音楽を聴いていて次の曲に変わったら大音量で驚いた、その反対に音量が小さすぎた、という経験は誰しもあるはず。できるなら、曲ごとにボリューム調整することなくゆったりと音楽を愉しみたいものですよね。
ミュージックアプリの「音量を自動調整」スイッチは、そのために用意された機能です。『設定』→「ミュージック」画面にあるスイッチをオンにしておくと、以降ミュージックアプリで再生する曲のボリュームを揃えることができる...はずですが、実際のところそううまくはいきません。
デジタル/アナログにかかわらず、音楽を記録に残すときには「録音レベル」を調整します。録音レベルとは、録音機材に設定する"音量の感度"であり、結果的に楽曲全体の音量となります。制作者が録音時に決めるもので、曲/アルバムごとにバラつきがあるのが普通です。それを事後に平準化しようというのですから、いろいろな部分に影響が生じてしまいます。
特に弊害は「音質」に現れます。優れた再生能力のステレオコンポ/ヘッドホンを利用し、注意深く聴いてみましょう。スイッチをオンにしたあとは、曲を変えても音量差が気にならなくなる反面、楽器の細やかな響きやボーカルの輪郭、音場の広がりが以前より劣って感じられるはずです。感覚的なものですからわかりにくいかもしれませんが、オン/オフを繰り返しつつ聴き比べれば理解できることでしょう。
Appleも「Mastered for iTunes:アーティスト、レコーディングエンジニアの求めるサウンドクオリティ」というiTunes Storeで公開する楽曲の品質についてまとめた文書で述べているように、「楽曲の音量や音圧は技術的かつ芸術的な決断」ですから、リスナー側もそれを尊重すべきではないでしょうか。「音量を自動調整」スイッチはオフにして聴くことをお勧めします。