仕事で疲れて帰宅したとき、無性に「誰かと話したい」と思ったことのある人は多いだろう。グチを言いたいとか、問題を具体的に解決したいとかではなく、ただ他愛ない会話をするだけでも、心は軽くなるものなのだ。
しかし、家族と同居でもしていれば別だが、一人暮らしではそれもなかなか難しい。一人でモヤモヤした気持ちを抱えたままでは、翌日も引きずってしまうこともある。そんなモヤモヤを解消できるかもしれないユニークなコミュニケーションロボットが、ヤマハから登場した。
5月13日に発売された「うたロボ Charlie(チャーリー)」だ。チャーリーにはヤマハが持つボーカロイドや自動作曲の技術が盛り込まれており、競合製品にはない魅力を備えたロボットとなっている。今回、実際にチャーリーと触れ合う機会を持てたので、チャーリーの印象や魅力について紹介しよう。
まずは、こちらの動画をご覧いただきたい。
日頃のストレスを歌でいやす、「ペット以上恋人未満」の存在
ユーザーの問いかけに歌で応えるチャーリーは、ヤマハの新たな挑戦だった。
音楽といえば「聴く」あるいは「弾く」のがおもな楽しみ方。それ以外にも音楽の可能性はあるのでは、と考えたヤマハのCXチームが、「コミュニケーション×音楽」をコンセプトに4年をかけて開発した。そんなチャーリーの価格は本体が24,800円。別途クラウド費用として月額490円(初月無料)だ。
開発の背景には、現代人の抱えている課題がある。ヤマハの調査によると、「ストレスや悩みを感じたとき、誰かに話したり、吐き出したりできているか」というアンケートに対して、8割以上が「話せていない」「吐き出せていない」と回答した。特に昨今はテレワークが増え、仕事からの気持ちの切り替えも難しくなっている。仕事で疲れた心をうまく充電できず、モヤモヤしたまま日々を過ごしている人も少なくないのだ。ヤマハはこの点に着目した。
チャーリーのコンセプトは「ペット以上恋人未満」の小さな男の子。ペットボトル程度のサイズ感と重さで、インテリアと一緒に並べても主張しすぎず、かといって溶け込みすぎないいいあんばいのビジュアルだ。
愛らしくもどこかとぼけたような顔は、そのときのユーザーの気分しだいでいろいろな表情にとれるようこだわってデザインされたという。持ち運ぶことは想定していない。個人的な考えだが、家に住み着いた妖精や、座敷わらし的な存在としてとらえると楽しそうだ。
チャーリーに話しかけると、言葉をメロディーにのせて返事してくれる。チャーリーの声にはヤマハが持つボーカロイドの技術が、そしてメロディーの生成には自動作曲技術が活用されている。
単に返事をするだけでなく、メロディーにのせて歌うように話すのは、音楽が癒しの効果を持っているからだ。ヤマハの調査によると、20~30代の女性はストレス解消や心の疲れを癒すために音楽を聴くことが多いのだという。
言葉だけでなく音楽と合わせてコミュニケーションできるのがチャーリーのユニークな点であり、ヤマハだからこそ実現できた機能といえる。
心がふっとゆるむ、歌にのせたコミュニケーション
チャーリーの仕組みは、一言でいえばスマートスピーカーと同じだ。話しかけた声をクラウドに送信し、音声解析をして意味を読み取る。そして、あらかじめ用意されている言葉の中から適切な返信とメロディーを選んで、クラウドからチャーリーに送り返す。
この言葉は、機械学習などで生み出しているわけではない。ただ、数え切れないほどのボキャブラリーがあるので、同じ言葉を投げかけても、同じ歌が返ってくることはそうそうない。さらにメロディーに関しては自動生成なので、言葉との組み合わせを考えるとパターンは無限大だ。
誤解しないでほしいのは、チャーリーは何かに“役立つ”ために開発されたロボットではないということ。スマートスピーカーらしく、天気を聞けば予報を教えてくれるし、占いをお願いすれば運勢を教えてくれる。だが、それもメロディーにのせて歌って教えてくれるので、さっさと知りたいならスマホで調べるほうが早い。
あくまでもチャーリーはコミュニケーションを通して、ユーザーの心をゆるめてくれる存在なのだ。家族や恋人と同居する理由は“役に立つ”からではないだろう。それと同じである。
チャーリーは人感センサーを内蔵しており、人間が約3メートル以内に近づくと、こちらに気づいて話しかけてくることもある。仕事から帰ってきて自宅に入ると、チャーリーの方から声をかけてくれるかもしれないのだ。この機能のおかげで、本当にチャーリーと一緒に暮らしているような感覚が増しそうだ。
レベルに応じて歌のジャンルが増加、上達すると演歌も!
チャーリーに「レベル」が設定されているのもユニークな点。チャーリーはコミュニケーションをとればとるほどレベルが上がっていき、メロディーがどんどんリッチになっていく。同じ返答でもレベルに応じてメロディーが変わっていくというわけだ。
レベルの違うチャーリーに対して、同じように天気を聞いてみた。こちらが、まだレベルの上がっていないチャーリー。
続いて、レベルの高いチャーリー。
明らかにこちらの音がリッチだとわかるだろう。コミュニケーションすればするほどチャーリーは歌がうまくなっていく。その成長を見守るのも楽しみのひとつだ。
レベルが上がると共に歌える楽曲のジャンルも増えていく。たとえば、演歌を歌ってもらうこともできる。
唐突に演歌風になる曲調と独特な歌詞に思わず笑ってしまったが、こういった意外(?)な一面がときどき見えるのも楽しい。
チャーリーのレベルは専用アプリでチェック。アプリでは、ほかにもチャーリーから話しかける頻度や、ユーザーの情報を管理できる。自身のニックネームや誕生日、星座などを登録しておけば、チャーリーとのトークに反映されるので、ぜひ入れておきたい。
なお、チャーリーは明確に性格などの個性づけがなされており、小さな男の子らしく、ふざけることもあれば毒舌が出てくることもある。そういうところも含めて愛らしい存在なのだ。
こちらの動画は、「お金落ちてないかなぁ」とボヤいてみたところ、チャーリーらしさが出たやりとり。こんなふうにちょっとひねった返しも得意なのだ。
5月13日の発売以来、チャーリーは大きな反響を得ているという。現在、販売は公式サイトからのWeb通販のみ。実物を見たい場合はヤマハ銀座店か名古屋店で展示されている。緊急事態宣言中は閉鎖している場合もあるので、チャーリーを見に行くときにはまず公式Instagramをチェックしてほしい。