに感謝しています。そして、何よりもずっと『ビバップ』を愛し続けているみなさんに一番感謝しております!」と感謝のことばを送った。

林原は、「『ビバップ』の楽しみ方には正解も不正解もないと思います。この作品には「〇〇みたい」もないし、「〇〇すべき」もない。この作品の緩いけど骨太なところを、末長く味わっていただければいいなと思います。またどこかでお会いしましょう」とコメント。

多田が「本当に様々な年齢層、性別の方に見ていただいているんだなと実感します。すごい作品に関わっているんだなと思いました。毎回イベントに呼んでいただいて、こうしてみなさんと直に会う機会を設けていただけてすごく嬉しいです。これからもずっとずっとずっと、孫、ひ孫の代までずっと『いい作品だよ』って言い続けて、ファンの分母をどんどんどんどん広めていっていただけたら嬉しいです」と語った。

最後は渡辺監督。、「『カウボーイビバップ』は本当にいいスタッフやキャストに出会えた作品で、一緒にやった人たちは戦友みたいな感じなんです。戦友の何人かは亡くなってしまった方もいます。いまは「ちょっと久々に一緒にやろうぜ」と言って始めた、信本敬子脚本の『ラザロ』という作品を制作しています。初期の企画段階は信本と一緒にやっていて、途中で亡くなってしまったんですが、引き継いでちゃんとした作品として残したいなと。それがこの『ビバップ』から繋がることの、ひとつの供養になるのかなと思っています」と語り、本トークショーは幕を下ろした。