声優の梶原岳人が3rdミニアルバム『人生のライフ』を2023年10月25日にリリース。本作には、Galileo Galileiの尾崎雄貴、TRIPLANEの江畑兵衛、あたらよのひとみが提供した楽曲や、本人が作詞・作曲した一曲も収録されている。

  • 梶原岳人

今しかできないことは可能な限りやらなきゃ

──『人生のライフ』というキャッチーなタイトルの本作。どのような意味が込められていますか?

年を重ねていくなかで、10代の頃と比べてやりたかったことに挑戦できなくなっていたり、時間や年齢的にもできないことが増えたりしていて。でも、そういう後悔を持ったまま人生を終えたくなくて。誰しもいつ何が起きて、ライフポイントがなくなってしまうか分かりません。だとしたら、今やれること、今しかできないことは、可能な限りやらなきゃと思って。いま僕のライフポイントがどれくらいあるのか分かりませんが、その中で後悔なく生きたいという意味を込めて、このタイトルにしました。

──「後悔しないように」というお話がありましたが、これまでの声優人生について、ご自身としては順調に来ていると思いますか?

順調だとはあまり思わないです。もどかしいこともいっぱいありますし、もっとできたんじゃないかなと思うこともたくさんあって。あまり人と比べたくはないのですが、身近にライバルがいるので、どうしても友達が何をしているのか考えちゃうこともありますし。順調だとか完璧だなとは、まだ到底思えないですね。

──声優になった頃に思い描いていた理想には、まだまだ到達できていない。

いつまで経っても到達できないような気もします。たどり着いてしまったら、逆にもう何もなくなっちゃうんじゃないかな。永遠に壁があって欲しい。後悔はしたくないですが、満足もしたくないなって。まだまだこうしたい、こういうことができるということは常に思っていたいです。

──それは、声優でもアーティストでも。

はい。仕事もプライベートも、何でもそうだと思います。ただ暇な時間をダラっと過ごしていたら、生きている意味がないと僕は思っていて。理想を追い求めることが人生のいいところで、楽しみでもあると思うので。

開き直って「やってみるしかないだろう」

──本アルバムに収録される各楽曲について教えてください。まずは「はじめちまったんだ」。

僕はずっとGalileo Galileiさんの曲が好きで、いつか制作をお願いできないかなと思っていたんです。それこそ後悔したくないという思いで今回オファーさせていただいたのですが、受けてもらうことができて本当に嬉しかったですね。この曲は、やりたいことや自らスタートを切ったことに対して、開き直って「やってみるしかないだろう」というマインドが表現された一曲です。まさに、本アルバムのテーマに近しい楽曲ですね。Galileo Galileiさんのサウンド全開で、最高です。

──ご自身の人生のなかでも、Galileo Galileiさんの曲に支えてもらったことがある。

いっぱいありましたね。だからこそ、楽曲を提供していただけて、感無量です。

──続いての楽曲は「そこに恋が落ちていた」。

TRIPLANEの江畑さんに制作をお願いした楽曲です。すごく可愛い曲で、リズムなどが心地よく歌っていて気持ちいいです。曲調が夏っぽくはあるのですが、ガンガンの夏というよりかは爽やかに聞ける夏ソングですね。また、歌詞が今のトレンドにハマりそうだと思いました。フレッシュさも感じる歌です。若さを感じる爽やかな楽曲ですね。

──3曲目は「灯りと妄想」。こちらはご自身が作詞され、岩崎慧さんと共作で作曲された一曲です。

これも夏の曲ですが、こちらは一瞬の爆発的な感情やときめいたときの気持ちだけを切り取った曲にしようと思って作りました。「あのとき、すごく好きになってしまったな」という気持ち、もう戻ってこない当時の気持ち。そこに明かりを灯して妄想している様子を想像し、当時の気持ちをもう一回燃え上がらせるような曲にしたくて、歌詞も曲も考えています。「明かり灯そう」とかけて「灯りと妄想」というタイトルになりました。

──そうなんですね!

過去のことを思うのは未練かもしれませんが、それがエネルギーになることもあると思うんです。そういう思いを込めて曲を書きました。言葉遊びもいっぱい入れているので、注目していただければと思います。

──詞と曲はどちらから作りましたか?

並行して作りました。曲は、サビやAメロからBメロくらいまでは僕が作っていたのですが、イントロから歌い出しにかけてまでが、なかなかしっくりこなくて。そこで、岩崎さんにお願いして仕上げていただきました。

──岩崎さんの曲を聞いて、どう感じましたか?

