続々と新サービスが登場するQRコード決済市場に、みずほ銀行が新たなプレイヤーとして2019年3月1日から参入した。新サービス「J-Coin Pay」は日本全国の金融機関を対象に、オープンな協業をはかってスタート。みずほ銀行に口座を持たない人も取り込む形のサービスとなっている。

  • 「J-Coin Pay」のアプリ

「6月現在で70行程度とオープンな協業を進めています。成長が期待できるQRコード決済市場に当事者として入りたいと考えて立ち上げたサービスです。これまでは決済サービスへの利用料金チャージの接続銀行としては参加してきましたが、これはいわゆる土管ビジネスです。サービス当事者になることで決済の流れに関わり、将来的にはデータビジネスにも乗り出すための足がかりにできるようにしたいとも思っています」と語るのは、みずほフィナンシャルグループ みずほ銀行 デジタルイノベーション部 シニアデジタルストラテジストの黄羊氏だ。

  • みずほ銀行 デジタルイノベーション部 シニアデジタルストラテジスト 黄羊氏

「J-Coin Pay」のユーザーは、利用にあたっては参加金融機関の口座を保有している必要がある。アプリに口座を登録し、その口座から支払決済が行えるほか、個人間送金で受け取ったお金を預金することも可能となっている。同銀行間はもちろん、参加金融機関同士ならば金融機関をまたいだ送金でも手数料なしでの送金が可能だ。

「クレジットカードだと年齢制限がありますが、銀行口座さえ持っていれば利用できるJ-Coin Payは誰にでも使っていただけます。いつでも、どこでも、誰でも使えるキャッシュレス決済手段として、クレジットカードではリーチできない層へ届けたいと考えています」と黄氏は、キャッシュレス利用率の拡大に一役買うサービスとしての成長を目指していることを語った。

手軽な個人間決済や口座間資金移動を目玉に忙しい人々へアピール

3月からサービスは開始されているものの、6月現在のサービスサイトでは利用できる店舗の紹介等はまだ行われていない。多くの銀行が相乗りするサービスでありながら、大々的な告知も行われていない状態だが、みずほ銀行の社員間等での利用が進められているという。

「まだプロモーション等もしていない段階なので、利用が広がっていないのは予想通りといったところです。今は社員が個人間送金等で利用しています。個人間送金は金曜日が多いことや、3000円から5000円程度の利用が多いことも見えてきました。私自身も使っていますが、使っているとATMに行かなくなることを実感しています」(黄氏)

J-Coin Payは銀行口座の登録を前提とするアプリであることから、利用開始時点で本人確認が済んでいる状態になる。そのため、個人間送金がスムーズに行えることが特徴だ。飲み会や食事会の割り勘、買い物の立て替え精算といったものをアプリ間で簡単に済ませることができるため、現金を利用する機会が減る。

「キャッシュレス決済というとポイント還元率が話題になりがちですが、それよりも、個人間決済などの便利さをメリットとしてアピールしたいと考えています。例えば、銀行口座を複数持ち、使い分けているという人は多いと思いますが、J-Coin Payは1人で複数の口座を登録し、その口座間での資金移動も行えます。もちろん、手数料は0円です」と黄氏は決済に限らない、日常的な銀行との関わりを便利にするアプリとしての存在価値を語る。

そうした使い方を想定していることから、20代から30代の一人暮らしや共働き家庭など、ATMへ行くことを負担に感じる人々にも馴染みやすいサービスにしたいと考えているという。