ドンピシャの楽曲がきて、とても嬉しかったです。

嫌な思い出じゃなくて、光っている思い出

──4曲目は「夢現、夏風薫る」。

タイトルからも分かる通り、こちらも夏の曲です(笑)。意図していませんでしたが、ミニアルバムには夏の楽曲が集まりました。今回のミニアルバムのなかでは、いちばんロックバラードな曲だと思います。これまで僕が作ってきた曲や自分の好きな系統として、未練があったり、前に進もうとするけど、戻りたいと思ってなかなか前に進めなかったりというものが多かったんです。この曲は、結果的に進むことはできるけれど、そこまでのもどかしい気持ちや、過去を思い起こしている様子を表している曲だと感じていて。自分の心に近しい曲だと思っています。

──引きずっていると言えばネガティブに感じてしまうかもしれませんが、思い出があるからこそ次に進めるのかもしれません。

そうですね。そういうネガティブに感じる部分も、ひとみさんが綺麗な言葉で表現してくださっています。嫌な思い出じゃなくて、どちらかというと光っている思い出なのかなと。この曲を聞いて次に進もうと思ってもらえたら嬉しいですね。ひとみさんの曲って、語りやセリフが入ることがあって。面白いアプローチだし、だからこそ伝わるものがあると思いました。めちゃくちゃいい曲です。

──ミニアルバムの最後に収録されているのは「アメノチハレ」。

今作のなかでいちばん泥臭くて、熱い曲だと思います。この曲は、僕のバンドへの決意を込めた一曲です。自分一人の活動も、これからも進んでいくとは思いますが、自分一人じゃなく、バンドとしてありたいなとも思っていて。バンドは自分のやりたかったことのひとつなんです。この曲が自分のまた新しいスタートになればいいな。

──バンドへの熱い思いが伝わってきました。

ありがとうございます。この曲は、MVもそうなのですが、暑さのなかで汗だくになりながらも楽しい、というような気持ちで歌い上げています。ぜんぜんきれいじゃなくていいから、熱量や気持ちが届けばいいと思っています。

「やり残したこと」をなくしていきたい

──MVは、高校の同級生たちと一緒に撮影されたとお聞きしました。

バンドメンバーの内二人は、ずっと同じクラスで、部活も一緒で家も近かった友達。そんな彼らとMVを撮影する未来が来るなんて、想像もしていませんでした。完成したMVを見たときは感慨深かったです。

──撮影の雰囲気はいかがでしたか?

10年以上も付き合いがある奴らが集まったら、そりゃバカ話もしますよ(笑)。内輪ノリと言えばそうだったとは思いますが、僕は遊びと仕事の間がバンドにおいては大事なのかなとも思っていて。自分が好きなバンドでも、高校生から組んでいる方や大学のサークルで組んだという方が多いんです。そういうバンドって、総じてビジネスだけじゃない繋がりを感じるんですよね。そういった空気感を今回のMVで僕たちも伝えられたらと思っています。

──最後に、今後どういう声優・アーティストライフを送っていきたいか教えてください。

まず、仕事でもプライベートでも「やり残したこと」をなくしていきたいです。やりたいと思ったことは、そのときにやれるようになりたいですね。もちろん、そのための努力も必要です。ただ、そういう壁を乗り越える楽しさもあるので。一度だけの人生、やっぱり楽しくないと。

──やりたいことをやって、結果、大変なことになっても、それを楽しむというマインドが大切なのかもしれないですね。

そうですね。僕はやりたいことをやらせてもらえているので、大変なことも楽しめるようになりたいです。

梶原岳人(かじわら・がくと)　 11月28日生まれ、大阪府出身。東京俳優生活協同組合所属。声優としては『ブラッククローバー』アスタ役、『Paradox Live THE ANIMATION』朱雀野アレン役などを担当。2020年11月にavex picturesよりアーティストデビュー

●梶原岳人3rdミニアルバム『人生のライフ』

・CD収録内容
M1.はじめちまったんだ
M2.そこに恋が落ちていた
M3.灯りと妄想
M4.夢現、夏風薫る
M5.アメノチハレ
●初回限定盤
8,800円(税込)
※「アメノチハレ」MVとOff Shot Movieが収録されたBlu-rayやブックレットなどが同梱
●通常盤
2,750円(税込)